12月から
12/1
別に彼女に好意があったわけじゃなかった。今思い出せばきっかけなんて隣の席になっただけだったし、会話の中心はもっぱらアニメやらマンガやらゲームのことばかりで、いわゆる色っぽい話なんてまったくなかったのを覚えている。
高校時代の親友陽高はそんな俺のことをチキンと呼んだが残念なことに三年間想い人に告白できなかった彼の方がずっとチキンであることは間違いない。結局のところ三次元にあまり興味がなかったのだろうと今考えればわかる。
ところで俺がなんでこんな話をしているかというと、つまるところ右側に寝転がっている人間が問題なのだ。透き通るようにきめ細かい首筋まで伸びた金髪に、すらりとした肢体。寝息をたてる幼い顔立ちは、もこもこと着こんだパジャマと相まってあどけない印象を与えてくる。
12/2
彼女との朝は退屈しない。もともと起きるのは遅いのでゆとりがあるというのもあるのだろうが、ひたすらネタトークに興じたり、かと思えば一切会話せずに双方ノートパソコンに向かい合っていたりする。日によっては財布も持たずにぶらぶらと三時間ほど散歩していたこともある。ちなみに行き先は例によってTSUTAYAだった。




