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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
北原白秋―――『やはらかに誰が喫みさしし珈琲ぞ紫の吐息ゆるくのぼれる』
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6

 その後もドリップコーヒー、ラテアートと合計4つの項目を終えて全員通じてのテストは終了とした。ただし、英章はその後センブリでは出していないもののコーヒーカクテルの作成も行っていた。そして華央と奏音はというとその間にキッチンにてデザートを作成する。全く新しいセンブリでは出していないデザートだ。

「よし、完成。奏音ちゃんは?」

「私もどうにか……。正直自信があるわけではないんですけど」

「それはオレもかな」

 と小さく笑ってデザートの入った皿を運ぶ。

「完成しました」

「おう、そうか。じゃあ、カオから」

「はい。ムーンメロン・スムージーです」

 コトリと皿を机に置く。その名前の通りメロンスムージーを基調に三日月をイメージしたスポンジケーキは甘めに作っておりコーヒーの苦さと合わせて美味しさは増していくだろう。

「うん、なるほど」

 一口食べて頷く英益。何がなるほどなのかと問いかけたくなるがそこで色々質問するのもナンセンスだと切って捨てる。

 味の変わり目ともなる半分辺りまで食した後奏音に目を剥ける。

「あっ、えっと……。コホン。バニラエッセンスチョコクレープです」

 それは今までに挑戦したことのないクレープ型のデザートだ。チョコレートにバニラエッセンスの香りがつく。もちろん他にもフルーツ等を入れる予定もあったのだがある理由からフルーツを入れるのを止め別種類のものを用意する。

 そもそも、クレープが一個大きなものがあるのではなく三つほど小さな形のものを用いているのだ。

「そしてこちらがオレンジクリーム、イチゴクリーム、ブルーベリークリームです。よければこちらをつけてお食べください」

「なるほど、そういうタイプね」

 それだけでは寂しい味付けだったものをクリームをつけることでさまざまな味を楽しめるようにする。そしてクリームにすることによりフルーツのみずみずしさを打消しコーヒーの味を邪魔することも無くすという意味を持たせる。

「流石だな、二人とも。益岡の方はもともと考えてたやつだったけ?」

 英章が残ったデザートを頬張りながら尋ねる。デザートは一応三品分作成しており京たちも食べている。

「はい、その中でも特によかった奴っすね。奏音ちゃんは?」

「私は……今回言われて新たに考えました。といってもクレープなんでそこまで艦型ということでもないんですけど……」

「へー、すごーい。完全にそっちの人になってるね」

 茉奈はからかうように告げて奏音は否定の言葉を出そうとしたところであきらめ肩を落とす。今回こんなテストをしてもらっているのにここまで否定するのもおかしな話だ。だけどどうにかして言葉をつなげようとする。

「もともと新しくデザートだけ考えてきてということだったんですけどね」

 だからこそ、ある意味集中して考えられたともいえる。そしてデザートもすべて作り終えた後英益は口を開く。

「よし。じゃあこれから評論としていくと思う。ヒデとカオは元師匠の、奏音ちゃんは老人の戯言とでも思ってくれてかまわないよ」

「い、いえ。そんな」

 戯言と切り捨てることはできない。師匠の師匠なわけで……。そんな否定をできるほど傲慢には慣れない。

「じゃあ、まずカッピングテストの結果から」

 ゴクリと唾を飲んで結果に備えた。

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