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ミッション23 『夜、その後に・中』

「なんでヤマトが覗いてるのよっ」

「変な事は言わないでもらおう。オレが入っていたら他の連中が入ってきただけだ、どちらかと言えば俺は覗かれた立場に当たる。それにだ。声をかける前に入って来たのでな、面倒なのでこうして嵐が去るのを待っていたわけだ」

「ヤマト服はっ」

「小屋の影だ、鍵がかけてあったのでな」

「ど、どどどうしよう」

「どうしようもあるまい。ゆっくり浸かってくれ俺は皆が出るまで此処に居よう」

「あーのーねーヤマトが居るのにゆっくりも何もないじゃない」


 慌てるカグラに淡々と喋るヤマト。岩の裏から京子の声が聞えてくる。


「ほんとに大丈夫? 何か話し声聞えるけど何かいたー?」

「えっ。べ。別に誰も居ないっ、居ないわよ」

「カグラってさーヤマトのどの部分が好きなんだ?」


 京子の質問に思わず湯船を叩くカグラ、水しぶきが容赦なくヤマトの身体へとかかる。


「な、ななな何いってるのよっ。ないないないっ、そう彼とは従業員、雇用関係。私が社長で彼が従業員っ」

「でも、嫌いって訳じゃないんだろ?」

「そりゃまぁ、嫌いでは……えっとその、その話は今度。うん。今度にしましょう」


 大きな一枚の岩越しに会話する二人。カグラが制しするが京子の話は終わらない。


「良いじゃないか。女性同士の話なんだ。以前ヤマトをアタシの会社に誘ってみたんだけど返事がつれなくてね」

「へ、へー」


 棒読みのままヤマトの上半身を見るカグラ。顔を伏せておりヤマトの顔を見れないでいた。


「でだ、気になるアタシは恋のライバルになりそうな子を無人島にご招待ってわけ」

「ライバルってそんな……」

「アタシはほら、なんて言うか男っぽいだろ? どうせ結婚するならヤマトみたいな奴がいいなと思ってね」


 結婚、その言葉を聞いて沈黙するカグラ。小さい頃は将来の夢は『お嫁さん』など答えたカグラであったが、何がどうなって今では会社を経営する事になっている始末。

 『結婚、結婚』と小さく呟くと目の前のヤマトの身体を無意識に触るカグラ。去れるがままのヤマトは『返事をしたほうがいいぞ』とカグラに言うが全く耳に入っていない。


「おーい、湯辺りかい。大丈……」


 お湯を掻き分け岩場の表から裏へとゆっくりと泳いでくる京子、その瞳には上半身が裸で腕を組んでいるヤマトと、真っ赤になったまま沈んでいきそうなカグラの姿が目に入る。

 今までの会話を聞かれていた事を知った京子の顔が赤くなっていく、口をパクパクしていると真っ直ぐにヤマトを指差す。

 京子に見られた事によりさらに赤くなっていくカグラが湯船に沈んでいく。


「っと、とっ」


 湯船に沈むカグラをすぐさま抱きかかえる京子。ヤマトが頷き手伝おうと仕草をすると、慌てて首を振る京子、その手は静かにと唇の場所に人差し指を立てている。

 意識もうろうとしたカグラを背後から抱きかかえるようにして岩の表へと泳ぐ京子、ヤマトの耳にはカルメン達の慌しい声が聞えた。


「お嬢様っしっかりしてくださいっ」

「うわ、カグラ嬢真っ赤じゃの……」

「社長っ、のぼせてますね……」


 直ぐに脈を取り軽い診断をするマリー。その言葉で気づいたように京子が大声をあげる。


「ただの、そう。ただの湯辺りみたいだね、直ぐに上がってテントに連れて行こうっ」

「そうですね、船に冷却ジェルシートなどもありますので急ぎましょう」


 ヤマトが隠れている岩場から声が段々と遠くなる。

 数十分後にはヤマト意外の気配が消えたのであった。


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