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8話*宣言*

店の奥にある、店長の家は広く洒落たいい家だった。

センスのいい家具や、綺麗な庭に小さな噴水があった。


「じゃあカノちゃんのお部屋はここね」


案内された部屋は、白地に可愛らしいピンクの花柄の壁紙に

涼しげな水色の水玉模様の絨毯が敷かれていた。

そこに、テレビや机、ドレッサーにベッドなど

一通りの可愛らしい家具や雑貨が揃っていた。

これがもし店長の趣味だったら少しゾッとする。


「ここって妹さんの部屋ですか……?」


「いや、違うよ?俺もここが何の部屋か分からないけど、

 普段は客間として使ってるんだ~」


「ここ一番眺めのいい部屋なんだよねぇ」と言いながら

店長は白枠の出窓を開けた。

涼しく爽やかなそよ風が、私の髪を揺らす。


「何か必要なものがあれば言ってね、買い物に連れてってあげるから。

 俺1階のリビングにいるから何かあったら呼んで」


そう言うと店長はドアを閉めて、階段を下りていく。

取り敢えず、私はベッドの上に座り、そのままゴロリと寝そべった。

何かとても頭の中がグルグルしている。


何で私、こんなところでこんなことになっているんだっけ?

確か、私は遥と屋上で話していて、フェンスが外れて屋上から

転落して、気がついたら棺桶の中にいて、シスターと会って、

バイトすることになって、この店に来て、店長に会って、

そして住み込みで働くことになって…………。


そもそも何で屋上に行ったんだっけ……?

あぁ、そうか。進路決めてから帰れって言われたんだっけか。

そうだ、私就職か進学のどちらかを選ばなくちゃいけないんだ。

……もし、このまま帰れなくて、この世界で暮らすとしたら、

私は一体どうするんだろう?

文化も歴史も風習もよくわからない、この世界で暮らすとしたら。


私は一つの決断し、部屋を出て階段を下り、リビングへ向かった。


リビングに行くと、テレビを見ながらお菓子を食べている

店長が居た。店番は大丈夫なんですか店長さん。


「店長ッ!!」


私が呼びかけると、店長は驚いた表情で私を見た。


「どうしたのカノちゃん?何かお困り事?」


「いえ店長、あのですね。私この国で就活始めようと思います!!」


私は自信満々の表情で店長にそう告げると、

店長は驚きと悲しみの混じった顔をした。


「なっなんで!?ずっとウチで永久就職して働けばいいじゃん!?

 就活なんて大変だよ!?やめときなって!!」


「いえ、いつまでもアルバイトじゃいけないと思うんです。」


「でもカノちゃん、この国の就職って結構大変だよ?」


店長曰く、この国では就職方法が3種類あり

1つ目は恋人や家族や友人などのつてで就職させてもらう方法。

2つ目は基礎学習修了証というものを貰う試験を受けること。

    しかし、これだけでは選択できる職種の幅が狭いので、

    最低でも3年間か4年間スクールに言ってさらに学問を学び、

    終了後にさらに勉強していい職につくか、

    ハローワークのような場所に行き就職場所を見つける。

    自分で事業をする場合も、スクールに通わねばならない。

3つ目は家がお店をやっている場合に限り、その店を継ぐ。


なるほど、つまり私が就職するには1か2の方法しかないって訳か。


「バイトでも普通に働けるけど、今ちょっと就職は大変だよ?

 最近は同盟国の一つが色々あって、この国も大変みたいだし」


「うーん……まぁぼちぼち頑張って、就職先を見つけます!」


「えぇ……そんなぁ……」


捨てられた子犬のようにしゅんっと落ち込む店長。

何か悪いことした感じがするなぁ……。

でも、せっかくアルバイトとして雇ってくれているのに、

いきなり「就活します!!」なんて言いだしたら、失礼か。

せっかく内定もらったのに「別の会社の試験も受けます!!」って

その会社に言っているようなものと同じだしなぁ……。


「でもほら就職先は簡単に見つかるわけじゃないですし、

 この店でも頑張って働きますから安心してください!!」


その言葉を聞いて店長の表情はパァッと明るくなる。


「そっかぁ!!じゃあカノちゃんの就職口が永遠に見つかりませんようにって

 神様に願いに行かなくちゃいけないね~」


「それは絶対にやめてください」


「じゃあじゃあ、俺のお嫁さんに永久就職ってのは?

 俺、カノちゃんのこと絶対に幸せにするよ?」


「ブラック企業は勘弁してください」


出会って1時間もしないうちに、まさかのプロポーズを受けるが、

軽く流すことに成功した。

とりあえずこれからは、このアルバイトを通じてこの世界のことを学ぼう!

そして、最終的には絶対に就職してやるんだから!!!!

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