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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
ジェームス・マッキントッシューーー『人間の意思の力はその人が飲んだコーヒーの量に比例する』
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 ただでさえ学業にコーヒー店のアルバイトとており、さらには初めてとなるテストが間近に迫っている。正直時間に余裕があるという訳ではないのだが……。

「ごめんね、つきあわせちゃって」

「いえ、気にしないでください」

 両手を合わせて謝る茉奈に首を振る。いつもの店、クレフから離れ空気の澄んだ静かな丘に茉奈に呼ばれやってきたのだ。

「私も、ちょっとしたピクニック気分でましたし」

 隣にいる京も気にするなというように首を振る。

 今日は京、奏音は茉奈に頼まれ彼女のサークルであるブラインドサッカーの助っ人として呼ばれたのだ。実際に試合としてプレイするのではなく、交流を目的とした練習。奏音らはそれのお手伝いとして呼ばれたていた。

「それで、お手伝いって具体的に?」

「水出したりとかけが人出たときとかの補助だけお願い。初めてブラインドサッカーやるって子もいるから無理してけが人出る可能性もあるし」

「わかりました」

「はい。にしても、私始めてみますブラインドサッカー」

 京の呟きにうんうんと小さく頷く奏音。茉奈がそれをやっているということは言っていたが詳しく調べていなかったのでどのようなものか少し興味を持っていた。

「まあ、興味ある人少ないよねー。えっとね、るーるとしては普通のサッカーとよく似ているんだけどまず違う点一つ目が人数かな。5VS5で戦うんだよね。そして二つ目、ボールは転がると音が出ます。三つ目、余計な接触プレイを避けるためにボールを取りに行くときはボイって叫ぶの。スペイン語でいくって意味ね。それぐらいかなぁ。一応ガイドやコーラーっていいうボールの場所を教える人がいたりするのも違いと言ったら違いだけど」

「なるほど。あっ、じゃあ応援とかって」

「察しがいいね、奏音ちゃん。その通り声を出した応援はマナー違反。ゴルフと同じかな。だからプレイ以外のところでは声を出してもいいんだけどね」

「プレイヤーって全員アイマスクつけるんですよね?」

「うん。あっ、でもキーパーだけは晴眼者、もしくは弱視の人が担うんだけどね」

 と、講座を打ち切るようにパンパンと手を叩く。

「じゃあ、頑張ってきてくださいね」

「おうよ!なんてね」

 テヘヘと舌を出して茉奈は仲間の元へと走っていく。

「じゃあ私たちはベンチで座って待っとこうか」

「はい。色々用意もしておかないとですしね」

「用意?」

「あはは……見たらわかると思います」

 京は誤魔化すように笑うと暑い日差しをよけるように作られているベンチの方にかけていく。不思議に思いながら追いかけるがすぐにその正体がわかる。

「よいしょっと……。実はこれ奏音さんに」

「私に?」

 渡された袋を開ける。するとそこから豊かなコーヒーの匂いが。すでにコーヒー豆はひかれていて後はドリップして淹れるだけだ。

「あとこれがドリッパー、ペーパーフィルターとサーバー。それにポットです」

「な、なんでドリップ用品が一式」

「兄です。兄さんが奏音さんもいるってい聞いたらこれみんなで飲んでって」

「うわぁ……緊張する。というかお湯は」

「魔法瓶に」

 用意周到さに苦笑いをする。ここにきてまでコーヒーと付き合うことになるとは思っていなかったが……いいか、と、息をつく。

「じゃあ最初の休憩が30分後だからそれに合わせるようにつくろっか。人数が……10人だから27g二回に37g一回で十分かな」

 頭の中で計算しながら呟く。するとジトッとした目線をめくる京に気づく。

「どうしたの?」

「いや、なんだかだんだん兄さんに似てきたなっておもって」

「持ってきたの京ちゃんだよね!?」

「いや、そうなんですけどね」


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