5話*コンディトラィの乙女*
「これは、この国に古くから伝わっている伝説……と言うか
童話っぽい感じのお話なんですけどね。
この国に、とっても暴君な王様が居たらしいの。
その当時、この国もあまり豊かな方じゃなかったから
国民たちは、生きるために毎日ひたすら働いていたの。
でも王様はそんな事気にせずに、毎日遊んで暮らしていたの。
そんな中で、とある喫茶店に可愛い女の子が働いていたの
とても優しくて、勇気のある女の子で
喧嘩があれば、すぐ止めに入るし、お腹がすいて困っている子が居たら
お店のあまり物のパンを分け与えたりしていたらしいの。
彼女は明るい子で、こんな荒んだ世の中でも、いつも笑顔を絶やさずに
周りを元気付けながら毎日働いていたのよ。
だけど、王が増税したせいでもう国中は大混乱。
食料を巡って争いや強盗、殺人に放火まで行われていたの。
彼女は優しかった国の人々が荒れて変わり果てて行く姿を
見ているのがもう耐えられなくなってしまったわ。
遂に国民の怒りは王様の元へと向かっていった。
彼女が国民を率いて王宮に乗り込んだの。
そして彼女は喫茶店の厨房から持ち出した包丁で
王様の胸を一刺しした。
王様が死んで、新しい統治者が出てきて国の景気は良くなり
人々は幸せに暮らし始めたの。
彼女は英雄として称えられたわ。
でもね……。
数年後、彼女は王様を殺した罪で火炙りにされてしまうの。
国民たちは皆が皆、彼女を助けようと、やめさせようとしたわ
でも国民たちの抵抗も虚しく、彼女の体を炎が包んだの。
彼女はいなくなっても、彼女はコンディトラィの乙女と呼ばれ
今でも世界で童話や伝説として語り継がれているのよ。」
彼女の話を聞き終えると、何とも言えぬ気分になった。
異世界版ジャンヌ・ダルクっぽいお話だなぁ……。
「一説によると、彼女はある日異世界からやって来て
教会の棺桶の中から出てきたって噂もあるの。
だからウチの教会では、彼女がいつでも現れてもいいように
ああやって棺桶を置いておいたの。」
「そしたら私が出てきた……っと言う事ですか……?」
シスターは私の問いかけに、笑顔でコクリと頷いた。
「しかも貴方はコンディトラィの乙女とそっくりな容姿なんです!!
甘いミルクティー色の髪にスカイブルーの瞳、セミロングな髪型!!」
「いやっ、コレはたまたまの偶然ですから!!」
正直、私はこの容姿が好きではない。
私の父親が日本人とフランス人のハーフで
父親は目の色だけ祖父と同じ水色だが、髪は祖母に似て黒髪だ。
もちろん、私のお母さんは日本人なので
私も遺伝子的に黒髪で目は父か母のどちらかに似る予定であった。
だが、神様の考えている事は私には理解不能で
私は先祖返りで祖父の一族の5代目くらいの女当主に
似てしまったらしい。
そして私はどうやらこの容姿のせいで勘違いされているみたいだ。
コンディトラィの乙女?私が?
なんにもできないどうしようもないクズ人間の私が?
伝説にもなっているコンディトラィの乙女?
あ り え な い よ
ありえない、なんだか物凄い誤解を生んでいる!!
ああああ!!!だからこの容姿、昔から大っ嫌いなんだよ!!!
昔迷子になって助けてもらおうと思って
近くの人服をクイクイ引っ張ったら
「うっ、うわぁ!?外国人!?無理無理俺英語できない!!!」
とか行って走って逃げられた事あったし
(まぁ結局自力で親を見つけたのだが)
英語のテストで点が悪いと
「鹿江って、容姿だけなら誰よりも英語できそうだね」とか
訳のわからない誤解を生んじゃうし!!!
しかも、現在に至っては
伝説の乙女と間違えられちゃうし!!!
もうなんなのよ訳わからないよ!!!
「だっ、大丈夫ですか!?あまり一人で深く
考え込まないようにしてください!!!」
「あっ、ハイ分かりました……。」
もう頭の中でいろいろ考えすぎたせいで
正直、どうでも良くなってきてしまった。
はぁ……何かもう、すぐに家に帰りたい。