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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
アン・モロー・リンドバーグ―――『よいコミュニケーションは、ブラック・コーヒーと同じくらい刺激的。その後は、なかなか眠れないもの』
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「バールマン?」

 コーヒー講座実施日から二週間経ち、茉奈と一緒になった休憩時間でコリドールをプレイしながら尋ねる。戦況は茉奈優勢だ。

「ええ。そうです。この前……茉奈さんはいませんでしたけどコーヒー講座開いたじゃないですか?」

「あぁ。私忙しくてこれなかったけどどうだった?」

「反響はあったと思いますよ?現にコーヒー豆の販売量増えてますし」

「確かにね」

 会話をしながらもプレイングにお互いミスはない。ここは駒をお互いに動かさない動きを優先している。

「それで、その時友達来て言ってたんですけど、英章さんはバールマンを目指しているのかと聞かれましてね」

「うわっ、そこ塞ぐのか……。えっと、そっかー。まあバールマンにしては料理が下手すぎるのがあれだけど」

「料理に関しては確かにそうですけど、あんなにお喋りというか講師も上手いんだということに驚いたんですよね。……茉奈さんこそえげつない攻めかただと思いますよ」

「へー、そうなんだ。んー、でもそういうのも上手そうだから逆にバールマンに近づけそうなのは華央さんの方だけど。……見えない。ここに置いたらこうなるから、こうするしかないか」

「あー、そっか。英章さんも華央さんはそう言う意味ではいいという内容を言ってたと思います。……そういうこれしかないという思考ってよくないですけどやってしまいがちですよね」

「うん、それって結局相手の手のひらの上で踊らされているだけだし」

「逆に言えば相手をこちらのペースに飲みこませるのが勝利の条件ですよね」

「うーん……。これ負けかな?」

「そう、かもしれないですね」

 とどめとなる板を途中で置いて勝ちを確信した笑みを浮かべる奏音。まだゲームの途中だが残りの板の数的にどう動かしても茉奈は最短距離での動きは7回動かさなくてはならず、奏音は最長でも6回であることはお互いの頭の中で思い浮かんでいた。

「いや、なんで二人ともそんなにゲーム上手いんだよ」

「あっ、華央さんも休憩ですか?」

「あっ、最弱さんも休憩ですか?」

「……奏音ちゃんたちと入れ替わりで。そして最弱さんってやめてよ」

 茉奈のからかう声に眉根を寄せて講義をする華央。茉奈は肩をすくめながらゴメンゴメンと軽く笑ってコリドールをもとあった場所に戻す。

「私もここに来てからやり始めましたけどボドゲってこんなに面白いんですね」

「そうでしょ?非電源ゲームだから基本的にはゲーム機を買うよりは安く済むし場所を取ることも無いからね」

 確かに弱さはあるが楽しいということには変わりないので華央は興奮気味に同調する。

「それで、そうそう。さっき話してたんですけど華央さんはバールマンを目指しているんですか?」

「バールマン?よくそんな言葉が出てくるね」

 と小さく笑ってから考えるように顎に手を当てる。

「オレはそこまでではないかな。確かに全般的に色々やりたいとは思うけどどちらかと言えばコーヒーとデザートを作る、パティシエとバリスタのあわせ人って感じ。それで先輩にも掛け合って色々デザートも出さしてもらってるし」

「えっ?そうなんですか?」

 ここにきて初めて聞く事実に驚きの声を上げる奏音。奏音としてはてっきり形式的に出来上がっているものを作っていると思っていただけに英章がオリジナルで作っていたということが意外だった。

「そうだよー?華央さんも副店長らしく色々やってるもん。確か『アークショコラ』とか『エッセンスアフォガート』、『プリンティラミスモード』は華央さんが考えたものですよね」

「そうなんだ……」

 アークショコラはココアパウダーを多めに使いビター風味のケーキであり苦味とコクの深い味わいとなっている。エッセンスアフォガートはバニラエキスと濃い味のコーヒーが主流だ。苦味を聞かして落ち着いた味わいで大人の味となっている。プリンティラミスモードはその名の通りプリンの生地とチョコレートの甘さそしてマスカルポーネチーズをふんだんに使った甘いスイーツとなっている。

 自分が知らない料理を誰かにおすすめすることはできないという方針の元、研修期間にデザート類は全て食べている。その時に発生するお金は研修時バイト料が少ないという点で相殺されている。

「まっ、デザートづくりに関してはこの中の誰にも負けない自信はあるよ」

「ということで奏音ちゃんもデザートづくりやってアイデンティティを奪っていこう」

「ちょ、ちょっと!」

 何気なく言い切った茉奈の言葉にあわてて奏音もツッコミを入れた。

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