エピローグ:一年後の二人
物語から、一年後。
企画開発部第一チームでは、結城陽向がチームの中心メンバーとして、目覚ましい活躍を見せていた。彼の誠実な人柄と的確な仕事ぶりは、社内外から高い評価を得ている。そして、彼の隣には、リーダーとして、さらに深みと懐の広さを増した橘凛の姿があった。彼女は「氷の女帝」と呼ばれた頃の鋭さを保ちつつも、部下を信じ、育てる優しさを備え、今では誰もが憧れる理想の上司として尊敬されていた。
二人の交際は、もちろん順調そのものだ。周囲にはまだ秘密にしているが、数ヶ月前から、陽向の部屋で半同棲のような生活を送っている。
ある金曜日の夜。二人はソファでくつろぎながら、ワインを飲んでいた。陽向の肩に、凛がこてんと頭を預けている。
「ねぇ、陽向」
「んー?」
「たまに、昔のSNSのログ、見返しちゃうのよね」
「え、やめてくださいよ!俺、RinRinさんが凛さんだって知らずに、すごい偉そうなアドバイスしてますよね。恥ずかしくて死にそう…」
陽向が本気で恥ずかしがっているのを見て、凛はくすくすと笑った。
「ふふ、でも、あのアドバイスがあったから、今の私たちがいるのよ」
凛はそう言って、スマートフォンで懐かしいチャット画面を開いた。
『一度、小さなことでもいいから褒めてあげてみては?』
『RinRinさんが頑張っている姿を、きっと彼は一番近くで見ていますよ』
一つ一つの言葉が、今となっては愛おしい思い出だ。
「本当に、バカみたいだったわよね、私たち」
「でも、楽しかったですよね。RinRinさんとHALの関係も」
「ええ。私の、たった一人の騎士様だったわ」
凛が甘えるように言うと、陽向は愛しさが込み上げてくるのを抑えきれなくなった。彼は、凛の左手を取り、その薬指に、そっと口づけを落とした。
「……これからも、ずっと俺が凛さんの逃げ場所です。どんな時も、絶対にあなたを守ります」
真剣な瞳で囁く陽向に、凛は最高の笑顔で頷いた。
「知ってるわ」
二人の唇が、ゆっくりと重なる。
氷の女帝は、彼女だけの騎士を見つけ、永遠の愛を手に入れた。SNSから始まった、この奇跡のような恋。二人の新しい日常は、これからも甘く、幸せな物語を紡いでいくだろう。




