Trick or Treat
とっても下らないです。
十月三十一日。今日も私はコンビニのアルバイトに精を出している。
「いらっしゃいま……せ……」
すると、ドクロのお面に黒フード黒外套を着込んだ奴が入ってきた。
どこからどう見ても不審者。私はどうするか迷っていると、そいつがレジに近づいてくる。
まあ、一応、お客様(?)なので、ちゃんと接客しないと。営業スマイル営業スマイル……。
とうとう不審者がレジの前にやって来た。
「いらっしゃいませ」
今度はスムーズに言う。笑顔も引き攣っていないはず。
だけど、そいつは懐に手を忍ばせ、そこから見るからに鋭利なナイフを取り出した。
上手く動かない口に引き攣る私の顔。こんな時に限って、今のシフトは私一人。一気に恐怖が湧き上がる。だが、次の瞬間に出た感情は困惑だった。
「Trick or Treat」
不審者の口から出てきたのは男性の声。私は最初、彼の言葉を理解することが出来なかった。
「Trick or Treat!!」
今度はそのナイフをシャツの胸元部分に引っ掛け来る。って、イタズラってそういう意味じゃないでしょっ!?
「えっと……」
困惑する私の視界に入ったのはレジカウンターに置かれたチロ○チョコ。
「はい、どうぞ……」
それを一つ手に取り、目の前の男に差し出した。
黙って私の差し出したチロ○チョコを男は見つめる。あ、あれ?やっぱりマズかった……?
だが、私の思いに反して、彼はチ○ルチョコを取ると、店から出て行った。
えっと……うん、とりあえず110番かな。……良いんだよね?
その後、逮捕された男はこう語った。
『最近は日本でもハロウィンが普及してきたから、大丈夫だと思った』
なんとも迷惑な話である。