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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
トルコのことわざ―――『コーヒーは地獄のように黒く、死のように濃く、恋のように甘くなければならない』
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「お疲れ様」

 最後の客を送り出したときには、もう、クリスマスイブが終わり、そして過去最大級のピークに全員が疲れた顔をしている。店長という立場ゆえか、気を使い、お疲れと声をかけたものの、一番働いていたのは紛れもなく彼である。

「英章さんもお疲れ様です。幸いにして危惧していたことはありませんでしたね」

「うん、それはよかったよ」

 危惧していたことというのは、クリスマスということで羽目を外した集団が来ることや、リバースしてしまうお客様ということも考えていたのだが、幸いにしてもそういうお客さんが来なくてよかったものだ。

「とりあえず、もうみんな疲れてるみたいだし、どうせ明日は休みの予定だから今日はこのまま終了とするから着替えておいでよ」

「はい、そうさせて頂きます」

 言葉に甘えて奏音は更衣室へと向かう。そこにはすでに私服へと着替え終えている茉奈の姿があった。

「あっ、そうだ。茉奈さん。今日はよろしくお願いしますね」

「さーて、今日のお泊りでは奏音ちゃんからどの情報を抜き取ろうかな」

「もう、茉奈さん」

 からかわれた奏音はわかりやすく怒って見せてから自分の服を脱ぐ。いまだにこの新しい恰好というのは慣れていない。

「それに、まだ今日はクリスマスだからね。サンタさんが丁度配ってくれる時間だよ」

「そう、ですね」

 奏音はロッカーの奥から綺麗にラッピングされたプレゼントを取り出す。

「こっちが英章さん、こっちが華央さんの分です。とりあえず茉奈さんはこっちを」

「うん、ありがとー。喜んでくれるといいんだけどね」

「大丈夫ですよ」

 そのプレゼントはクレフ女子従業員らが悩んだ末に購入した、英章にはマグカップ、華央にはブレスネットだ。京がこの時間までいないのは少し残念だが仕方がない。それに恥ずかしがって渡そうとしない可能性もあるので、家でゆっくりと兄妹で会話をすればいいだろう。

「よし、じゃあ行きますか。ホールにいるかな?」

「いるんじゃないかな?とりあえずいってみよっか」

 私服に着替え終え、お泊りバッグも手にしながら二人はホールへと向かう。

 するとすぐにホールで何やら話している店長、副店長組を見つける。

「お疲れ~、と。今日は奏音ちゃんお泊り?」

 華央がいち早く二人を見つけて奏音のバッグについて触れる。

「はい。そうです」

「そっかそっか。何だったら適当にボドゲもってってもいいからね」

「ありがとねー、華央さん」

 華央に気づかい、というのだろうかに礼を述べてから二人は顔を見合わせてこのタイミングと決める。

「それでなんですけども、英章さん」

「華央さん」

「うん?」

「どうしたの?」

「これ、私達、京ちゃんと考えて買ってきました」

「会うとうれしいです、どうぞ」

 そっと、二人とも同時にプレゼントを渡す。それに目を丸くするは男性陣。その後小さく苦笑する気配が伝わる。

「なんていう、考えること同じっすね、先輩」

「そうだな」

「?どういう……?」

「これ、オレ達から」

「女の子のプレゼントってなかなか難しかったから、気に入らなかったら、ごめんね?」

 そういって、こちらも綺麗にラッピングされたものを渡す。

「これ……」

「考えること同じって、そういうことか~。まぁ、お互いにサプライズってことでいいんじゃないかな。あっ京ちゃんの分は?」

「家帰ってから僕が渡す予定。たぶん眠ってると思うから朝明けてからだと思うけど」

「それじゃあ、開けますね?」

「オレ達もそうさせてもらうよ」

 そういってプレゼントを好感し終わった後、さっそく開ける。中身は。

「わぁ」

「へぇ……、すごい」

 中から流れる、有名なクリスマスソングのオルゴールバージョンが流れ出す。そして顔を覗かせるネックレス。

「可愛いマグカップだね」

「先輩はマグカップすか。オレは、ブレスネットでした」

「すごい、可愛い。気に入りました」

「思った以上にオシャレで驚いちゃった。よく見つけましたね」

 お互いにプレゼントを褒め合う。

 それからそっと、奏音は茉奈の顔色をうかがう。

「「「「それで―――」」」」

 そして沈黙。

 全員の声がそろっていた。正しくは奏音と茉奈、英章と華央はお互いに声を合わせることを目的としていたので同時にその目的を達成させようとしたこととなる。

「なーんか、嫌の予感がするから、オレ達の方からいかしてもらうよ。そのネックレスの入ってる箱、それを持ち上げてみて」

 言われた通り持ち上げてみる。そこには、メッセージカードが。『いつもありがとう』という言葉から始まり激励と応援の言葉が混ざった暖かいものだった。

「華央さん、嫌な予感正解です。プレゼント包装に使っていたリボンを見てください」

 言われた二人はそっと見る。そこにもやはりメッセージが。

「やっぱ考えるところ同じかー」

「まぁ、ある意味僕たちらしいんじゃない」

 お互いに肩を震わせて笑い、ながらそれぞれのプレゼントをそれぞれが大切に胸に抱いていた。

奏音、茉奈、京へのクリスマスプレゼントはこちらを参考にさせて頂きました。

『https://www.jwell.com/accessory/ladys/pendant/GS6N801343DI』


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