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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
リアリティ・バイツ――――『僕はこれだけで満足だ、タバコとコーヒー、少しの会話。それと、君と僕と5ドル』
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 朝一番、開店準備とともに奏音はゆったりとした時間を過ごしていた。この上級制服もようやく名実とものものになった。とは言っても、まだライセンス登録はされておらず合格発表の段階だが。

 布巾をしまいなんとなく外を見ると息を荒くしている少年?が目に入る。さすがに無視するわけにはいかずグラスに水を入れて外に持って行く。

「あの、大丈夫ですか?」

「えっ?」

 近くによると桜色の髪とやや高い声が少女っぽさを醸し出すが、雰囲気としては男性のそれであることを認識できる。ただ近くに見ることによって次は日本人かどうかという疑問が出てしまう。

「あっ、えっと、日本語……大丈夫ですよね?」

「大丈夫ですけど」

「よかった。それで、これお冷なんですけど」

「お、俺に?」

「すごい汗かいてるみたいなんで」

「ありがとう、ございます」

 何があったのだろうか、本当に息の弾ませ方がすごい。それにどこか焦ってるようにも見える。遅刻……にしては焦りすぎなようにも思えるが。

「はぁ、ありがとうございます。すみません」

「いえいえ、お気になさらず。以前来ていただいたこともありますし」

「へっ?」

 驚いたような顔をする。はなしているうちに思い出しただが確かに彼は見覚えがある。少しだけいような集団だったから記憶が根強く持っている。

「えっと、青い髪の女の子と、後他にも何人か女性と来ていたみたいですけど」

「ああ。そっか、この店か」

「はい、あの時に」

「そっか、あっ、ご、ごめんなさい。ちょっと急いでいて」

「何かあったんですか?」

「い、いえ。個人的なことなので……すみません、お水ありがとうございました。またお邪魔致します」

「お引止めして申し訳ありません。ありがとうございました」

 あまり深入りする必要はない。プライバシーの侵害をするわけにはいかないし、それでここに来にくくなったら売り上げを下げることになってしまう。

 また、走り出した彼を送り出した後店の中に戻る。

「あれ?奏音ちゃん、どうかした?」

 奏音がグラスを片手に戻ってきたことに疑問を持ったのか華央が投げかけてくる。

「店の外で息を切らしてる人がいて、無視するわけにもいかなくてお水を出してたんです。それに、お客さんとして来てくださったこともありますし」

「なるほどね。本当は味で覚えてもらうところが大切なんだろうけど、その人にとってみてもこれでうちのお店が印象つけもできたかもしれないなあ。それにいいお店という噂が回れば、それだけでプラスだし」

 経営的な方面からもフォローをする華央。奏音が少し申し訳なさそうにしているのをみてのことらしい。その優しさも嬉しいところだ。

「じゃ、開店したらだけどオレがバール周りを主にやるから奏音ちゃんはホールをお願い。ホールに余裕ができたり、逆に注文がたまってたらコーヒーとかの担当もよろしく」

「はい、わかりました」

「よし、じゃあ開店まで休憩」

 華央の号令の後背を伸ばす。今日は開店からしばらくは華央と2人で店を回す必要がある。お昼頃には茉奈もやってくる予定

 。英章は今日全休だ。

「う~ん、こうしてみるとなぁ」

「はい?」

「オレも先輩も用事で来れないときは臨時休業していたんだけど、奏音ちゃんも頼もしくなったから、奏音ちゃんが店を回してもいいかもしれないなと思って」

「い、いや、それはさすがに」

「まあ、いずれだよ。オレもどこかのタイミングで独立するかもしれないし」

「そのときは私も卒業してアルバイトやめてるかもしれませんけどね」

 と、肩をすくめて見せた。

途中で出てきた桜髪の少年は私の過去作「中二病ってなんですか!?」の主人公です。こちらの作品にもセンブリは登場しております。

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