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「よし……お疲れ様でした」
今日はバータイムもなく、カフェ時間のみだ。閉店作業も終了し、一息を着いた形で英章が告げる。
これを持ってセンブリの一時閉店となった。お客さんからはしばらく来ることの出来ないことを嘆くような惜しむような声をかけられながらのこととなった。
「ひとまず、センブリはこれで一時閉店。益岡、茉奈ちゃんは明後日からcafe.gustoに奏音ちゃんは五日後、正式オープンに合わせての顔合わせなんかの意味も込めてデティール・オン・カフェに行ってもらう。基本的にはそちらの方針に任せるけど、一応うちとしては研修という形としてとらしてもらう」
整列しているセンブリのメンバー、華央、京、茉奈、奏音に言葉をかけていく。
「わかりました。先輩は京都の方に?」
「うん。京音里さんの方が受け入れてくれた。それに家も用意してくれたから半ば住み込みのような形で働かせてもらうこととなる」
「そうっすか……わかりました」
華央としてもまだまだ言いたいことがあるであろう。しかしそれ以上は何も言わず視線をバイト勢、三人に向けた。
「パスを受け取ったと言うことで女の子の中では一番年上のあたしから。店長」
「店長って……まぁ、その通りだけど」
「いい?センブリの副店長の約束通り半年たったらまたうちの店長として戻ってくること。それまではリンドウのスタッフ、英章として精一杯頑張ったらいいと思います。私たちは一時的な移動だからあれだけど……ひとまず頑張ってくださいよ、店長」
あくまでも店長という言葉を誇張する茉奈。自分たちにとって英章はただの男ではなくセンブリの店長であるということを決して忘れるな、そういうことである。そのことが察せれないほど英章は鈍くない。小さく頷くと満足したように茉奈は笑う。
「それならよしです。それじゃあ、次は」
視線を向けた先には奏音。しかし奏音は私よりも先にと京の背を押す。
「……正直さ、私としてはまだ納得してないよ。センブリでいいのにっておもってるけど……だからこそ。その……あーもう!京都でうつつぬかさずにしっかり修行していい物持って帰ってきてよ!」
「あはは……、わかったよ。まかせて」
「な、ならいい」
京はぷいと背を向けて奏音を見上げる。京としては初めて兄離れともなるわけだがそれに携わって交差する想いもあり、妹としても声をかけづらい立場でもあることだ。
「じゃあ、最後に私から」
奏音は小さくほほえんでから英章を見据える。
「正直、ようやくバリスタにもなってここからというときに出鼻をくじかれた、そんな気分です。だけど楽しみにもしているんです。修行をして戻ってきたときには英章さんのコーヒーはきっと進化しているだろうって。だから……私も負けません。デティールの方で修行をして……センブリでもいかせるように。だから、そのときはよろしくお願いします」
「うん、わかった。ありがとう。それじゃあ、今日はこれから」
「はいっす!しばらくお別れと言うことでちょっとしたお楽しみ会にしましょう!」
テーブルに隠されていたアナログゲームの数々。全員で顔を合わせて笑い合ってから遅くまでアナログゲーム大会となった。




