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答えのないことを求めるのは楽しいことでもあり、難しいことでもあるような気がする。
大学で学ぶものは、今まで学んできたこととは違い、答えがないことも多い。それもその通りだろう。答えが出ているのであれば研究をする必要性なんてないのだから。数年前までに結論付けられていたとしても、なにかしら新しい発見が現れれば、今までのものが変わることもあり得る。
コーヒーに関してもそうだと感じる。店によって味が違うし、多くの人においしいと思ってもらっても、それは全員であるはずがない。一人ひとり味覚の感じ方が違うことも確かだ。
それの答えを出そうとしていたのが英章という男が行おうとしていたことなんだろうと想像をする。
「なるほど……、カオ、奏音ちゃん、ひとまずお疲れさまだな」
華央からの説明にそんな感想を述べる京音里。奏音は少し疲れたような顔色で彼が淹れたココアを飲んでいる。やはりというべきかこの味はとてつもないものを感じさせられる。
デティールに来てからココアの練習は一応しているが、ここまでの味に至るまでの道筋、その答えすら出てこない。練習の仕方もわからない。
「それで……オレたちのやってることはどう感ますか?」
「このことに気が付いたのは奏音ちゃんだったね?すばらしい着眼点だと感じたよ」
「んっ――――。そう、ですかね」
急に話がふられて驚く奏音。だけどその言い方に少し違和感を感じる。もしかして、と考える部分がある。
まるでその答えを知っていたかのようなそのものいい。間違いだと指摘するわけでもなく、見守っていたということか。
ちらりと京音里を窺うとその視線にすぐ気が付いたようだ。
「……そういえば、この前来た時もカオが言っていたが、奏音ちゃんはアナログゲーム……だったか?も、強いらしいね」
「えっ?えぇ、まぁ……。いや、強いかはわかりませんけど」
「いや、奏音ちゃんは強いよ」
謎の断言を行う華央を恨みがましくにらむ。別にこれは好きでうまくなったのではない。コーヒーとは違う。
「では、カオ。その強さの秘訣は何だとにらむ?」
「それを華央さんに聞くんだ」
「強さの秘訣ですか?うぅーん、直感的なプレイもそうですけど……やっぱり人の顔色をうかがうのがうまいのかなって思います」
「なるほどな。だから、奏音ちゃんが、今回の答えに行きついたわけか」
「……そういうことを言いたかったんですか」
「ちなみに先ほどの視線の答えとしては、こちらから答えると説教がましくなると思ったからだ。それに、自分で気づくことが大切だと思ったんだ」
「えっ?えっ?なんの話ですか?」
「それじゃあ、私が伝えたのは」
「いや、きっと弟子に直接進言されるというダメージはかなり大きいだろう。きっと自分で気づく以上の打撃があったはずだ」
「それ、私がイジメていたような言い方で少し気になります」
いまだにクエスチョンマークを浮かべ続けている華央を置いて少しだけ息をつき、奏音は一体どのような賽の目になるのか、未来を想像した。




