ミッション1 『退役』
作戦司令室、扉に書かれたプレートの中に二人の軍人がいた。
一人は立派な髭を生やしており、大きなソファーにゆったりと座っている。机の上には幾つ物書類が散らばっていた。
もう一人は真新しい黒い軍服を着た黒髪の青年、良く見るとまだ少しだけ幼さが見える。
若い方の青年が口を開く。
「退役ですか」
言葉を聞いて髭が生えた男は真っ直ぐに青年をみて質問をした。
「所で、君は。えーっと書類、書類と。ヤマト・秋月君か、この星の生まれかね?」
「はっ、生まれは火星ですが育ちは地球です」
「そうか、では火星とも今は条約が結ばれた。我々の軍が敵の特殊部隊を駆逐したお陰である」
話の聞いていない上官は話を続けた。
机の上の書類を見せ付ける、複数枚の顔写真が書類に張られており、一番大きな写真の顔には大きなバツ印が付いており死亡したと推測された。
「で。問題は軍人は平和に成るとお払い箱だ、わかってくれるかね、何君なら何処に居てもやっていける。成績はっとほう。ALL、Cクラスじゃないか。残念ながら解かるだろ君の成績じゃ此処にいても困るんだ」
矛盾を含む言葉を投げつけられて自主退官という道を取らされるヤマト。見せ付けられた書類を見ながら小さく『なるほど』と呟くと現実を受けいれた。
僅かな退役金額を手に基地を、軍を追い出されたヤマトは、片側に金網が並ぶ中、目的地へと歩く。幾つ物車が止まり先頭車両の前まで行くと扉が開く、ドアが開かれた車から爽快な音楽が外まで聞えた。
「よう、軍人さん乗るのかい?」
タクシー運転手が声をあげた、手には葉巻を持っており煙がヤマトの顔へと掛かる。
「ああ、街まで頼む」
後部座席に乗り目を瞑るヤマトにタクシー運転手が陽気な声をあげる鼻歌を歌いながら運転する親父。バックミラーを見るとそれまで閉じていたヤマトの目が眼光鋭く細く光る、思わず運転手が縮こまった。
「すまねえ、そんなに怒るとは」
「いや、怒ってはいない。元からこういう顔だ、それと。俺はもう軍人ではない、先ほど首になった」
「あー、それで。今月でもう兄さん見たいな人は二十人目だよ、不景気ってのも辛いねー。人が多い場所へ行き再就職かーっ若いのに大変だねぇ。つい此間までは火星と戦争するかもだって? いくらでも老若男女募集してた割りに幾らまってもドンパチははじまらねえ、結局何も無いって話じゃねえか」
何時までも話が終わらない運転手に黙って耳を傾けるヤマト、数時間もしない内に街の中心部へと付いた。
「俺は運転も出来るのだが、募集はしているか?」
「兄ちゃんを雇うと俺が首にならぁ」
「それは困るな、礼を言う。では縁があればまた合おう」
最後まで陽気な運転手に人が多い所まで乗せてもらったヤマト。
タクシー運転手から頑張れよと応援されて車を降りと、仏頂面で周りをみる。だれもかれもか忙しそうに歩いていた。
ヤマトは次の仕事、泊まる所を探しに人込み入った。