表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ココアのない喫茶店  作者: 椿ツバサ
セーレン・キルケゴール———『とにかく、私はコーヒーを高く評価している』
10/105

今月からは毎週日曜日朝7時を更新予定としています。

「まずこのシャボン玉を作り少女の意識をそらせ泣き止ませます」

 英章は落ち着いた口調でシャボン玉をコンコンとノックする。まずは泣き止ませるのかと感じながらゲームの本質性を見極めようとする。というより泣き止ませた時点である程度クリアできそうなものだが。

「そしてこのバットで扉を壊して正面突破。追ってこれないようにさまざまなものを壊しながら進みます。以上」

「ええっ!?」

 奏音は驚きを隠さない。

 いい話っぽかったのにまさかの展開に驚く。いや、これ確かに解決はしているような気がするけどなにか納得いかない!

「ははっ、それじゃあ採決とってみようか。これが回避できたと思える人。手を上げてください」

 奏音の驚き方を見ながら華央は採決を取る。結果は。

 華央、茉奈、京の3票を獲得し回避認定。

「えっ?いいんですか?」

「あぁ。大切なのは他のプレイヤーに回避できたと思わせることだから。もっと言えば話が面白ければそれだけでOKなんだよね」

「そ、そうなんだ」

 思わず苦笑いをする。キャット&チョコレート。猫とチョコという単語からもっと可愛い甘いものを想像していたが、ビターな判断も必要なのか。

「よし、じゃあ時計回りとして……次はオレか。行くよ」

 そういってカードをオープンさせる。

 カードに書かれていたトラブルは『チェーンソーをもった男が君に襲い掛かってくる』。使用アイテムは1つだった。

「う、う~ん……。アイテム数が少ないのは助かったけど、どうしようかなぁ」

 かなり悩んでいるようだ。そこから推測されるにアイテムがあまり良くないのかもしれない。

 というよりアイテムって普通はプラスに働くものというイメージがあるが、このゲームはアイテムがマイナスに働くのかと驚かされる。こんなゲームも珍しい。

「えっと……、て、手鏡を用いて……用いて、抵抗する?以上です」

「…………」

 かなり苦しい様子で答える華央だが全員は黙ってしまう。それだけ?という形だ。

「いや、アイテムが悪かったんだって!これは仕方ないって!あー、もう採決!」

 慌てたように華央がとりそぐ。もちろん票は0。

「ぐぅ……これは辛いなぁ。か、奏音ちゃん。はい、次。」

「あ、はは……。わかりました」

 そういって奏音はトラブルカードをめくる。書かれていたのは。

「きょ、巨大な子どもが君を人形にして遊ぼうと手を伸ばす!?」

 しかもアイテムは3っつだ。せめて華央のような人的なものならまだしも霊的なものだから対処の仕方が見えづらい。どうしようか……。

「まず、この香水を全体に振りかけて甘ったるい匂いで充満させます。大きいということはそういったものにも大きく反応すると思いますから、それで動きを止めて……、その隙に次のアイテム、ガムをたくさん噛んで室内にばらまきます。そして歩きづらくしている隙に運動靴に履き替えて素早く逃げます」

 香水、ガム、運動靴のアイテムをオープンさせてみせる。

「おぉ……これは、難しいなぁ」

「うん。どちらにも転げれるよねぇ」

 華央と茉奈が困ったような顔をする。

「えー、でもきちんと回避できてるような気がしますけど?」

「僕も同意見だね。でも……」

「えっと、微妙という感じですか?」

「そうだねぇ。確かに奏音ちゃんの言うとおり全てうまくいけば回避できるけど、反対にいえば運動靴意外仮定でしかないんだよね。香水で鈍るというのも、ガムで足止めできるというのも」

「あと追加していうならガムを高速で噛まなきゃいけないからね」

 あぁ、確かにと思ってしまう。というよりガムを高速で噛むって難しそうだ。

「採決してみようか。じゃあ、これが回避できたと思う人。手を上げて」

 そうして手を挙げたのは京と英章。

「えっと、この場合は?」

「一応過半数には達しているからクリアだね」

「そうなんだ。よかった」

 ほっと息を吐く。ただのゲームだが妙にドキドキする。コーヒーで口を湿らせて落ち着かせる。というより本当に美味しい。

「次は私だね。えっと~」

 そうして続くキャット&チョコレート。

 やること自体は単純だがそれがゆえに想像力が試されるため面白い。そしてある程度の傾向が見え始める。

 英章はお題とアイテムによって柔軟性の高さでさまざまな苦難を乗り越えていく。それに対照的なのが華央でお題によって得意不得意が大きく分かれていた。京は見かけによらずバイオレンスな発言が多く、笑いをとるか引かせるかの二択。それと対照的なのが茉奈で平和的な答えが多かった。この二人の性格と答え方が真逆になってきているのが驚きだ。そして奏音はというと。

「無難に強いね」

 茉奈が感想を漏らす。

「それって、褒めてます?」

「たぶん?」

「えぇ……」

 なんという曖昧な答え。

「いや、でも奏音ちゃんが強かったのは確かだよ」

 茉奈のフォローをするかのように英章がすぐに優しく笑いかけながら言う。その言葉にドキッとしながら奏音は礼を告げる。

「ありがとうございます」

「ううん。さてと、そろそろお開きにしようか」

キャット&チョコレートの厳密なルールは異なることがあります。ご了承くださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ