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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
映画『かもめ食堂』――――『コーヒーは自分でいれるより、人にいれてもらう方がうまいんだ』
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 コーヒーについては正直それなりに淹れる自信こそついていたが、実を言うと未だに淹れるのがへたくそなものがある。それは酒類系統のものというのもあるのだが、もう一つ。それがココアである。

「すみません、淹れてもらっちゃって」

「仕方ないわよ。天童さんも教えてなかったみたいだし」

「うちにおいてませんでしたから」

 デティールではココアも置いてあるが、そのことに関しては完全に忘れていたのだ。そのためココアの練習も同時に始めているが、まだ客に出せる物ではないと考え、一人で淹れるような状況になっていない限りは山苗、もしくは古木に任せている状況である。

「ごゆっくりどうぞー」

 一奈が目を細めながら客を送り出す。その声音などは彼女らしい。

 奏音は一つ息をついて愚痴をこぼすように思わず呟く。

「まさかここでこんな弊害が出るとは」

「まっ、そのための修行でしょ?楽しみにしておいていいんじゃない?」

「だといいんですけど……。本当に英章さん何やってるだろう」

「連絡、とってないの?」

 少し意外そうに声を漏らす山苗。連絡を取っていないことがそんなに意外かと逆にこちらも驚いてしまう。

「えぇ、まぁ。邪魔しちゃだめかなとかとも考えてますし。そんなに意外ですか?」

「そうなんだ。いや、実はね、昨日なんだけど私の前の職場、つまりgustoの方から連絡があってね」

「gustoから?それが、なにか」

「少し情報共有というか、益岡と話してね。アイツとはほぼ同期みたいな感じなんだけどね。で、話聞いたら結構慕ってみたいだから連絡を取って他のかなーって思ったんだよね」

「そうだったんですか。華央さん……というか、一緒に働いていた茉奈さんとはたまに連絡とってますけど元気そうにやってるみたいで。あー、そういや茉奈さん言ってました」

 今朝みたSNSツールで面白いことが起きるかもしれないよとメールが来ていたことを思い出す。面白いこととはと少し身構えていたがそこまでのものではなかったらしい。

「そうね。色々言ってたわ。二谷ちゃんの成長度合いが怖いとか可能性の塊とか」

「そ、それは少し恥ずかしいですが」

 無邪気な褒める言葉は結構恥ずかしいものだ。少し頬をかいて視線をそらす。

「なんでもアナログゲームマスターだとか」

「そこっ!?」

「ブラインドサッカーもうまいとか」

「それに関してはたったの一回だけ!?」

 てっきりコーヒーに関する話をしているのかと思いきやまさかの方向転換である。確かに事実ではあるものの何かが違うような気もする。というより確実に違う。

「後それと」

 一奈の事を気にするようなそぶりの後そっと奏音の耳に寄せる山苗。

「連絡とってないと思ったのは、あなたが誰か好きなのかを金里さんから情報リークもあったしね」

「っ!?茉奈さんのばかー」

 半分くらい泣きそうになりながら思わず罵倒してしまう奏音だった。


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