ミッション3 『お迎えに参りました』
大きい建物から出てくる警官とヤマトとカグラ。既に日は落ちており街には様々な光が満ちていた。
ヤマトを逮捕した若い警官が笑いながら喋る。
「いやー銃発砲したと証言も在りましたが。銃は犯人から奪った物なんですってね、無茶な事はしては行けませんよ」
「俺は無茶をした覚えふぁふぁ」
「そーですよね。気をつける様に言い聞かせますんで」
ヤマトの口を片手で押さえてカグラが喋った。手を引かれ建物から離れる二人。不思議そうな顔でヤマトがカグラを見る。
「あのね。どうしたって顔しているけど。こっちの台詞よっ! 貴方と関わって五時間よ五時間っ。普通だったら会社に戻って打ち上げよ打ち上げ」
「なるほど、次からは警察も叩き潰すようにしよう、そうすれば後四時間と三十分は早く帰れたはずだ」
「ちっがーうっ、貴方が手錠を外したりするからでしょっ」
「しかし、暴れない人間に手錠をしても仕方がない、窮屈だったので外してくれと頼んだが聞き入れて貰えず『外せる物なら外してみろ』と言われたから外しただけだ、俺が悪くないとは言わないが、ああも拘束する事もないだろうに」
平然と答えるヤマトに『ないわー』と下を向き首を振るカグラ。二人の前にノロノロの車が止まった。運転席から薄い褐色の女性が降りてくる。
青いメイド服を着込み白いエプロンが一際目立つ、髪は綺麗に後ろでお団子でまとめており、そのキリっとした目は眼鏡のをかけているが揺らぐ事はなさそうだ。
「お嬢様、ヤマト様。お迎えにきました」
カグラへと頭を下げる女性。カグラの横にいるヤマトを見ると上から下まで眺めている。
「なるほど」
「何がた?」
ヤマトは女性へと質問すると一歩下がり非礼を詫びた。
「これは失礼。初めまして、代行運送ノーチラスの従業員でカルメン・マーキンといいます。ヤマト様ですね。お嬢様から話は聞きました、お迎えに参りました」
隣にいるカグラへと目線を移すと当然のように胸を張る。
「待っている間に会社に連絡したのよ。私の会社の社員のカルメン」
「社員だなんてわたしはお嬢様のメイドです」
「本人はこういっているんだけどね、まっその辺はその内ね。泊まる所も無いんでしょ? ウチの会社にレッツゴーよ」
運転席にカルメン、助手席にカグラ、後部座席にヤマトが乗り込む。窓の外を眺めているヤマトには先ほどからクラクションを鳴らされては追い越しをしてくる車が何十台も見
えた。
後部座席から頭を出して口を開く、
「で、今日中に付」
最後まで言う前に口を閉ざした、助手席にいるカグラが口を半開きで寝ているからだ。
カルメンが小さい声で謝る。
「すみません。お嬢様の為に安全運転で行きますので」
「そーだな。所でカグラは何時もこーなのか?」
「何がです?」
バックミラーからヤマトを見るカルメン。その眼を見つめ返すように見ながら口を開く。
「素性の知らない奴をポンポンと拾うのか? って事だ」
「お嬢様は良く首を突っ込みたがる性格なので、長所です」
「なるほどな……悪いが運転は任せたぞ俺も少し仮眠を取る」
「どうぞご自由に。着いたら起しますので」
静かに瞼を閉じるヤマト、口元が少し笑っていた。その仕草に閉じていた瞼を開け口元に指を付けるヤマト。
「どうかされましたか?」
カルメンが心配そうな声を出して聞いて居る。ヤマトは一人『なんでもない』と小さく答えると再び瞼を閉じたのであった。
『搭乗ゲートに通行してください、お客様のお忘れ物などが無いようにお願いします』月面宇宙港に響くアナウンス、長い船旅に飽きた人たちが身体を動かし運動する。
搭乗口を出た人間は疲れた身体を手ごろな椅子に腰を掛けた。近くに居た物販店員が近くによって来る。
「お客様、火星名物ミルクレープは如何でしょうか? こちら甘さ控え目と成っておりお客様のようなキリっとした女性にで……」
途中で言葉が止まる販売定員、赤い顔をして大声を上げる。
「も、もしかして。レーサーの京子・橘さんじゃないですか」
呼ばれた人物は、眉を潜め軽く驚いた顔をした。
「おや、アタシの事を知っているのかい?」
「はっはい、私ファンなんですっ、若くして惑星レースのトッププレイヤーと成った火星出身のレーサー、今回は地球にですか? 実は私も火星出身なんです、沢山の弟が居てっ」
聞いても居ない身の上話を笑顔で制する京子。話の途中で後ろを指差す。
「まぁね。やっとレースが再開される見通しなんだ。それのエントリーさ。ほら、それより注意しな。あっちにはマルケン兄弟とかもいるよ」
指をさす京子の先には試食品を食べる筋肉質の二人が居た。
そこには前回のレースで京子よりも順位の下に居たのマルケン兄弟が居た、全体からわかる筋肉質の体系、そもそも上半身を薄いタンクトップで決めており見せ付けている。
販売員が持っている火星ミククレープの試食を大口を開けて食べていた。
「私、下品な男性はちょっと……」
思わず本音の漏れた販売員に失笑する京子。
「本人達には黙っておくよ。ああいうのは近寄らないのが一番だね。さてアタシも一つ貰おうかな。勿論試食じゃなくてね」
ウインクする京子に見つめられて、ぼーっとする販売員だった。
ヤマト達を乗せた車が薄暗い倉庫群へと入っていく。
超安全運転で止まる時もスローで停止する車、運転しているカルメンが後部座席を振り返るとヤマトの目が開いていた。
「起きていたんですか?」
小さな声で喋るも驚きを隠せないで居るカルメン。
短く返事だけをするヤマト。
ヤマトは助手席を見る、未だ口をだらしなく開けて寝ているカグラがそこに居た。
「で、起すのか?」
「ええ」
イビキは書いておらずヤマト達が見ていると、おもむろに右手を服の中へと突っ込む、ポリポリと胸の部分を書く仕草に思わずカルメンが、カグラの手を止める。
「お嬢様は何時も寝ると中々起きないんです、でも安心してください」
カルメンが、その口を手で塞ぐ。
最初は眉を潜めていたカグラの顔が段々と険しく赤くなる。次第に手足をパタパタすると目を見開くとカルメンはその手を話した。
「おはようございます、お嬢様。そうだ、ヤマト様も覚えておいて下さいお嬢様は寝る時は口呼吸なので口を塞ぐと直ぐおきますよ」
「はぁはぁ、死ぬかと思った……宇宙で酸欠になる夢見たわ。昔から思うけど、もう少し良い起し方でお願い、その内本当に死ぬかもしれないし……」
「大丈夫です、その辺は見極めていますので」