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102話 フレンダと黄金マン……ジョゼット

「だ、大丈夫!? ライン!」




「うん、大丈夫だよ」




 僕は心配してくれるネイに向かって笑顔でそう返す。




「……笑顔でそう言うのは大したものだと思いますが、両手でお腹を抑えながらそう言っても、ちっとも大丈夫そうじゃありませんわ」




 いや、幾ら軽い打撲でも痛いのは痛いんだから仕方ないじゃーん。

 でも、たしかにフレンダさんの言う通りだ。僕はお腹を抑えていた両手をどけ、前に僅かに屈んでいた姿勢を元に戻す。




「ネイ、大丈夫だよ」




「汗、凄い出てるけど」




「やせ我慢ですわね」




 くっ! 流石の僕でも汗は止められない!



 お腹がちょっとだけ、ほんのちょびっとだけ痛かったのでネイから休憩の時間をもらい、その間にフレンダさんに先程僕らがやっていた遊びの内容を教える。




「なるほど。それは面白そうですわね。私も仲間に入れていただけませんか?」




 わぉ。

 まさかフレンダさんからそんなことを言われるとは思ってなかった。

 良好な人間関係構築のためにも、その申し出を了承する。

 これで僕らに向けられる胡散臭い視線は一人減るだろう。




「ほれほれほれほれ!」




「くっ! [ウィンドアロー][ウィンドアロー][ウィンドアロー][ウィンドアロー]!」




 しばらく遊んでフレンダさんが慣れてきた頃、僕は再び先程ネイにやったことと同じ事をする。

 しかし残念ながらフレンダさんは二つの小さいブロックを撃ち落とせなかった。




「もう一度ですわ!」




「はいよー」




「フレンダ、頑張って!」




 ネイもこの教室には僕ら三人しかいないからか、この短時間でフレンダさんと親しくなって今では気軽に喋る仲になっている。

 それを見て安心した。

 実はこのクラスにはいるのはネイ以外皆貴族か王族だから、ネイがこの教室に馴染めるか心配していたのだ。

 でもその心配も杞憂になりそうである。良かった良かった。

 さて、それでは頭を目の前のフレンダさんに切り替えてブロックを投げてやりますか。




「ほれほれほれほれ!」




「[ウィンドアロー][ウィンドアロー][ウィンドーー」




「何をしてるんだ?」




「あ、おはゲフッ!?」




 フレンダさんが魔法を撃っている途中に黄金マント君が教室に入ってきたものだから、フレンダさんの注意がそちらに向いた。

 それによって[ウィンドアロー]の狙いがズレ、それが僕の腹に突き刺さる。

 それもさっきネイにやられたところと全く同じ位置に。

 だがフレンダさんもさっきのネイと同様に[ウィンドアロー]の威力を抑えてくれていたので打撲で済んだ。




「あ!? すみませんわ! 大丈夫ですか!?」




「大丈夫だよ」




 しかしフレンダさんは慌てた様子で謝ってきた。

 だから僕は片手を上げて笑顔を作り、心配ないと告げる。




「冷や汗が凄いぞ。それに大丈夫なら片手で腹を抑えるな」




 くっ。

 黄金マント君よ、そこは武士の情けで見逃してほしかった!



 それから黄金マント君改め、ジョゼット君にもこのゲームのルールを説明し、三人でポイント争いをしながら遊ぶ。

 もちろんブロックを投げる役は僕だ。

 ちなみに黄金マント君に黄金マント君と呼ぶと怒られたので今度からはジョゼット君と呼ぶことにする。

 え? 君付けは止めろ? 分かったよ、これからはジョゼットって呼ぶよ。

 あ、フレンダさんもさんは付けなくて良いと。

 ならジョゼット同様ブレンダって呼ぶことにするよ。



 優勝したのはネイ。

 次にジョゼットで最後にフレンダという順番になった。

 見事に成績順になったわけだ。

 フレンダは負けず嫌いなのかその後も一人、いや投げる役の僕も数えたら二人で猛特訓した。



 すると全ての生徒が登校し、そしてブレソウル先生がやってきた。

 ブレソウル先生は教室に入りブロック遊びを真剣な表情でしている僕達の事を感心したような呆れたような目で見てきたが、それだけで特に問題は無かった。

 それから始業のベルが鳴り、この学園生活最初の授業が始まる。




 最初の授業は本格的な授業ではなく、これからの学校生活に関する説明が主だった。

 このゴールドクラスの時間割が皆に配られたり、教室の掃除当番、そして住宅が決まったかどうかの確認。

 それらを終えた後、教科書やら実技の授業の時に使う体操服やらを配られ午前の授業は全て終えた。



 ここからは午後の授業である。

 このゴールドクラスの時間割を見る限りでは午前は教室でする授業が主だ。

 魔法学など所謂筆記の類だな。

 そして午後は実技の授業が入ってくる。

 しかし迷宮探索権を持つ僕を含めた四人はそれらの授業を受けなくてもいい。

 まあその代わりに迷宮を探索しなければならないのだが。

 なので体操服に着替えず、そして実技の授業を受けずに地下迷宮に向かう。




「意外にも他のクラスにも迷宮探索権を得た方はいらっしゃったようですね」




 するとフレンダが地下迷宮の入り口に入って行くサミット学園の生徒達を見てそうこぼした。




「迷宮探索権を得ることができるのは実技の実力があると認められた者だからな。他の成績が多少低く、ゴールドクラスでなくても迷宮探索権を得ることはできるんだろう」




「なるほど。確かにその通りですわね」




 ジョゼットの言う通り迷宮探索権を得ることができるのは入学試験での実技の成績が満点だった者だけらしい。

 そのため総合成績順でゴールドクラスから落ちた人でも実技の成績が満点でありさえすれば迷宮探索権を得ることはできる。




「そういえばラインとネイは防具や武器は着けないのか?」




 するとジョゼットから前を歩く僕達に質問が飛んできた。

 僕達の今の姿は冒険者の仕事をする格好でも実技の授業を受けるための体操服姿でもない。単純に普段着の上に学園から支給された黒ローブを着て歩いているだけだ。

 その姿に違和感を覚えたんだろうと思いながら僕はジョゼットに返事をする。




「武器も防具も[ストレージ]の中に入れてるよ」




 そう言うと二人は驚いた顔をした。あぁ。そういえば[ストレージ]を使える人は少ないんだっけか。

 僕は二人の目の前で[ストレージ]を使ってみせる。




「[ストレージ]。ほらね」




 そう言って[ストレージ]を使い、中からサイクロプスの革から作った防具と普通の片手剣を取り出して二人に見せる。

 だけど僕らはこれを使う予定は今のところない。

 単にこれらは他人の目を誤魔化すだけの物にすぎないからだ。

 僕らには魔人の皮膚から作った防具があるし、武器も魔人の骨から作った物がある。

 僕に至っては素手でも魔法でも魔物を倒せるからますます武器はいらない。




「[ストレージ]まで使えるのか。ラインは凄いな」




「ちなみに僕だけじゃなくてネイも使えるよ。ね、ネイ?」




「うん。[ストレージ]」




 僕がそう言うとネイもまた僕と同じように二人の前で[ストレージ]を使って見せた。

 それを知った二人は驚きを通り越してもはや唖然としていた。

 そんな二人の反応を特にどうと思うことなく僕とネイは地下迷宮の入り口に足を踏み入れる。

 さぁて、今日だけで何階層まで降りられるかな。

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