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ミッション5 『白衣の仲間』

 事務的に作られた部屋に目覚ましのアラームが鳴る。スイッチを止めるヤマト。昨夜は興奮したカグラと宥めるカルメンの提案で食堂へと向かった。

 軽い食事をした後は気分も落ち着いたのだろうカグラの案内の下、部屋へと案内された。

 『他にも紹介したい人物が要るけど遅いから明日ね』と言われた後、『好きな部屋を使いなさい』と言われたヤマトは近くにある部屋へと決めた。


 身体を柔軟に動かすヤマト、軽いストレッチをした後に今日の予定を聞くために自室のドアを開けた。そこにはピンクのウエーブ髪をなびかせ白衣姿の女性が歩いており、ヤマトと目が合う。

 二人とも無言で立ちつくす、突然に女性のほうが悲鳴を上げ手に持っていたコーヒーカップをヤマトに投げつけて来た。


「不審者っ。やだ、こないでっやだっ」

「まて、俺は違うっ」

「不審者は皆そういうんですっ」

「なるほど……」


 妙に納得して頷くヤマトの顔面横にコーヒーカップが飛んでくる、カップが割れて地面に破片が落ちるとヤマトはその破片を丁寧に拾い集める。

 女性が何か武器はないかと首を左右に回すと、そこには緊急時に設備を破壊する電磁式ハンマーがあった。

 壁からもぎ取るとヤマトへ向かって目を瞑りながら(・・・・・・・)振り回す。


「まて、それは危ないっ。おい」

「来ないでええ。ダメっ」


 辺りの壁に電磁式ハンマーがぶつかり火花が散って行く。天井のランプを赤色に変わっており回転し始めている。

 遠くのほうから寝ぼけた顔のカグラがネグリジェ姿でやってきた、その手には愛用のマクラを持っている。

 二人の姿を観て、手で顔を覆うカグラ。慌てて走ってくると女性を止めるが、身長差のせいでカグラが振り回される。


「ストーップ、ストップよっマリー。大丈夫っ!害は、害は多分ないからっ」

「社長っ。知らない不審者がっ」


 『知っている不審者は不審者じゃないなと』ヤマトが呟くと、直ぐにハンマーを投げ捨て社長であるカグラに抱きつくマリー。

 マリーのほうが大人びた長身であり女性らしい体系をしていている。マリーの豊満な胸がカグラの顔へとぶつかった。


「くる、苦しい、ちょっと待ってっ」


 叫ぶ白衣姿のマリーを宥めるとヤマトへと説明する。


「えーっと、ごめん。船医でありサブ通信士のマリーちゃん。んーっと彼女はなんていうか」

「人間嫌いか……」

「惜しい、其処までじゃないけどっ……そこまでなのかしら?」


 言葉に疑問符を付けるカグラ。

 最後に放り投げられたハンマーは見事にヤマトの部屋扉を壊しヤマトはそれを眺めている。


「そうそう。んでマリーちゃん聞いて、あっちが昨日拾った社員のヤマト。その、なんていうか。な、なかよくねっ」

「社長うううう、怖かったですっ」

「社長命令っ、そうよ社長命令っ。ほらほら早く着替えて着替えて、コーヒーの染みは取れにくいから」


 片手でヤマトに謝る仕草をするカグラ。泣き叫ぶマリーの手を引っ張り奥へと消えていく、残ったのはドアが破壊された部屋とコーヒーまみれの壁であった。

 

「どうかなされましたか? おはようございますヤマト様」


 反対側からメイド服の上にエプロンを着込んだカルメンが歩いてくる。現場を見たカルメンは溜息を付くと、

「給料から引いときます」

 と喋る。

 驚いたヤマトがカルメンの顔を見る。


「冗談です。大体はわかります、先ほど悲鳴はマリー様ですね。朝食は食堂にご用意出来ていますのでヤマトさんも着替えたらどうぞ」


 ヤマトが入ると大きな食堂ではカルメンが大きな鍋でで味噌汁を作っていた。美味しそうな匂いに立ち止まるといつの間にか背後に居たカグラが背中に顔をぶつける。


「ちょ、早く進んでよ」

「すまん」


 道を開けると、カグラとその背後では避けるように手を引っ張られて進む大柄の女性マリー。

 全員が食卓に並ぶと、

「いただきます」

 と手を合わせるカグラ。それが合図となりカルメンもマリーも食べ始める、一人食べないヤマトを不思議そうな顔でカグラが聞いた。


「あれ、食べないの? 嫌いな物でもあった?」

「特に無い」

「食事は大勢のほうが楽しいわよ」


 ヤマト顔が少しだけ表情が動く。


「『大人数で食べても一人で食べても栄養価は変わらない』って質問しそうな顔ね。吸収量が違うのよっ。平凡な携帯食事でもいいんだけどね、折角大きな厨房があるんだもん時間が在る時ぐらいは有意義に使わないと」

「なるほどな。あっちは楽しそうじゃないけど大丈夫なのか?」


 マリーのほうを顎で指すと、マリーは小さくなって味噌汁を飲んでいた。


「だ、大丈夫。がんばってマリーちゃん。今日の帰りにマリーちゃんの好きなホワイトパンダーマンのぬいぐるみ買ってきてあげるからっ」


 ホワイトパンダーマン。子供向け番組で戦う正義のヒーローパンダーマン、その正体は誰にもわからない、外見はどう見ても白熊である。悪の秘密結社シャドウに立ち向かう特撮番組である。


「ほ、本当ですかっ社長。す、少しだけ頑張れる気がします」

「お嬢様っ」


 マリーの嬉しそうな声と反対にカルメンのきつい声が食卓に響く。怒られると思い首を縮めるカグラ。


「だ、ダメかな? わ、私個人のお金で買うし。ね?」


 黙ってカードをテーブルの上に置くカルメン。


「会社の預金カードです。私は事務処理でいけませんので。あ、あと……その、経費で落としますのでブラックパンダーマンを一緒に。あの、わたしの分はお金は出しますので」


 ブラックパンダーマン、ホワイトパンダーマンのライバルで全身が黒い。外見は普通の熊なお、二人が合体すると……。

 

 手を叩くと元気良く宣言するカグラ。


「よーし、二人分経費で落しちゃおうっ。さ今日も一日頑張りましょう、あっヤマト食べたら流し台ね。私が洗うから」

「ならば俺も手伝おう、指示を出してくれ」

「そう? ならお願い。終わったら昨日言っていたエンジンユニットのお店に連れてってね」

「了解した」


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