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ダリア

 ぽかぽかと暖かい陽がさしていました。

 室内は穏やかなオレンジに染まり、使い込まれた調度品がささやかにその存在を主張しています。きっとこの部屋の主はセンスがいいのでしょう。入ったものにそう感じさせる控えめなデザインをしていたのです。

 時が止まったような部屋の中では、ふかふかとしたソファの上に寝ている人がいました。10歳かそこらという子どもです。うにゃうにゃと、かわいらしい寝息をたててまどろんでいます。夕日を体いっぱいに浴びて幸せそうにしている姿は、誰が見ても愛らしいと言うことでしょう。

 夕日が少しずつ傾いていきます。

 部屋にある音はすぅ、すぅという子どもの寝息だけ。家具たちは物音一つ立てることなく、優しげに子どもを包み込んでいました。


 変わることのない時間がしばらく続いた後、きぃきぃと音を立てて部屋の扉が開きます。

 そこに立っていたのはおじいさんでした。優しげな顔に、白く染まりきった髪の毛をのせています。

 おじいさんはすぐにソファで寝ている子どもに気がつきました。もしかしたら、探していたのかもしれません。

「おやおや、こんなところで寝ていたのですか」

 おじいさんはかぜをひいてしまいますよ、と言って子どもに毛布をかけてやりました。その手つきは子どもを起こさないようにと言う配慮が感じられる優しい手つきです。

 それでもタイミングか運が悪かったのかそれとも偶然か、もぞもぞと毛布が動きます。どうやら、子どもも目が覚めてしまったようです。

「ああ、起こしてしまったか。すまんの」

「おじいちゃん……? あ、毛布ありがとう……。でももう起きるね」

 子どもは中性的な外見をしていましたが、声を聞く限り女の子のようです。栗色の髪を適当に伸ばしたような髪に、Tシャツと半ズボン。暖かい陽気だからこれで大丈夫、と選ばれたその服からのぞいているのはすらりとして健康そうな手足です。

「夕食までは少し時間があるから、ダリアは本でも読んでいなさい」



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