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104話 無限の可能性と魔法の楽しさ

「[ストレージ][ブースト]っと。ほい」




 たった今倒したオークの死体を[ストレージ]の中にポイッと放り込む。すると後ろからドタドタという足音が聞こえてきた。




「な、なぁ、ライン。今のは何だ? 何故姿を現したオークが急に倒れたんだ!?」




「ライン、あなたが何かしたのは私達でも分かりましたわ。でも何をなさったのですか!? どうか教えて下さいまし!」




「えぇ……」




 さっきのドンヨリとした二人はめんどくさかったけど、今の二人はさらにめんどくさくなっている。そんな二人に若干辟易としながらも僕は二人の質問に答える。




「僕はオークが姿を現した瞬間に魔法を使って倒した。ただそれだけだよ。ちなみに放った魔法は[魔光線]と言って、僕の固有魔法なんだ。だからこれは教えられないよ」




「固有魔法だと!? そんなものよほど実戦に精通したものか熟練の魔法使いしか持っていないものだぞ!」




 いや、そんなこと知らないし。




「ジョゼットの言う通りですわ! 実用的でない固有魔法ならまだしも、今のは明らかに実用的な固有魔法でしたわよね!? そんな魔法誰から教えてもらったんですの!?」




「いや、これは自分で作った魔法だけど……」




「「自分で!?」」




 いや、固有魔法なんだから当たり前じゃん。

 というかうるさいなぁ、二人とも。

 とりあえず落ち着きなよ、という意味を込めたダブルチョップ!




「いて!?」




「あた!?」




 二人の脳天にチョップを喰らわせたことにより、僕にかかる騒音被害が一瞬で消えた。さすがチョップだ。




「とりあえず二人とも一旦落ち着いて。そんなにいっぺんに耳元でヤイヤイ叫ばれても困るだけだから」




「……そうだな。すまん」




「……申し訳ございません」




 僕がチョップを喰らわせた後にそう言うと二人は頭を抑えながらそう言ってきた。うむ。素直でよろしい。

 するとジョゼットが下を向きながら口を開いた。




「……今の魔法を見れば入学試験の時にサイクロプスを狩ったというおまえの言葉は嘘じゃないと確信した。だが、何故お前はそんなに魔法に精通しているんだ? 自慢じゃないが、俺は物心ついたときから毎日欠かさず魔法の訓練をしてきた。それなのに、何故お前はそんなにも強力な魔法や魔力探知が使えるんだ?」




 そのジョゼットの言葉が終わると今度はフレンダが口を開いた。




「私もジョゼットと同じで物心がついたときから親に毎日魔法の訓練をさせられてきましたわ。それはとても生易しいものではありませんでした。それだけ努力してきたのに、何故これほどまでに私達と、ラインとネイの実力が開いているのでしょうか?」




 二人は涙を流しそうな顔をしながら僕らに向かってそう言ってきた。その表情を見ればこれまでの訓練は本当に厳しいものだったのだろうと予想はつく。

 そして同時に悔しさも伝わってくる。自分達がこれだけ努力してきたのに何故それを軽々と超えられるのか、と。

 だから僕は二人に問う。




「二人は魔法の訓練をしているとき、楽しかった?」




 僕がそう聞くと二人はフルフルと首を横に振った。

 それはそうだろう。物心がついたときから毎日厳しい訓練を積んできたのなら、それが当たり前となり日常の一部となる。

 故に二人は魔法の素晴らしさに気づいていない。




「魔法にはね、僕は無限の可能性があると思っているんだ」




 僕は手のひらに[ライト]を浮かび上がらせながらそう言う。




「二人に聞くけど魔法を使う上で一番大切なのはなんだと思う?」




 僕は手のひらに浮かばせている[ライト]の形をグニグニと変形させながらそう問う。




「それは……魔力量じゃないのか?」




「後は魔力操作の技量の高さ、ですわね」




 流石物心ついたときから魔法の訓練をしてきただけある。模範解答のような答えだ。

 だがそれだけだと何も生まれない。




「違うよ。一番大切なのはイメージだ。魔力量と魔力操作の技量の高さはそれを具現化させるための道具に過ぎないんだよ」




 イメージ無き魔法は魔法では無い。

 だがイメージさえあれば例えそれが不発になろうと魔法は具現化する。




「つまり、イメージができれば誰だってどんな魔法も使うことができる。こんな風にね」




 僕はそう言って浮かべていた[ライト]を二つに分割し、それぞれ小鳥と子猫の形に変形させる。それをジョゼットとフレンダの目の前に持って行くと、二人は目を見開いて驚いた顔をした。




「イメージってさ、頭の中で何かを想像することだよね。その想像することってさ、何かの枠に捕らわれることの無い行為だよね。つまりそれって頭の中で何でも作り出せるってことなんだよ」




 これが僕が魔法には無限の可能性が眠っていると思っている根拠だ。




「そう考えると楽しくなってこない? 自分はなんでもできるんだって思わない? もちろんそのイメージをイメージ通りに具現化し、行使するには魔力量と魔力操作の技量が重要だけどね」




 でもそう考えるだけで僕は魔力量と魔力操作の技量を高める訓練は一段と楽しくなると思うんだよ。

 僕は最後に二人に向かってそう付け加えた。




「そんなことは……考えたこと無かったな……」




「……確かにラインの言う通りですわ。イメージさえできれば魔法は使える。後は魔力量と魔力操作の技量の問題……」




 そんな二人の顔には悔しさが、そして涙が消えていた。その代わりその表情に出てきたのは情熱、やる気。そういったものだった。

 うむ。なんとか美味いことまとめられて良かった良かった。このまま二人が魔法の訓練を楽しいと思えるようになってくれたら嬉しいな。好きこそ物の上手慣れって言うからね。



 それからやる気をだした二人は次々とオークを狩っていき、あっという間に今日のノルマを達成してしまった。ちなみに収納魔法の[ストレージ]や[ボックス]が使えない者には学園からマジックバックという収納魔法と同じ効果があるマジックアイテムを借りることができるので、二人は自分の分のオークをそこに入れていた。




「一応今日稼がなければならない魔物ポイントは稼げた訳だけど、どうする?」




 これから学園に帰ってオークを買い取ってもらい、家に帰るのもよし。さらに下の階層に潜って魔物を狩り続けるのもよし、だ。




「あたしはラインについて行くわ」




 ネイがそう言う。

 僕らは基本一緒にいることにしているから、彼女の返事は予想がついていた。あとはジョゼットとフレンダがどうするかだな。

 するとジョゼットとフレンダは少し考える素振りを見せた後、口を開いた。




「なぁ、ライン。もしラインがよければ魔法を教えてくれないか」




「私にも教えてください。私もラインが言ったように魔法で何でもできるようになりたいですわ」




 二人は僕の目を真っ直ぐと見てそう頼み込んで来た。二人の顔を見れば、どうやら冗談とかおふざけで言っている訳ではなく本気でそう言ってるみたいだ。うーん……別に教えるのは構わないんだけど……。

 僕はチラリとネイを見る。ネイは暇さえあれば僕と一緒にいようとする。それは本人曰わく僕と一緒にいることに幸せを感じるかららしい。そう思っているネイの気持ちを考えると、この二人に魔法を教える時間はもったいないと思う。

 はてさてどうしたものか……。

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