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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
アン・モロー・リンドバーグ―――『よいコミュニケーションは、ブラック・コーヒーと同じくらい刺激的。その後は、なかなか眠れないもの』
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 とは言ったものの。奏音の心には一つの思いがあった。反射的にデザートづくりについては否定してしまったが興味が全くないという訳ではない。

 だから流れでこうなったことは嬉しいという気持ちがあることが隠せなかった。

「アークショコラ自体は難しくないし、別段大きな手間をかけて作ったわけではない。だから料理の異本ができていれば作れると思うよ」

「それは、僕が料理の基本ができていないというあてつけか?」

「そ、そんなことないっすよ」

 後ろからひょっこりと現れた英章の言葉にタジタジになりながら答える。奏音もメモしていた手をを休めてクスクスと小さく笑う。こういってはなんだが華央はやはりいじられてこそ光るものがありそうだ。バリスタにいじる弄られるがあるのかわからないが。

「まあ、冗談だが……ウチとしても益岡意外にデザートの類を作れる人が増えるってのは嬉しいことだし。若い女の子の感性というのもほしいところだからね」

「オレもオッサンじゃないんすけど……、まあ確かに今のJK、JDが何流行ってるとかは知らないっすね」

「別に私もそこまで流行に敏感なわけではないんですけどね……。ただ、華央さんの作るデザートは好評だとは思いますよ。特にチーズを使った系統のものはコーヒーにもよく合うように作られてて個人的に好きです」

「うん、先輩の淹れるコーヒーを最大限まで引き立て、それでいてオレの作るデザートを引き立ててもらう。この相互性が無かったら作る意味ないと思ってるからね。オレはセンブリ発足時からいて料理もずっと提供してきたけど、それだけは忘れずに来たし」

「ははっ。まあ、嬉しいこと言ってくれる。だが、自分のコーヒーにあうやつもつっくてなかったら独立はできないぞ?」

「あっ」

「えっ、気が付いてなかったんですか?」

 ぽかんと口を開ける華央に思わずツッコム。独立の事を度々言ってはいるもののこういって抜けてたりまずもって英章に認められたいということを言ったりと本当に独立したいのかを聞いてみたくなってしまう。

「全く……、まあウチとしてはお前がずっといてくれる方が嬉しいけど」

「……こうなったら、奏音ちゃん!」

「は、はい!」

「オレの持ってるデザート技術全て教える!パティシェ……いや、パティシエールになってセンブリを支えてもらう間にオレはオレの料理を作る!」

「はい?」

「なんだったら菓子製造技能士の資格を取ってもらうように頑張る!」

「だ・か・ら!私はただのアルバイトですってばぁ!」

 余りにもな発言に自分はただのアルバイトであることを示す。それをみて英章は楽しそうに肩を揺らせて笑いながら材料を持ってコーヒーづくりに戻る。

「一応センブリは能力によって昇給もあるからマイナスではないと思うけど」

「最近私の事水城大の大学生ってこと忘れてる人多くありません?料理系統の専門学生でも熱心なボドゲプレイヤーでもブラインドサッカーのプレイヤーでも、ましてやパティシエなんかじゃないんですけど」

「……なってみる?」

「そんなマルチタスクな人間じゃないです!」


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