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氷の女帝と恐れられる私、SNSで愚痴っていた相手は一番仕事ができないポンコツ後輩でした。正体を知らずに攻略法まで教えてしまい、もう限界です!  作者: 水凪しおん


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番外編1:『始まりの日、彼の視点から』

 結城陽向にとって、社会人としての第一歩は、衝撃的な出会いから始まった。入社初日、配属された企画開発部第一チームで彼を待っていたのは、息をのむほど美しい女性だった。

 それが、橘凛。

 艶やかな黒髪、涼やかな目元、寸分の隙もなく着こなしたスーツ。まるでファッション雑誌から抜け出してきたような完璧な容姿と、周囲を圧倒する厳しいオーラ。陽向は、一目見たその瞬間から、彼女に心を奪われてしまった。

「今日から配属になりました、結城陽向です!よろしくお願いします!」

 元気よく挨拶した陽向に、彼女は冷ややかな一瞥をくれただけだった。

「あなたの教育係は私。足を引っ張らないでちょうだい」

 その氷のような言葉に、陽向は震え上がると同時に、ますます彼女から目が離せなくなった。この人のようになりたい。この人に、認められたい。その一心で、陽向の社会人生活はスタートした。

 しかし、想いとは裏腹に、現実は厳しい。慣れない仕事、求められる高いレベル。焦れば焦るほど、空回りしてミスを連発した。凛からは「何度言ったら分かるの」「仕事が遅い」と叱責される毎日。憧れの人は、どんどん遠い存在になっていくようで、陽向は落ち込むばかりだった。


 そんなある日、陽向は友人に勧められて、とあるSNSを始めた。特に目的はなかったが、そこで偶然、一人の女性「RinRin」とマッチングした。

『もう仕事いやだー!』

 彼女の最初のメッセージは、そんな愚痴だった。プロフィールを見ると、年上のキャリアウーマンらしい。陽向は、彼女の抱える孤独やストレスに、なぜか強く共感した。もしかしたら、憧れの橘リーダーも、あの完璧な姿の裏で、こんな風に苦しんでいるのかもしれない。そんなことを思った。

 それから、RinRinの愚痴を聞き、彼女を励ますことが陽向の日課になった。彼女の話を聞いていると、まるで凛を支えているような、不思議な気持ちになれた。彼女が自分の言葉で元気を取り戻してくれるのが、何より嬉しかった。

『HALの言う通りに後輩を褒めてみたら、すごく嬉しそうな顔してた』

 そんな報告を受けた時は、自分のことのように心が温かくなった。

 まさか、その「RinRin」が凛本人で、その「後輩」が自分自身だとは夢にも思わずに。

 今思えば、全ての始まりはあの日、彼女に一目惚れした瞬間だったのだ。そして、偶然始めたSNSが、遠い存在だった憧れの人と、自分の心を繋ぐ赤い糸になってくれた。陽向は、恋人になった凛の寝顔を見ながら、この奇跡のような巡り合わせに、そっと感謝した。

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