アトランダム・キューブ
努力より遥かに巨大で才能よりずっと重いもの。
大事な時に役に立たないもの。
それを司る一天地六。人には不可侵の領域。
この一投は絶対的運命を義務付ける。
何物をも凌駕する可能性、逆もまた然りの大博打。
その立方体から目を逸らすな。逸らした時点で敗北なんだ。
そのメから目を逸らすな。逸らした時点で言い訳にするんだ。
紅い一つメに怯えながら血眼で投げていた。
あの領域に手を突っ込んで手繰り寄せたサイコロ。投げてみた君。
何処かの天才が言った。
『99%の努力と1%の才能』と。現実は違うだろう。
「99の才能と偶然、1の努力で成り立つのが世界」
・・・・・・そんな熱論を展開したところで、誰だって解ってる。
元々100も可能性は持ってない。
人にとっては巨大な「1」を活かし切れていないだけの話。可能性の何割かを占める程に大きな「1」。
君はなるべく多くのメを望んでいた。誰だってそう望む。
しかし君は事実を知ってしまう恐怖に負けて横を向く。
君が投げたサイコロなのに、いつの間にか蔑ろじゃないか。
結果まで責任持てよ。
『賽は投げられた』、君の血が通うこの手で。
君は恐る恐る目を開けた。決して芳しいとは言えないメの数。
さあ、どうする?
これから起きる「1」の努力不足にこじつけるつもり?
そうして逃げるのか?
・・・・・・現実は違うだろう。
君はサイコロを投げ捨てる。
何度投げたって結果は同じかもしれない。
どの面も見てしまったメの数と同じ数かもしれない。
もう知る事はない事。
君には関係無くなった事。
サイコロにはラッキー7もゼロも無い。
「1」を尽くす他、人は何も出来ないのだから。
テーマは「運」。運は人に変えられない。だから自分に出来る極僅かな努力を惜しまないように・・・・・・というメッセージ。
タイトルの訳は「無作為な立方体」。短編集にも載せてある作品です。