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ミッション24 『夜、その後に・後』

 おでこに冷たいジェルシートを付けられたカグラが目を覚ます。

 辺りを見回すと広い空間である事がわかった。


「あれ。此処は」

「ふー起きたかい? テントの中さ」

「京子さん……えーっと、確かお風呂にいってゴウ君がいて、別のお風呂にって……」


 手を当てて考えているカグラに耳元に顔を寄せる京子、直ぐに小声で話してきた。


「はーい、そこまでっ。安心しな知っているのはアタシとカグラ、後は本人のみの三人だから。いやー参ったね、それにしても」

「目が覚めたのか?」


 声のしたほうに顔を向ける二人、テントの入り口から飲料缶を手にしたヤマトが入ってきた。


「女性は長湯が当たり前と言うが、倒れるまで入る事もあるまい。次は気をつけるんだな」

「あ、あんたねぇ。だ、誰のせいでっ」

「まぁまぁ、良く確認しないで入ったアタシ達が悪い、そんなに怒る事もあるまい」


 渡された飲料缶を奪い取るカグラ、ふと気づいたように呟く。


「みた?」

「何をだ」

「だから、その。私の裸……」


 消え去るようにヤマトへと喋るカグラ。『あー……』と拳を叩く京子が大きく頷く。

 その横でヤマトが短く答えた。


「ああ」

「ヤマト、そういう時は見ていても見て無いと答えたほうがいい。あの場合だどうせアタシの裸も見たんだよね」

「そうか。ならば二人とも見てはい無い」

「ちょっとそれは……ないわー」


 漫才のような二人のやり取りを見て思わず笑うカグラ。京子も顔は笑っていた。

 一人困惑するヤマトがそこに居た。


「他の皆は?」

「ふむ。時期に来るだろう。俺は先に様子を見て来いと船から飲み物を持って来ただけだ」

「そか、悪かったわね」


 話をしているとテントの入り口が大きく開く、カルメンやマリー。向日葵も様子をみに戻ってきた。

 カグラが笑っているのでテントの中を見回したカルメンも溜息の後に微笑む。


「お嬢様、いくら温泉だからって上せるまで入ってはだめですよ」

「カグラ嬢、ワシも心配したんだからのー」

「あー……ごめんね、カルメン。それとマリーちゃんも向日葵ちゃんも心配かけてごめんん」

 

 誰も居ない薄暗い森の中で誰にも心配されない男はクシャミを一つした。吊るされている状態から器用にロープを切ったのか今は地面の上みのむしのように寝ていた。



 水平線の彼方から朝日が昇ってくる。簡易テーブルには色取り取りのサラダや、ヤマトが釣ってきた魚などが並べられていた。

 いつの間にか抜け出してきたゴウもちゃっかりと食卓に並ぶ。


「おっはーっち。皆さん今日もお綺麗で」

「あんた、良く抜け出してね……」

「それが聞いてよきょうっち。地面に落ちた所までは良かったんだけどいくら待っても誰も来ないから一生懸命木のにロープを擦りつけてさ。やっとだよやっと」

「ふむ。そういえば昨夜は見なかったな」


 それまで居ない事に疑問も思ってなかったヤマトがゴウの顔みて呟く。


「うわっヤマっちも心配ぐらいしてほしいな。オレ達親友じゃないかっ」

「何時から親友になったんだ」


 食器を片付けるカルメンやマリー。その二人にちょっかいを出そうとして向日葵に注意されるゴウ。

 一人離れた岩場には釣り糸を垂らして座るヤマトが居た。

  

 集団から離れたカグラと京子。京子のほうは何処かに電話をしているらしく真面目な顔で話していた。話し終わったのか、端末をポケットにいれるとカグラに振り向く。


「結果はでたよー予選の事故は最終的には偶然・・の事故みたいね。まっ運営の会見だけどね」

「そっか……調べてくれてありがと」

「何か気になる事でもあるのかい」

「うーん。考え過ぎとも思うんだけどね、例えばあの事故は私達が一位通過じゃなかったらどうなっていたのかなって」

「そんな事はないだろう。何か恨まれるような事でも? 何にせよこの手の事は日常茶飯事さ」


 ぶんぶんと顔を横にふるカグラ。

 

「あはは、何でもない何でもないの、日常茶飯事って……」

「その名の通り。特に宇宙だろ? 証拠なんて中々見つからないし、賞金の額も大きいからね大小様々な事は起きるもんさ。三回ぐらい前だっけかな、優勝候補の船の燃料に不純物が混ざって発進しなかったって事もあるからね」

「ふええ」


 カグラが溜息を付くと京子は笑ってみせる。手にした飲み物を口に入れると、『よいしょっと』掛け声をかけて砂浜に座り込む。

 カグラの方向をみないで真っ直ぐに海へと顔を向いている。


「綺麗な空」


 そう呟く京子の目線の先には白い雲と青空が広がっている。カグラもその空を眺めてはいるが京子ほど感動している様子もない。


「あはは、ごめん。ほら、アタシは火星生まれだから地球の空は感動的なのさ。おや……」


 首を動かす京子、カグラも釣られて動かすとクーラーボックスを担いだヤマトが歩いてくる。


「おかえりっー」

「ふむ、其処まで遠くに行っていないのにおかえりも無いとはおもうが。釣れたぞ」


 カグラの問いにクーラーボックスの中身を見せるヤマト。程よい大きさの魚が数匹跳ねていた。カルメンはその中身を覗くと大きく手を叩く。


「おやまぁ、結構釣れるもんだね。よし、カグラ、アタシ達も泳ぎに行こう。あと数時間で御開きだしな」


 カグラの手を握り海へと走って行く。


「ちょっと、まって、まっ。んじゃ、ヤマト後でねー」

「了解した、それまでには調理しておこう」


 海面へと連れ込まれるカグラ。青い海面に頭から突っ込む。海面から顔を出すと京子が笑っている。


「京子さんっ、やり返しますよっ」

「あっはっは、追いつけたね」


 沖のほうに泳ぐ京子を追いかけるカグラ。浜辺から遠くに行くと泳ぎを止める京子、それに追いつくカグラは京子の横へと並んだ。


「ねぇ、カグラ」

「なに? 京子さん」

「その、なんだ……本当にヤマトとは付き合ってないのか?」

「ちょ、ちょっと。な、何を。誰かに聞かれたらそのあの……」

「浜辺から遠いから誰も聞かないよ」


 カグラは周りを確認すると浜辺にから十数メートルは泳いでおり此処での会話は聞える事ない。

 

「あのさ、今度のレースで賭けをしないか」

「賭けって?」

「ああ、賭けさ。勝った方がヤマトに告白をする」

「な、何を。だから私とヤマトはそんなんじゃ……」


 泳ぐ事をやめて海面へと沈んでいくカグラ、慌てて京子がその手を引っ張りあげる。


「たっく、ヤマト関係になると直ぐ思考停止するんだから」 


 口から海水を勢い良く吐き出すと赤い顔のまま京子を見るカグラ、京子のほうも恥かしいのか赤い顔をしていた。


「べ、別に告白したいならすればいいじゃないですかっ、私に言わなくても……」

「ふーん……昨夜寝言で『ヤマトー好きー』って言ってたよ」

「なななな、そんな事な……」


 途中で言葉が止まるカグラに、にやりとして見せる京子。


「嘘つきましたね……」

「ああ。そうさ。中々認めないからね。よし、決まったね。さて、もうそろそろお昼ご飯も出来るだろうし帰るよっ」


 カグラを残して浜辺へと泳ぐ京子、一人残されたカグラは慌てて泳ぐ。


「ちょっと、京子さんっ反則ですってっ」


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