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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
ジェームス・マッキントッシューーー『人間の意思の力はその人が飲んだコーヒーの量に比例する』
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 レストラン、クークリル。有名チェーン店であり価格も良心的だ。

 ブラインドサッカーを終えた奏音たちは駅の近くにあったこの店で夕食を取ることとなっていた。一応は手伝いをしてくれたお返しという形で茉奈と、そして英章、華央の三人でおごってくれるとのことだった。つまりは奏音と京はお金を払わず、ということになる。

「本当にいいんですか?」

「うん、気にしないで食べてよ。たまには、ね?」

「アタシは元からそういう予定だったしさー」

 奏音は小さく頭を下げてそれにお礼を示す。華央はメニュー表をとり奏音らに差し出す。

 座り位置としては奏音、京、茉奈。そしてテーブルを挟んで英章、華央となっている。

 奏音は華央からメニュー表を受け取り広げる。洋食を中心としたメニューがいくつも乗っている。こういうのを見ても昔は何とも思わなかったがセンブリでアルバイトをしてからだろうか、そのメニューの配置やこのレストランが今何を押したいのかを推測してしまいがちになっていた。

「アタシは、粗挽きのチーズハンバーグにしよっかなぁ。動いてお腹減ってるし~」

「私は海鮮パスタにします」

 茉奈はメニューをパラパラとめくった後すぐに決めて京は狙い撃ちをしていたみたいに告げる。思いのほか二人の注文が早く驚く奏音。それに気づいたのか茉奈が笑う。

「アタシはいつもフィーリングで決めてるから早いんだよね~。京ちゃんはパスタ好きだし」

「そうなの?」

「あっ、はい。こういう所は基本パスタ食べてますね」

「へー……」

 と頷きながら奏音専用となったメニューに目を通してどうしようかと視線を彷徨わせる。喫茶店ならば基本的にココアを頼めばいいのだがそれ以外の場所ではかなり迷うたちだ。

 チラリと視線を前に向けるとすでにメニューを決めた様子の華央とまだ迷っている英章の姿が見える。二人の性格そのままに見える。

 その後少ししてからようやくメニューを決める。クークリルは何度か足を運んでいる場所ではあるため安心して頼める。たまにチェーン店などでもやたらと量が多かったり少なかったりする時があるからあ。

 少ない分には追加注文やデザート、家に帰ってからでも何か食べたりしたらいいのだが逆に多かったら食べきれないという事態が出てくる。奏音の性格上出されたものは全て食べるようにしているので残すという行為に少しだけ違和感を覚えてしまうのだ。もちろん、他人が残していることに関してはそこまで思わないのだが。

「私は……、リゾットのセットで」

「OK。じゃあ、頼むね」

 英章さんもそのタイミングで決めていたみたいでボタンを押して店員を呼ぶ。全員の料理を頼んでくれる。

「あっ、そうだ……。飲み物はどうする?」

「オレ生中で」

「アタシも生中って言いたいところだけど」

「茉奈ちゃんまだでしょ」

「わかってるって、私達はドリンクバーでいいかな」

「あっ、お願いします」

「了解。じゃあ生中1つとドリンクバーで3つ、後カシオレお願いします」

「はい、承りました。ご注文の方繰り返させていただきます―――」

 注文の間違いがないかを確認した後一礼して去る店員。

「英章さん、生じゃないんですね」

 奏音はふと思って尋ねてみせる。

「あー、兄さん生無理みたいなんですよ。呑むの大抵可愛い感じのお酒なんですよ」

「えっ、そうなんですか?」

「あはは。完全に無理という訳じゃないんだけど、あまり好んで呑まないかなって。だからカシオレとかカクテルとか。焼酎とかはものによるけど」

「へー、そーなんだ。アタシ長いけど初めて知ったかも。雰囲気的には可愛いのは華央さんのが呑みそうだけどなー」

「ちょーと、茉奈ちゃん。オレ下げ多くない?」

「事実、じゃないかな?」

「そうだな」

「先輩まで!?」

 その大袈裟な反応がそう思われてるんじゃないかなという言葉は呑み込んで京と顔を合わせて笑った。


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