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ミッション15 『ストリートファイト』

「ダメーっ」


 通常なら壊れる事も無いはずの街灯はマリーの腕力で何度も前後左右に揺らされていた衝撃で根元が取れブルーとレッド目掛けて倒れていく。

 思わずブルーは向日葵の手を離すと倒れてくる街灯を両腕で押さえた、中々の重さがあるが、自慢の筋肉で受け止めた。


「観ろ、この鍛え抜かれた筋肉を、一本二本じゃへとも無いぜ」

「そうか、ならもう数本追加しておこう」

「へ?」


 唐突に聞えた後ろのほうで聞えた良く通る男性。次にマルケン兄弟の上に次々と倒れてくる街灯。直ぐに兄であるレッドも支える体制に入るが数が多く二人とも必死の顔で倒れてきた街灯を押さえている。


「おう。ヤマ坊っ」

「社長っ!」


 向日葵とマリーの声がはもると、その声の先にはヤマトとカグラが並んで立っていた。二人にはまだ少し遠いが言い争いをしているのがわかる。


「ヤマトあんたねぇ。確かに急いで助けないととは言ったわよ、私は。でも、なんていうか事を大きくしてない?」

「あの距離から武器も使わず助けるにはこれが早かったのでな」

「ああ、そう。結局さっきの事もうやむやにするし、っと。マリーちゃんに向日葵ちゃん大丈夫だった?」


 マリーがカグラへ。向日葵がヤマトへと軽く抱きつき再開を喜ぶ。面白くないのはマルケン兄弟である。大小合わせて七本の長い街灯を持たされてヤマトを睨みつけていた。


「てっめえ。あの時の」

「あれ? ヤマト知り合い?」

「いいや。知らん」


 カグラの問いに即答するヤマト、火に油と言わんばかりに顔を赤くする兄弟。怒りに任せて頭上で押さえている街灯を辺りにぶちまけた。

 首に付けているコルセットを指差しながら二人は唾を飛ばして言い放つ。


「知らんじゃねえ。てめえのせいで、オレと兄者はこんな怪我まで負ったんだぞ」

「自分の運転技術を人のせいにされても困る」

「あれ、やっぱ知ってるじゃないの」

「こうして話すの初めての相手だ」

「ふーん。まっいっか。えーっと、この二人は私の会社の社員なの、それでね、えーっと……」


 どう言えばいいのか迷っているカグラ。確かに社員までは合って入るが脳みそまで筋肉になってそうな二人にどう説明すれば納得するのかを考えている様子だ。

 ヤマトに耳打ちする向日葵。『なるほど』直ぐに『ふむ、やってみよう』と頷きカグラの肩へ手を置く。


「おい、そこのマケイヌ兄弟の二人、ウチの社員はは強い男じゃないと興味がないらしい。筋肉ばかりで弱そうじゃないか、だからマケイヌ兄弟なのか?」

「ばっかやろう。マケイヌ兄弟じゃねえ。マルケンだっ。一度とは言わず二度待てもコケにしやがって」

「ヤマトさんっ相手は怪我人ですっ」

「ちょっとヤマトっ」


 カグラとマリーが叫ぶ、マリーに至っては少しでも怪我をしているマルケン兄弟を気にする。心配された嬉しさの余りレッドがマリー目掛けて投げキッスをしながら意気込みを語った。


「おお、俺の女神さん。見ていてください、こんな怪我なんて減っちゃらですぜ。どの道直りかけだ。今コイツを倒して強い所をみせますんぜ」


 眉を潜め慌てて大きな身体をカグラの影へと隠す。投げキッスを見て露骨に嫌な顔をするカグラ。


「ごめん、ヤマト。やっぱやっちゃって。ウチの可愛いマリーちゃんを毒牙にあげれないわ」

「了解した、威勢はいいな。ではどちらか先に来る? 両方でも構わんぞ。どうせ犬以下の強さだろう。筋肉ばかり求めてスピードが無いのではないか?」


 何時に無く強気なヤマト。いつの間にか群衆が囲んでおり拍手が沸き起こる。

 周りから見るとどう見てもマルケン兄弟が悪役でありヤマトが正義の騎士にみえた。面白くないマルケン兄弟は囁き合うと、「オレが行く」と弟のブルーが前にでた。

 軽くファイティンクポーズを取るヤマト、指を鳴らし腕をぶん回すブルー。緊張が辺りを包む。


「なるほど、一人でくるのか。勇気は認めよう、しかしだ。兄に助けを求めないのか」

「手前なんぜオレ一人で十分だ。思い出したぞ。そこの嬢ちゃん、確か今度の惑星レースにボロボロの中古船で出るって話の女だな」

「わ、私っ失礼ねっ、確かに外見はボロかもしれないけど愛着のある船なんだからっ」

「本当ならレーサー同士レースの上で決着つけたいがしょうがねえ。少しお痛が過ぎたようだな。この腐れ男を倒して全員助け出すからまっててね妖精ちゃん」


 いつの間にかブルーの中ではヤマトを倒せば女性全員が自分の船に来ると信じている。群衆も緊張が高まりつつある、ヤマトはポケットから一枚のコインを取り出すとマルケン兄弟に見せ付ける。

 男達は互いに頷き、無言のままコインを上空へと投げた。

 コインが真っ直ぐに地面に落ちる。

 

 チャリリン……。


 音が鳴り響くとブルーとヤマトの一対一の戦いにもかかわらず。マルケン兄弟の兄レッドも同時に攻撃を仕掛けてきた。しかしヤマトは慌てる事もなく先に突進してきたレッドを足払いさせると潰れたかえるの様に地面へと転ぶ。

 その背中を足で踏みつけながら起つと、突進してくるブルーを腕を取り反動を使って空中高く投げ飛ばす。

 巨大なブルーの身体が弧を描くようにショッピングガラスへと当たり店前を粉々にして倒れた。

 レッドのほうはヤマトが背中をふんでおり起き上がれない状態でいた。余りの鮮やかさに群衆から拍手が跳び、カグラもその強さを見てぼーっとヤマトを見ていた。


「さて、コレで俺の勝ちだな」

「ま、まて金なら出すっ」


 レッドのポケットの膨らみに手を突っ込み財布を出すヤマト見えないヤマト、財布の中身を確認すると、ボーっと見とれているカグラへとヤマトは財布を投げつけた。


「え、っと。何々っ」

「財布だ。あの店の弁償代を払って来てくれ、足りるだけは入っているので全部渡せばいい」

「あっうん。わかった」

「なっ全部って、うぐ」


 小走りに急ぐカグラに地面にうつ伏せになり文句をいうレッド。マリーは投げ飛ばされ失神しているブルーの容態をみると、深い溜息を付いて安堵した声をだす。


「大丈夫です。気絶してるだけみたいです」

「おぉ、女神様よ。オレの事も観てくれ」

「こっちは元気いっぱいだから気にするなっ」


 手足をバタつかせて懇願するレッド、しかしヤマトが大丈夫だという事で半歩も近づかないマリー。それ所が危険な時に現れたヤマト、しかも悪党を倒したとの事でヤマトを見つめる時の頬が少し赤くなっていた。


「誰もてめえには聞いてねえ、ああっ女神様よそんなに離れないでっ」

「払ってきたわよ」

「よし。では帰るとするか」


 カグラが壊れた店から出てくるとヤマトへと声をかける。ポケットから丈夫そうな紐を取り出すとレッドの手足に結んでいく。続いて気絶しているブルーにも同様に縛ると、最後は散らばった街灯をまとめ外れないように何重にも巻きつけた。

 何故か群衆から握手を求められるヤマト達はそれに応じてその場を去る。


「オイ、まてっ。俺達はまだ負けてねえぞ、レースだっ本番レースで勝負だっ勝った方が女神を取るって事だっ、聞いてるのかっ、こら逃げるなっ」


 負け犬の遠吠えを無視して歩くヤマト達、群衆も離れて行き、残ったマルケン兄弟は警察が来るまで誰も助けなかった。


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