設定集Ⅰ
このページでは第一章で登場した語句のうち、幾つかをとりあげて設定などの説明を行います。ネタバレになることははぶきますので、純粋に楽しんでいただければと思います。
【第一節】
◯支丞市
某県、中央部に位置する中規模の街。本文にあるように東に立住川が流れ、北には黒武山がある。主に街の西側の開発がすすみ、東側は田畑が多く自然も多いと、東西の差が激しい。街には学力の高い有名大学があり、学生も多い街である。歴史も古く、神秘的な伝説が数多く残される歴史の街でもある。
◯朱雀病院
支丞市西のメインストリート沿いにある大きな総合病院。大学病院に匹敵する規模を持ち、市民からの信頼が厚いだけでなく、市街からも沢山の人が頼って訪れる。
【第二節】
◯魔術と魔法、それらに関係することについて
魔術とは世界という回路に意図的に接続し、結果得られた情報を現実世界にエーテル体の力を用い具現する術である。ここでいう世界とはすなわちパトルオロビオス(アカシックレコード)と呼ばれる情報の集合体であり、我々の住む空間および、その空間に存在するすべてのもの、事象、概念の元となるものが情報と呼ぶ。ここ以降で世界という単語を使う場合、それはあくまで我々の住む空間を概念的に表す言葉とする。また語句の説明はその都度注訳をつける。
魔術を使う者、即ち魔術師は魔術回路(一般に回路と呼ばれる)と呼ばれるパトルオロビオスに接続する手段を会得している。それは人によって異なり、一般的なのは口語による呪文詠唱と筆記による描陣(注1)である。これを古式描陣回路といい、最も古くから存在する魔術回路であるとともに、最も複雑な設定が可能となる確実性の高いものである。ただし、呪文詠唱は他の魔術回路に比べると長めで描陣を伴うため時間がかかった。そこで生まれたのが新式と呼ばれる、詠唱文を短くし、描陣を最小限にとどめた新しいものである。また、これは進化し現在は簡易詠唱(注2)、エアペイント(注3)など様々な魔術回路が考案されている。魔術師はこのような魔術回路を用いてパトルオロビオスに接続し、任意の結果を得ることができる。それがすなわち魔術である。
魔術を使う際には一般に魔力と呼ばれるエーテル体をその必要エネルギーとして利用する。魔力には二種類あり、人間に宿る人為的魔力と世界を満たし大気のように流動している超自然的魔力が存在する。魔術によって必要な魔力は異なる。魔力とはもともとこの世界に存在したものではない。古来から多くの人間が神秘的な力として擬似認識し続けてきた結果、現実のほうが歪められた現象の例である(注4)。世界に存在するマナの量は常に一定で増えることも減ることもないが、オドは人間が生きている限りいくらでも生産可能であるかわりに、魔術に利用するとパトルオロビオスへ流れこんでしまい、消滅してしまう。
魔術師は世界中に存在するが、西洋の方に多いとされる。またヨーロッパには魔術研究機関である、通称「協会」が存在する。ここには数多くの魔術師が加入し、魔術の研究を進めると共に、協会自体が魔術師の統制を行なっている。公式には明かされていないが、魔術師養成学校なるものの存在もあるらしい。
今となってはすべてひとくくりに魔術、と呼ぶことが多いが実際国や宗教によって様々な名があった。例を挙げると、占星術、呪術、陰陽道なども魔術の一種である。
また、魔術の中でも特に、人間の扱える範囲を超えた魔術のことを魔法と呼ぶ。人間に扱える範囲を超えたとはいえ、使うのは基本的に人間である。ただし、扱うのには常人離れした才能が必要となる。こればかりは努力ではなんともならないとの結論が既にでている。魔法を扱えるものは世界でも数えるほどしかいない。魔法の仕組みはほぼ魔術と同じであるが、魔術よりもさらに複雑な接続手順を踏むことになる。それは人それぞれのものとなるので一概には言えない。ただし、普通の人間に用意された道でない場所を通っていると想像してもらえればそれが近い。魔術や魔法という言葉は日本における使い分けであるのは言うまでもないが、英語圏において魔術は「マジック」「ソーサリー」、魔法は「ミラック」「ノーウェイ」「ハイスペル」などと呼ばれている。魔法の英訳である「ミラック」はミラクルとマジックからの造語であり、最近の若い魔術師が好んで使う新しい表現である。また「ノーウェイ」と「ハイスペル」は昔からある呼び名であり、「エンプティスペル」という表現も隠語として使用される。しかしながら、「ハイスペル」は単に高等魔術(注5)という意味でも使われるため混同されがちである。
注1:魔法陣を描くこと。描く場所や道具は何でも構わない(回路によっては適切なものがある場合もある)。
注2:詠唱文の内、必要最低限の要素のみを詠唱する魔術のこと(例:一単語のみの詠唱)。詳しくは下のオマケにて。
注3:呪文詠唱をせず、また魔法陣を描かずに頭の中で回路を組み上げること。
注4:非現実性世界歪曲。実際に存在しないものでも、擬似認識する人間が一定量を超えると現実のほうが歪められること。
注5:魔術の中でもより高度な技術を必要とする魔術のこと。
◯本文下の方、銀埜の発言「『紫』、だな。紫系統の回路を使う魔術だと思う」――魔術分類
魔術を分類する方法はたくさん存在する。銀埜の発言した「紫」というのは魔術の性質を六つの色に表現したものである。ちなみに紫は玄恵も言っているように人間の精神に関わるものが多い。
【第三節】
◯感知
魔力を普段使う魔術師なら誰でも自然と身につく能力で、魔力の流れを感覚的に把握する能力である。一般人でもコツさえつかめれば習得が可能。だれでも使えるとはいえ、力の差はある。
◯空間断絶
魔法に近い魔術。世界存在体と世界平行体を切り離す。世界存在体と世界平行体とは、簡単に言えば精神と身体。ようは人などを幽体離脱させる術である。
【第四節】
◯幻想投影
いわゆる幻術。実体のあるものを作り出すものと、実体のない映像を映しだすものとに別れる。いずれも映しだした幻影のことを幻想体や幻姿体――それぞれアポルトと言う名で呼ばれる――と呼ぶ。アポルトとは何もない状態から物体が現われる現象のことを示す言葉である。
◯魔具
様々な物に魔術回路を付与したものをいう。例えば剣に炎の魔術回路を付与して剣を振ると炎が出るといった具合である。魔具の魔術回路には、オドではなくマナを使用することが多い。これは魔具の対象となる物質に人間が直接的接続を行えないからである。世界を通して土地の情報へ接続し、土地を介して物質に接続をおこなう。一度魔術回路を付加してしまえば、使う力はオドでも構わない。オドを使わず、予め魔術回路にマナを内包しておく、使いきり方式もある。この方法であれば、魔術師でなくても魔具を使用することが可能で、魔術師であればマナを補填し繰り返し利用することも可能である。
◯魔術紋
魔術師が魔術回路に付加する飾りのようなもの。口語詠唱文であれば韻を踏んだり、特定の語句を挿入する。魔法陣であれば、特定の図形や語句を描いたりと個人によって方法は様々である。
【第五節】
◯魔法陣(英:Magic Circuit)
魔術を使う際に回路として用いられる。魔法陣の名は通称で正確には魔術陣である。魔術の三大要素(*注6)の一つであり、幾何学模様や文字の配置を指す。特に円を集陣(*注7)の最外要素(*注8)とする場合、魔法円(英:Magic Circle)と呼ばれる。ペンタグラムなど、ひとつの要素のみで構成されるものを厳密には図形回路と呼ぶ。記述式詠唱文(*注9)のない魔法陣も図形回路に含まれる。ヒログリフに代表される象形文字も図形回路の一つである。
注6:魔術の三大要素とは魔術の発動に必要な要素のこと。すなわち、魔力、魔術陣、詠唱。詠唱や魔術陣は省かれることもある。
注7:幾何学模様などをまとめる一番外の図形。
注8:魔法陣において図形の一番外側に位置するもののこと。
注9:魔法陣に描かれる文章。単語であったり、文章であったりする。
◯察知妨害
文字通り。感知を邪魔する術。大気中のマナを乱雑に動かし、小さな乱れを隠す。
◯クリック? クラック!
国は忘れましたが、どこかの国での物語を語る前の合言葉みたいなもので、「お話を聞きたいですか?」「聞きたい!」みたいな意味。
◯結界
本来は仏教用語で聖なる領域と俗なる領域を隔てること。魔術世界においては自分を防御したりする壁や、一定の範囲内の要素を固定する術のことも結界と呼ぶ。仏教系統の魔術や日本魔術においては本来の意味で使われることもあるが、海外ではそれはない。詳しくは次章にて。
◯置換回路
魔法陣に近いもので擬似魔術回路、または擬似魔法陣とも呼ばれる。差mざまなものを一定の法則に従って配置することで、魔法陣に見立てて魔術を発動する。風水術でよく用いられる。
◯統治家
詳しくは次章にて。日本の魔術師を統括する幾つかの家。
【第六節】
◯星海結界
スピカの発動した魔法結界。一定の範囲に強力な幻想投影タイプの魔術を使い星空を展開する魔法。属性強化結界というタイプで、攻撃することも防御することもできないが、特定の魔法の強化をすることができる。スピカは星弾と過去の再体験の強化に使用した。結界についての詳しい説明は次章にて。
◯天使の血族
魔力保有量が異常に多い人間のことを言う。おもに親子で遺伝する。しばしば協会指定の聖人とされることがある。ただ協会の聖人指定には様々な条件があるため、そう簡単に聖人になることは出来ない。
以上。
 




