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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
北原白秋―――『やはらかに誰が喫みさしし珈琲ぞ紫の吐息ゆるくのぼれる』
46/105

‎1

 紅葉が赤く色づく11月19日。京都、伏見稲荷は京都駅からJRでたったの二駅だ。その利便性から観光客もなかなかに多い。その一つの魅力として体験できるというものがあるかもしれない。

「これがおもかる石か……」

 少し並んだ行列の先に立った英章は感慨深そうに呟く。おもかる石はそれを持ち上げた時、自分の予想よりも軽ければ願いが叶うというものだ。

「願い事……」

 隣に立つ奏音も口の中で小さく呟きながら自分の想いを大きくさせる。その大きくさせた思いのそれに気が付いて手元が狂う。

「うっ……」

 そのせいもあるのだろうか、やたらと重い。

「あれ?奏音ちゃんなに願ったの?重そうだったけど」

「……つつかないでくださいよ」

 華央のことを半眼で睨みながら奏音は後ろにいる京に場所を譲り横にずれる。そして同じくよこにずれた英章に話しかける。

「どうでした?結果は」

「んー……予想通りの重さだった場合はどうなんだろうね?」

「えっと……自分次第となるんじゃないんですか?」

 曖昧な答えになるが仕方ない。そういや重いか軽いかのどちらかだが予想通りの重さというものは聞いたことがなかった。

「だろうね。結局自分次第だし。奏音ちゃんの方はあまり芳しくなかったみたいだけど」

「そ、そうですけど……うぅ」

 顔を立ち並ぶ鳥居と同じく茜色にして視線を横にずらす。

 ここにきている全員、つまりはセンブリのメンバーがおもかる石のチャレンジを終えた所で伏見稲荷を下りていく。伏見稲荷と言えば一万もの鳥居をめぐるお山巡りがある。しかしお山するにはかなりの距離を歩かなくてはならないため疲労もし時間も食う。それならばお山するよりも他の京都観光に費やしそうという運びになっていた。

 この京都旅行は2泊3日の運びとなっていたがこの2日目、そして3日目までもつれ込む可能性のある用事があるため結局のところ観光をすることができるのは初日以外にない。

「信ぴょう性とかそういうのはわかんないとはいえ、重く感じたら結構ショックだな」

 誰よりもおもかる石にダメージを受けているのは奏音をからかった華央だった。

「おもかる石って結局は自分の想いがどれだけ大きいかできまるんじゃないの~?ってことは華央さんの想いは?」

 からかうように華央の腕をつかんで笑う茉奈。その茉奈は自分の夢について願ったらしく結果は軽かったらしい。

「なっ、先輩に認められるって想いが軽くないよ」

「益岡、僕に認められるじゃなくて僕を超える、独立するって夢じゃないのかよ」

「あっ……」

 英章からもつかれて微妙な顔つきになる。言われた通りとのことだろう。

「次は金閣寺に行きましょうか。というか、兄さん。ここ、だよね?」

 地図をさしながら京は英章に尋ねる。

「ん?あぁ、鹿苑寺ろくおんじ。そこであってる」

「鹿苑寺?」

 奏音は首をかしげながら問い返す。

「金閣寺の正式名所だよ。山号を含めると北山鹿苑寺っていうのが正式名所なんだよ。金の舎利殿で作られているから金閣寺って言われてるだけ。同様に銀閣寺は東山慈照寺って呼ばれてる」

「へー……詳しいんですね」

「まあ、軽く調べたからね」

 小さく笑って金閣寺を目指して全員歩く。

 その途中、どうしてこのようなことになったのか、そもそものことを思い出していった。


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