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ミッション6 『のじゃ』

 結局は数時間後になり車に乗り込む二人。一方は相変わらずの仏頂面であるが、一人は落胆した顔をしている。

 ヤマトがハンドルを握り、助手席にはカグラが乗っていた。


「にしても、ヤマトの履歴書はなんなのよ。全部秘密ばっかりじゃないの、カルメンもコメカミに血管浮いていたわよ……」


 先ほどまでいた事務室での話しである、正式に社員にするのには登録が必要となり朝食を食べ終えたヤマトが提出した履歴書である。何処もかしこも軍務の為に特務情報の為記載出来ずと書いていた。

 何度もカルメンが社長であるカグラをチラチラと見ていたが、カグラは目線を合わせず両手を合わせ頼み込むポーズをしていた。

 その隣では真っ直ぐに背筋を伸ばしたヤマト、やがて深い溜息を付いたカルメンは短く『わかりました、後は此方で処理します』と短く応えてくれた事により、ヤマトとカグラは開放されたのであった。


「仕方があるまい。軍には居たが作戦内容までは漏洩するわけにはいくまい」

「そーなんだけどさ。年齢も私と同じ十七才ってサバ読んでない? そもそも学校はどうしたのよ。何時から軍に居たのよっ」

「ふむ、そういえばカグラ、学校はどうした」


 質問をしているカグラに気づいたように質問するヤマト。前方を見ておらず助手席のカグラを見ていた。


「あのね、私が質問してるのよっ。私は通信教育で必須科目は全部終わってるわよ」

「なるほど、なら俺もそれにしとこう」

「あーのーねーっと安全運転でお願いね」


 車を走らせる事数時間、とあるホテル街の駐車場へと車を止めるヤマト。辺りの看板には、ご休憩四時間四千ルピからなどが書かれている。


「出ろ」


 短く言うと車のキーを抜き外に出るヤマト、カグラはまさかこんな場所で車を止めるとは思わなく車内で赤い顔をして辺りを見回している。

 カグラの目線の先では昼間といのに男女のカップルが居た。男は女の腰に手をやり近くのホテルへと消えていく、中々降りてこないカグラにヤマトが助手席の窓を外から叩く。

 再び、

「着いたぞ」

 と短く言った。


 車の窓を開け必死に弁解するカグラ。


「あの、あのね。私達まだ知り合って二日よ二日、いくらなんでも。なんというか強引なんじゃ……」


 段々と声が小さくなる。表情が変わらないヤマトは聞きなおす。


「スマンが、声が小さい。エンジンユニットを買いに行くんだろ?」

「そ、そりゃ。行くけど……。突然ホテル街につれて来られても……」


 鈍いヤマトでも顔の赤いカグラと周りの風景を見て一人納得したように頷く。


「なるほど。説明が足りなかった。あれを見ろ」

「だ、だからホテルの看板じゃないのよっ」


 相変わらず看板にはご休憩の値段と、平日朝までコース六千ルピという意味ありげな文字が書かれている。


「違う、その横だ裏口に手作り部品売りますって書いてあるだろ。あそこに行けば大体の物は見つけてくれる」


 目を凝らすカグラ、ヤマトの指の指す先。丁度問題ホテルと別ホテルの隙間に小さな看板が立っている。注意して見ないと気づきにくい場所にあった。

 ヤマトの言うとおり『質流れ、手作り品売ります』と書いてあった。

 直ぐに車を降りるカグラ。顔の赤いまま怒鳴る。


「だ、だったら最初からいい、言いなさいよっ。ほら行くわよ。あーもう、一人で馬鹿みたいじゃないのよっ」

「最初から行っているが。まぁいい」


 ヤマトを先頭にしてビルの隙間にある路地を入っていく、その奥にある雑居ビルの裏口、見た目が古びたドアをノックするヤマト。

 数度ノックしても反応がなく、後ろのカグラが心配そうな声を上げ聞いてくる。


「ねぇ、本当にここ? 普通の小汚いドアにしか見えないんだけど」

「ああ、間違いない」


 ヤマトが返事をした瞬間内側からドアが急に開き小さな子供、金髪ショートカットが良く似合う作業着の女の子が顔を覗かせた。


「なんじゃなんじゃ。もう全て返し終わったぞい」

「久しぶりだな、向日葵。マックス爺さんは要るか?」


 言葉を止め暫くヤマトの顔を見ていた向日葵は突然にヤマトの胸に飛び込む。

 顔を埋めたまま大きな声を上げ喋りかける。


「む、むむむむ。お主はヤマ坊、何時ぐらいかのー」

「ふむ。ちょっとな、一年ぐらいか」

「ワシの記憶では三年じゃっ三年。マックスが急に連れて来たと思えば居候し始めてフラっと突然居なくなったのじゃな」


 ヤマトの後ろでは三年と聞いてカグラは指を数えてヤマトと向日葵の顔を見ていた。


「で、どうしたのじゃ。急に、仕事でも探しに来たかえ それともいよいよ花嫁探しかのー? まーヤマ坊は鈍感だからなー……」


 ヤマトの後ろでゴホンと咳払いをするカグラ。やっとの事カグラに気づいた向日葵はヤマトとカグラの顔を交互にみる。直ぐに頷くとまたも大きな声で叫びだす。


「ぬおっ、ヤマ坊が花嫁連れて来たかっ、よし、ワシに任せておれ。其処のホテルの割引券ならあるからバンバン使ってっ」

「ちっがーう」

 

 カグラが叫ぶと続けて向日葵に話しかける。


「此処に来たら宇宙用のエンジンユニットが格安で手に入るって事で来たのっ、断じてそんな関係じゃないでーすー」

「と、言うわけだ。マックス爺さんなら重力ユニットぐらい作れるだろ。俺が居た頃も作ってたのを見た記憶がある。それを買いに来た」


 突如言葉を失う向日葵。


「ヤマ坊知らないのか……マックスは二年前に死んだんじゃよ」


 三人の間にビルの隙間風が流れた。



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