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氷の女帝と恐れられる私、SNSで愚痴っていた相手は一番仕事ができないポンコツ後輩でした。正体を知らずに攻略法まで教えてしまい、もう限界です!  作者: 水凪しおん


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第16章:私たちの新しい日常

 結城陽向と橘凛が恋人同士になってから、世界は色鮮やかに変わって見えた。

 社内では、もちろんまだ秘密の関係。いきなり「氷の女帝」に彼氏ができたと知れ渡れば、オフィスが大騒ぎになるのは目に見えている。だから、二人は慎重に、誰にもバレないように振る舞った。

 しかし、隠していても、滲み出てしまうものはある。

 凛の表情は、以前に比べて格段に柔らかくなった。部下の小さな成功を「よくやったわね」と素直に褒めるようになり、時折見せる穏やかな微笑みに、チームの男性社員が密かに色めき立つほどだった。彼女の変化は、チーム全体の雰囲気を驚くほど良くした。

 陽向もまた、大きく変わった。凛という絶対的な味方を得た彼は、自信に満ち溢れ、仕事でも目覚ましい成長を遂げていた。彼の的確なフォローと人心掌握術は、今や第一チームに不可欠なものとなり、誰も彼を「ポンコツ」などと呼ぶ者はいなくなっていた。


 二人の間には、ささやかな秘密の楽しみが増えた。

 誰もいないエレベーターで二人きりになった時、どちらからともなくそっと指を絡ませ、こっそりと手をつなぐ。ドアが開く直前に、慌てて手を離すスリルさえも楽しかった。

 給湯室で偶然を装って会い、他の人には聞こえないような小さな声で「今日のネクタイ、似合ってる」「そのリップの色、綺麗だね」と囁き合う。

 そして何より、夜、家に帰ってから電話で話す時間が、二人にとって最高の幸せだった。SNSの短いテキストではなく、直接、相手の声が聞ける。他愛もない今日一日の出来事を報告し合い、くだらないことで笑い合う。

「今日の会議の凛さん、すっごく格好良かったです」

「あなたこそ、あのクライアント、完全に手懐けてたじゃない」

「でも、凛さんに褒められるのが一番嬉しいです」

「……ばか」

 電話越しに伝わる、凛の照れた声。陽向は、その声を聞くだけで、一日の疲れが吹き飛んでいくのを感じた。


 氷の女帝は、もういない。いや、正確には、仕事の場では相変わらず鋭く、頼れるリーダーであり続けている。しかし、愛する人の前でだけ、彼女はただの恋する可愛い女性になるのだ。そのギャップを知っているのは、世界で陽向ただ一人。それが、彼の何よりの誇りだった。

 チャットルームの「RinRin」と「HAL」は、もういない。けれど、橘凛と結城陽向の新しい日常は、あの頃よりもずっと温かくて、甘くて、幸せなものに満ち溢れていた。

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