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ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
天童英章――――『中にはミルクやシロップをたくさん使いたい人もいるだろう。そのお客さんにとって最高の状態のコーヒーを召し上がってもらいたい』
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3

 兄の手伝いをしている京は部活動を行っていない。そのためいつも早く教室を出て帰宅をするのだが、今日に限ればさらに早い時間で帰宅を行っていた。ようやく、兄が長い修行を終えて帰ってくる。その高揚感を隠しながら家に戻ってみれば。

「なんか、この光景にツッコミをいれた記憶が前にある!」

「早かったなー、京」

「……お帰りなさい」

「あの時と同じくコリドールをやっているのも驚きだけど、奏音さんにあった何かが今はゲームに奪われてる」

 あの時、というのはバリスタの試験のために勉強をしていたときのことであろう。しかし、今回は奏音がゲームにのめり込んでいる。というのも、今現在の奏音はかなり不利状況であるために真剣に考えているのであろう。こんなことに真剣になられてもというツッコミをいれたいところだが、そこも我慢をする。

「あれ?というか、この匂い……、もしかしてココア!?ちょっ、お兄ちゃん……じゃなくて、兄さんどういうこと?」

「新たにココアを付け加えようと想ってね、試飲を奏音ちゃんに」

「むー……、というか、なんだろう。奏音さんの無反応というか、ゲームに熱中ぷりに少し傷つきます」

「もう、別にお兄ちゃんでいいんじゃないかな」

「淡泊に言わなくていいですから!!」

「あー、やっぱりここから巻き返す手段が見えませんね。私の負けです」

「投了はやいね。やっぱりゲームが上手いと負けパターンも見えやすくなるのかな?」

「どう、なんでしょう。わかりません」

 京はただ黙って頭を抱えた。そしてわかりやすく肩を落としながら「着替えてくる」と言葉を残してリビングを去った。そのときになってようやく京に悪いことをしたかという思いがよぎったが、あまり深くは考えないことにした。

「なにげにですけど、匂いだけで京ちゃん、英章さんが作ったココアということを見破ってましたね」

「あー、言われたら確かにそうだね。市販のココアということも十分に考えられたかもしれないのに」

「それだけ、お兄ちゃんのココアを楽しみにしていたんですかね」

「状況から考えてこのココアが兄さんが作ったというのはわかります!!なんか、奏音さんがどんどん茉奈さんの悪影響を受けているような気がします!!」

「デティールの頃は副店長の古木さんの影響もあるかな」

「知りませんし!てか、なにげにラブレターの用意をしているし」

「京も混じる?」

「……混じります」

 様々な思いを胸に抱きながらなんとなく受け取る。そうして京は必ず二番手にココアを飲むのは自分なんだと謎の決意を固めていた。


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