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いつも大学へ行く時に用いるバス亭誓う句のファーストフード店でSecond World Storyのスタミナを消費しながらいつも絡んでいるメンバーを待つ。もし、大学自体が駅から近いのであれば大学内で待ち合わせてもいいのだが残念ながらそうとはならない。
シェイクを喉に通して頬杖をつき待っていると自動ドアの開閉音に気付いて視線を上げる。
「あっ、カノンお待たせ~」
「カノンちゃん待った?」
すぐに奏音を認めた二人が手を上げてやってくる。奏音はかぶりふりながら否定の言葉を告げる。
「ううん。それより、ちっひーとユウくんは同じ電車だったんだ?」
「改札のところで偶然見かけたんだけどね」
「そうそう!たまたま。カノンはいつからいたの?」
「え~っと、二つぐらい前の電車かな」
「そうなんだ。後はミキちゃんだけだね」
「私も今来たよ」
「うわっ」
ニュッと現れたミキちゃんに驚く面々。話に夢中になっていていつのまにやってきたのか気が付いていなかった。
「ということで、私が一番最後だったみたいだけど……。これで全員そろったね」
フッと時計に目をやると予定よりも5分早い。このままゆっくり歩いていけば十分間に合う時間だ。
今日は偶然にも誰もバイトも用事も入っていなかったのでカラオケにでも行こうということになっていた。
奏音は手に持っていたシェイクを全て胃に流すと立ち上がる。そのままおしゃべりをしながらファーストフード店を出てゆっくりと歩き出す。センブリのある方向とは逆向きだ。
「あっ、そうそう」
ふっとセンブリの事が頭をよぎって思い出す。本当はカラオケ屋についてから話そうと思っていたのだが時間があるのなら今から話しても問題ないだろう。
「どうしたの?」
「うん。実はうちの店でコーヒー講座をやろうっていうことになっててさ。明々後日なんだけど、みんな予定なかったらどう?まだ枠が余ってるから」
あの張り紙をしていこう既に10名の予約が入っているが、まだもう少しだけ枠が余っている。これ以上人数が増えるかと言われれば微妙な日にちだ。だから今日遊ぶついでに人数確保をしようと考えていた。
「参加費は500円だけど、確実に500円以上の体験はできるしお得だとは思う。内容としてはこれに書いてある通り。興味ある?」
手に持っている広告のコピーを隣を歩くちっひーに渡しながら全員に問いかける。
「明々後日かー。ゴメン、俺その日用事あるわ」
少し困ったように眉根を寄せたユウくんが悪いと片手で謝る。
「ううん。気にしないで突然だったし。二人はどうする?」
「……あのイケメンは?」
「どのイケメンを言ってるのかわからないけど、ミキちゃんがあった二人、つまりは副店長さんと店長さんはいるよ。というか講師はあの二人だし」
「なら、私は参加する」
完全にそれはコーヒー目当てではなくイケメン目当てという不純極まりない動機だがとりあえず人数確保であることには変わりない。奏音は少し呆れたように笑って最後のちっひーに視線を向ける。
「うぅん……。今月そこまで余裕ないしな~。でも、カノンのメイド服姿も見てみたいし」
「なんでみんな私の姿目当てなの。あとメイド服じゃなくて普通のウェイトレスの姿だし」
「よしっ、決めた!」
「話聞いてー」
「カノン、カラオケ点数勝負!OK?」
「いや、なにがOKなのか……。というか、行くのが罰ゲームなの?」
「そうじゃないけど、せっかくだからさ」
マイペースっぷりに呆れてため息を吐く。その様子を楽しそうに見ていたユウくんが口を開く。
「いいんじゃない?ただし二人ともっしている曲でもうたたっ回数とかでそ公平、不公平が出るから二人とも一番得意な曲で勝負。その曲の難易度もあるだろうから算出されている平均点との差が多い方が勝ちね」
「結構本格的にルール決めしているあたりがすごいよ」
ツッコミが追いつかなくなりだんだんとただの感想を述べるだけにとどまっている。
「よっし。じゃあ、それで行こう。あたしはあれ歌おうかな~」
なんて一人で思案し始めるちっひー。だがその様子に後ろでユウくんは笑い奏音に話しかける。
「点数差、で勝負だよ」
「あっ……。そういう」
何を言いたいのかに気付き奏音は少し睨む。
「なるほど、ユウくんは策士だね」
一人頷くミキちゃんにユウくんは答えずにちっひーに話しかけに行く。
「ちっひーは前回予定合わなくて初参加だもんねー。どんな歌うたうのか待ってるよー」
「あたしの歌声をココロして聞くがいいー!」
「おっ、期待しているぞー」
勝手に盛り上がる二人にそっとため息を吐く。ちっひーがやたらとうまくない限り、結果は明白だろう。




