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「それで、兄さんたちは何してるの?」
少しむくれた様子で京はリビングのコタツの中でコリドールをプレイしている奏音と英章を見下ろす。
「早かったんだ、京」
そんな京を意にも介さずにコマを一ます進める英章。戦況は五分五分。どちらも決めの一手がかける状態。壁の残り数も残すところ1つづつだ。
「お、お帰り。京ちゃん」
「ただいまです。そしていらっしゃいませ」
奏音に対しては強くでれないのも事実なので仕方がなく挨拶を返す。セーラー服のままため息をつく彼女だが英章は気にしたそぶりを全く見せていない。そこにはごまかそうとしているだとか、逆に開き直っているだとかそういう意識はなく別段悪いことをしているわけではないという意識がたっているのであろう。
長年妹をやってきている京はそのことを理解しているので怒る気も起きない。
「勉強、するために奏音さん招いたんでしょ?で、今何やってるわけ?」
「うん?コリドール」
「いや、そじゃなくて」
「あはは……一通り実技テストのほうは確認してもらったからさ。それで筆記に移る前に、息抜きでもって」
「ここで兄さんがコーヒーを出さずにオレンジジュースを出しているあたりは評価をしますが、なんで思考系ゲームをもってくるんですか」
「最初ヌメロンとか持ってこようかと思ったけど、よく考えたら奏音ちゃんは未プレイだったしでやめたよ」
「ヌメロンって……頭脳ゲームじゃん!?」
「あっ、テレビでやってましたよね。知ってます」
「奏音さんもそこに反応しないでくださいよ……」
疲れたように息をつく京。そんな京の反応を知ってからしらずかコリドールは白熱する。
「なんていうか、本当奏音さんって毒されてきましたよね」
「奏音ちゃんは成長してるんだよ」
「……フォローしてくれているところ悪いですがおそらく毒されてきてるで正解です」
「あれ?」
「そしてチェックメイトです」
そこに置かれた最後の壁。そこから逆算される最短距離は間違いなく奏音の勝利を告げている。
「負けたかぁ。でも冷静さを失わずにやっていけるという点とかでいえば、筆記試験もやれそうだね」
「関係あるんですかね?」
「あるといっちゃあるし、ないといっちゃない」
「お兄ちゃんもお兄ちゃんで茉奈さんの影響受けているような気がしてきた……」
京の心からのため息は誰にも聞かされずに、
「じゃぁ、テスト問題持ってくるね」
という気楽な英章の声にかき消されてしまう。
「私も着替えてきます。奏音さんもごゆっくり」
「うん、えっと、ごめんね、京ちゃん」




