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ミッション14 『暗雲な話』

 二人で物影から覗くドックから先ほどの人物が出て遠くへと去っていく。

 ヤマトは回りに誰も居ない事を確認すると問題のドックへ近寄り、扉へと手をかける。当然カードロックが掛かっているのだがポケットから黒いカードを出すと、それを差し込む。数十秒後電子音が鳴ると扉のロックが外れる音がした。

 その様子を隣で見ているカグラ、思わず開いた口が塞がらないといった表情をしている。


「な、な、ちょっと。それってドロ……」

「まだ何も取っては居ない。それよりもカグラの用事はいいのか? 届け物をして帰ったらどうだ?」

「こ、こんな状況でいけるわけな……。ちょっと車の音がっ」

「ちっ、隠れるぞ」


 カグラの手を引き素早くドックの中へ入る。

 辺りを見回し人が隠れれそうなコンテナの影へと手を引き隠れた。

 外には車の止まる音が聞え先ほどヤマト達が通った扉が開く音が聞える。

 

「で。だ……、そうそう例の操縦者の事なんだけど目途はついたよ。あーあれねー、うーんどうしようかね。そう。今その倉庫に要るって割と出来ているじゃないか」


 男は男性であるが若いがどうか判別できないような声がドック内に響く。通話をしながら入ってきたのだろう、大きめの声で一人話す言葉が木霊する。

 ヤマトは当然の事ながら、カグラも口を閉ざして身を潜めていた。

 二人から見えるドック内には宇宙船が建造途中でありその姿は何処と無くノーチラスそっくりだった。


「そーさなぁ、それそれそれいいねー。そうなれば大惨事間違いないなっ大勢の死人がでますなぁ。っと会長と呼ばれるにはまだまだ。あーうんうん、じゃっまた、ご贔屓に」


 電子音の音が聞え通話を終えた気配がするドック内。直ぐに電子音の音が鳴り響くと先ほどとは違うトーンで離す男の声。


「ああ、俺だ。上との話は終わった。俺も確認した。以前の二の舞を踏む事は問わん。なるほど……レースに初期型が出るのか。何処の会社だ。ふむただの運送屋か、わかった。此方の艦は偽造する。念のため予選で潰せ。では俺は次の場所へと行く、あーあと、ここも数人見張りを置いておいたほうがいいだろう、そうそう。んーそうだな六人ぐらいにしておこうか。では」


 再び扉の開く音が聞え直ぐに閉まる音が響く。

 誰も居なくなったドック、もとい外部者しかいないドックの中で震える身体でカグラがヤマトの顔を見る。


「ど、どういう事よ。大惨事ってテロ? そしてこの宇宙船ってなんでウチの艦と似てるのよっ運送会社ってウチよね。潰すって何っ」

「一々俺に言うな。俺はそれを調べに来た。全部を知っているわけじゃない。これ以上は危険だ外に出るぞ」

「ちょ、まっまってよっ」


 ヤマトが先に外に出ると慌てて外へとでるカグラ、もう一度黒いカードキーを挿して扉をロックすると何事も無かったかのように管制塔へと歩くヤマト。

 振り向くと、


「何をしている、書類を届けるんだろ?」

 と、カグラに向かって話した。

「そりゃそーなんだけど、ちょっとまってよっ」



 月面都市、大きなドーム型になっており天井は人々を不安にさせないように液晶ビジョンになっており地球と同じように日の出から日没までを流している、夜になると透明になり本来ある星々を映し出される仕組みであった。

 向日葵と手を繋ぎながら歩く大柄の女性事マリー。深めの白い帽子を被っており遠くから見たら母子とも見える姿。

心配そうな向日葵がマリーへと質問する。


「マリー嬢、人込みは大丈夫かの?」

「うーん、得意じゃないけど。一対一じゃないから大丈夫。と、おもう。たぶん。うん、きっと。そ、それに月でしか売ってない限定クッズも欲しいし。向日葵ちゃん付いて来てくれてありがとう」

「ワシも月面には興味あったしのー、誰かと一緒のほうが安心じゃ、最初はヤマ坊に頼もうかと思ったけど難しい顔してたしな」


 疑問を並べながら自分に言い聞かせるマリーと困った笑いで見つめる向日葵。二人は月面都市の観光をしていた。月面惑星空港から程近い場所には大小様々なお土産が売っている。兎の置物からカニの置物など月の影に映し出された物などをガラス越しに見ては二人で歩く。

 手には近くで買った雪兎ソフトクリームを持つ二人。食べながらという事で前方が不注意になりやすい、角を曲がった所で人にぶつかる。白い帽子が頭から取れ顔があらわになった。

 ぶつかった拍子に相手のタンクトップにマリーの手に持っていたソフトクリームがべったりと付く。


「いってなあ。おんどりゃ目付いてるのかっ」


 首にコルセットを巻いた二人の巨体が現れた。

 どちらも同じ顔であり、同じように筋肉もりもりであり、同じようにスキンヘッドだった。違うのはコルセットの色であり、片方が赤。もう片方が青という色違いである。

 

「す、すすす……」


 声に成らない声をあげるマリーは、近くの街灯の影へと身を隠そうとすると街灯を力いっぱいに握った。前後左右に街灯が揺れている。

 呆気に取られた青いコルセット男が隣の赤いコルセット男へと声をかけた。


「おい、兄者」

「め、女神だっ……オレはマルケン。マルケン兄弟の兄でマルケン・レッド。隣のいるのは、ブルーだ。あのその。なんて言うかオレと付き合ってくれっ」

「はぁ?」

 

 隣にいるマルケン・ブルー事ブルーがおかしな目で兄を見る。

 レッドの目線は一直線であった、街灯の影で隠しきれてない身体を隠しながら首を横に振るマリー。


「なぜた、年収か? オレは、いやオレ達はこう見えても結構金はあるんだっ」


 首を振り続けるマリーを見てさらに熱弁をする兄であるレッド。


「顔か? 顔は自分で言うのもなんだが、中の上ぐらいはある。なんなら夜にだって自信はある。見てくれこの筋肉を」


 マリーを女神と呼ぶレッド。とても中の上には見えなくスキンヘッドで厳つい顔、筋肉モリモリでタンクトップを着ている男を中の上というのなら世の中はカップルだらけになるだろう。

 マリーがオロオロする中、気にする事も無くマッスルポージングを街中で披露しはじめた。


「おいおい。すまんが連れは急に突進してくる奴は好まなくてのー。服をダメにしたのは謝るのじゃ。と、いってもワシらに出来るのはクリーニング代ぐらいじゃがコレで何とかならんかのー」


 クリーニング代にしては多額のお札を手に乗せてブルーに手渡す向日葵。それまで小さくで気づかなかったのか視界に入った向日葵を黙って見つめるブルー。


「小さな妖精……」

「なんじゃと」


 向日葵が聞き返すとゴホンと咳払いをししゃがみ込むブルー。


「い、いや。なんでもねぇ。金は金はいらねえっ。なぁ兄貴」

「いや、いるだ……そうだな要らないなっ」


 真っ直ぐにマリーを見ながら喋るレッド。『だから』と言いながら隠れるマリーに続けて話す。


「だから、代わりにオレとデートはどうだっ。な、なんでも買う。買わせてくれっ」

「うわ、兄貴ずりいいぜ。そうだ、妖精ちゃん。オレと遊びに行こう、何か食べたいもんは遠慮なく言ってくれ」


 弟であるブルーが、先走るレッドを睨みつけると、直ぐに気持ち悪い笑顔で向日葵に話しかけてきた。


「お主らちょっと、気持ち悪いのー。じゃなかった気持ちは嬉しいんじゃが、ほおって置いてくれないかの」


 素直な意見を混ぜつつ笑顔で申し出を断る向日葵。マリーのほうもしがみ付いていた街灯が少し曲がってきてるようにも見える。

 

「そ、そんな事を言わずによ」


 ブルーが向日葵の手を強引に握ると向日葵はバランスを崩して倒れそうになった。その身体をブルーが興奮しきった顔で抱きとめようとすると、その光景を見たマリーが大声で叫んだ。



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