ミッション18 『予選会・結果』
「なになにっ」
「ほう、船が壊れたか」
「そう簡単にこわれませんっ。マリー様現状報告を」
正面のメインモニター何も見えなくなり、驚くカグラにマリーの声が響く。
「しょ、正体不明の磁気場です、メインモニター使用不能、レーダー索敵も不能ですっ」
「ふむ」
ヤマトが落ち着いた声と共にカグラを見た、艦長たるもの命令を出せと見つめている。
視線を受けて緊急時のマニュアル通りに命令を出していく。
「ええっ、ちょっ。と、とりあえず緊急ブレーキ、サブモニターの切り替え、えっとえと非常要請に安全管理にえっとえと確か右のコース外には何も無かったから、そっちへ」
「わかりました、私の記憶でも右方向には何も無かったのでそちらに向ってスピードを緩めます」
「まて、一位を狙うなら舵をそのまま左二十五度に固定してアクセルのほうがいい」
「えっえっ、なんで?」
「艦長命令に従い右方向へ急速変更します」
当然、ヤマトの案よりも艦長たるカグラの命令を第一にするカルメン。命令を復唱すると舵を右に急速に回し始める。
「待ったっ。や、ヤマトの言うほうで」
「わかりました」
疑問の声を出さすに舵を戻し、さらに左二十五度に固定してアクセルを踏み込むカルメン。数分でメインモニターが回復した。
ブリッジの照明も赤から白色へ切り替わり一先ずの安全は確保されたのがわかった。
「通信回復しま……した」
「ふー……ん? マリーちゃん報告は?」
「後方の船数隻がコース外で大破です……」
メインモニターにレーダーが大きく映し出された。コース外に向った船数隻がぶつかり合って大破している映像が見えた。
言葉をなくすカグラ、口をパクパクしながら横に立っているヤマトを見る。
「どうした、馬鹿みたいな顔だぞ」
容赦ない一言に口を閉じ唾を飲むカグラ。大きく深呼吸をした後にジト目でヤマトを睨む。
「あーのーねー、もう少しでアレに巻き込まれる所だったのよっ。私の指示通りにいったら全員死んでるじゃない。見なさいよバラバラじゃないっ」
「ふむ。この船は耐久度もあるから、あそこまで壊れはしないだろう。それに、通常船は大きな衝撃時に故意に分解するシステムだ」
自信たっぷりいうヤマトにカグラがカルメンの顔を見る。
「はい、大型船になるほど事故を起した時にブロック場に別れる仕組みの船が多いです」
「へー……それにしても。ヤマトは、そんなに冷静なのよっ」
「自だ」
「そ、そう……」
二人の会話に近くにいるカルメンが、珍しく小さく笑った。その声を聞いて思わずカグラとマリーが珍しそうにカルメンを見る。
「失礼。お嬢様が楽しそうなのでつい。所でヤマト様、何故真っ直ぐに進んだほうがいいと?」
「此処が通常の宇宙空間ではなくコースだからな」
「なるほど……そういえば見てましたね」
納得してないカグラが疑問の声をあげるとカルメンが説明してくれたる。
「えっと、なんで?」
「説明します。コースである以上、普通に走れば安全なのです。そこでコース外に出るほうが危険が増すとヤマト様は言っています」
「はー……なるほどねぇ、何はともあれ、その、あの」
「なんだ?」
言いよどんでいるカグラの顔を見るヤマト、見つめられて余計に顔が赤くなるが深呼吸をして御礼を述べる。
「ん。ありがとう。ヤマトのおかげで事故も無く勝てそう」
「気にするな。意見を聞いたのはカグラだ、部下の意見を最優先する艦長も珍しいし誇るべきだ」
「ん。ありがと」
二回目のお礼を言った後に艦長席に座り込みヤマトの顔を見ないように横を向くカグラ。
マリーは二人の様子をみて乙女の瞳をしていたが、首を振り少し諦めた感じで前を向くとレーダーチェックをしながらカグラに報告していった。