2話*転落*
屋上へ向かい、扉を開けると涼しい風が吹き抜ける。
意外と教室より、外の方が涼しいみたいだ。
しかも人は私たち以外に誰もいない貸切状態だった。やったね!
私と遥は近くのフェンスへと向かい寄りかかり座った。
「ねぇ鹿江、鹿江はさ、何かなりたい職業とか無いの?」
「うーん……無いかなぁ……?」
「例えば、パティシエとか保育士とかさ」
「んー……やっぱりないかな?」
遥の質問に、それなりに真剣に考えてみる。
しかし、夢も希望も特にない私の答えは全部同じだった。
昔はパイロットや車掌など夢があったはずなのに、
いつからこんな荒んだ人間に育ったのか……。
「……あっ!!一個だけやりたいことあったかも」
「えっ!?なになに?気になる気になる!!」
考えていると、昔の事を思い出した。
昔すごく憧れていたことで、今もできたら私にとっては、
幸せなことだ。
「私、水族館で働いてペンギンさんを連れて歩いてみたい!!」
私は自信満々に答えながら遥の方を見ると
遥は口元を手で抑えながら、クスクスと笑っていた。
「ちょっ!?気になるって言ったから言ったのに笑わないでよ!!」
「いやぁ、ごめんごめん。何か鹿江っぽいなぁ~って思ってさぁ」
再び思い出し笑いで「ペンギンさんプフフッ」と遥が笑った。
なんだよ、言った私が物凄く恥ずかしいじゃないか。
「でも飼育員になるなら、専門学校とか大学に進学じゃない?」
「……私の学力で行けるところあると思う?」
遥は「ちょっと、待って」と言い、少し悩んだ。
知ってる。自分が救いのない馬鹿なのは知っているよ。
「がっ、頑張ればあるんじゃない?」
「もういいよ!!分かってるよ!!自分が馬鹿なことくらい!!
うわぁぁぁぁぁんッ!!!遥ぁ!!どうしようぅぅぅ!!!」
まるで子供の様に、遥かに抱きつき、声を上げた。
もう、自分の馬鹿さにつくづく嫌気が差してくるわ。
早く真っ当な人間になりたい。
「落ち着きなよ鹿江!!ゆっくり考えよう?」
遥かに背中をさすられながら、慰められる。
そうだ、落ち着け私。いざとなれば飛び降りれるぞ。
「あーあ……私が超有名人で、企業から沢山のスカウト来ないかな~」
「コラコラッ、現実逃避はやめなさい」
お互い顔を見合わせてフフフッと笑った。
やっぱり遥と居ると楽しいなぁ……。
私は立ち上がり、再びフェンスに寄りかかった。
その瞬間、ガシャンッと嫌な鉄の音が屋上中に響き渡る。
体が自然と重力に従って、下にゆっくりと落ちていく
遥が目を開いて、とても驚いていた、そして手を差し出した。
その姿が少しずつ、吃驚するくらいゆっくりと遠ざかっていく
ついに、私は遥を見上げる形になていた。
私、もしかして落ちてるの……?
私はそこでフッと気を失った。