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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
作者不明――――『人生は、時にはコーヒー一杯の暖かさの問題なのだ』
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 ちっひーの元にたどり着いたときには、なんというか……やけ食いをしていた。その近くにはミキちゃんもいる。少しおそるおそると近づきちっひーに話しかける。これをやけ食いと言わずなんというか。すごい勢いで食べていた。

「ミキちゃん……どうしたの?」

「あぁ、カノンもついたんだ。やっほ」

「うん、それで、何があったの?」

 目の前でファーストフード店で売られているデザートのたぐいを買っているようであった。まぁ、食欲でストレスなどを発散できるのであればそれでいいのだけども、さっきまで泣いていたのだから気になってしまう。

「カノンからの連絡を受けて少ししてちっひーがやってきた。それで話を聞いているウチに悲しみより怒りが勝ってきたらしく、今はこの状況」

 ちっひーは奏音が来たこと自体は気づいているようだが、特に反応をせずに黙々と口に運んでいる。少し怖い。

「そういえば、カノンはどこからが浮気だと思う?」

「う、浮気?う~ん」

 と考え込む奏音。一般論的に考えれば手をつなぐ、キスをする、肉体関係を持つあたりが思い浮かぶか。二人で食事もアウトと感じる人もいるだろうが、奏音としては許容範囲である。どこからが拒否感を覚えるかだが。

「やっぱり、キスかな。手をつなぐも……グレーっぽいけども、ゲームとかでつなぐ必要性があるかもしれないし」

「まぁ、手をつなぐ可能性はゼロではないからね。恋人つなぎはともかく」

「ちょっ、ミキちゃん!」

 ちっひーは一瞬固まっていた。その後、倍の速度で食べ始める。確か今月は……ちっひーはそこそこバイト入ってたからお金は貯まっているのかもしれない。なんというかかわいそうに。

「み、ミキちゃんは?」

「そうだな……。二人きりでいる時間が、自分より、その第三者の方が長くなったときかな。まぁ、単身赴任とか遠距離恋愛とか、そういう事例は除くけど」

「うわっ、大人」

 確かに、忙しく二人の時間がとれないならまだしも、二人の時間がとれるのに、優先されたら、もう冷めているのだろうなと感じる。

 その用に考えれば、英章が一番長い時間過ごしているのは……コーヒーだ。

「でもさ、ちっひーもだけどもう一度考えてみれば」

「えっ?」

 ようやく食べる手を止めてきょとんと顔を向ける。奏音もなにを言いたいのかと顔をのぞき見る。

「確かに浮気は、この日本においては絶対にダメだし、許されないと思う。怒る気もわかるけど……一度冷静になる時間も必要じゃない?」

「だってぇ」

「問い詰めたらいいよ。ちっひーは優しいからそこまでいけないのかもだけど厳しく行かないと、こういうときは。怒って、衝突して、それでも二人とも好きならまだつきあえばいいし、許せないという気持ちがあるならふればいい。それに、少ないかもだけど、まだ勘違いという可能性だってあるわけだしね」

「……うん」

 ここにミキちゃんを呼んだのは確かだったなと感じる。彼女はどこか大人びていることもあり、正しい判断を促してくれる。

「とにかく、待ってるだけじゃだめ。誰かが好きならば、冷静になることも必要だけど、衝動的に動いてみることも正解だと思う。理性が勝ちすぎるのも問題だよ」

 そういうものかと納得をする。

 ミキちゃんの言葉はいやに胸に突き刺さった。


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