表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の女帝と恐れられる私、SNSで愚痴っていた相手は一番仕事ができないポンコツ後輩でした。正体を知らずに攻略法まで教えてしまい、もう限界です!  作者: 水凪しおん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/20

第13章:沈黙のチャットルーム

 あの日を境に、凛と陽向の間に、見えない壁ができてしまった。

 凛は、真実を知った衝撃と羞恥心から、意識的に陽向を避けるようになった。業務上の必要最低限の会話以外はせず、目を合わせることすらない。彼女の纏う空気は、以前の「氷の女帝」時代よりもさらに冷たく、鋭利なものになっていた。

 一方の陽向も、RinRinからの返信が途絶え、凛の態度が急変したことで、全てを察していた。

(……バレたんだ)

 自分の不用意な一言で、彼女を深く傷つけてしまった。彼女の信頼を裏切ってしまった。その罪悪感に苛まれ、陽向もまた、どう接していいか分からず、ただ黙って彼女の冷たい態度を受け入れるしかなかった。

 オフィスには、息が詰まるような気まずい空気が流れる。チームのメンバーたちも、リーダーと若手エース(プレゼンの一件以来、陽向の評価はうなぎ登りだった)の不穏な空気を敏感に察し、腫れ物に触るように気を遣っていた。チームの雰囲気は、明らかに最悪だった。


 そして、二人の唯一の繋がりだったオンラインのチャットルームは、あの日以来、完全に沈黙を守っていた。

 夜、一人きりの部屋で、凛は何度もHALとのチャット履歴を読み返した。彼との他愛ない会話、優しい励ましの言葉。その一つ一つが、今は胸に痛い。もう、彼に愚痴を聞いてもらうことはできない。弱音を吐く場所を失ってしまった寂しさと、彼との繋がりが絶たれてしまった喪失感が、ずしりと心にのしかかる。

 陽向もまた、同じだった。毎晩、RinRinからのメッセージが来ないか、アプリを何度も確認してしまう。彼女を支えることが、自分の喜びだった。彼女の「ありがとう」という言葉が、日々の原動力だった。その全てを失ってしまった今、彼の心にはぽっかりと大きな穴が空いていた。


 失って初めて、その存在がどれだけ自分にとって大きかったかを、二人は痛感していた。

 オフィスでは物理的にすぐ近くにいるのに、心はかつてないほど遠い。

 オンラインではいつでも繋がれたはずなのに、今は完全に断絶している。

 すれ違い、誤解し、そしてようやくお互いの本当の姿を知った二人。しかし、その真実は、彼らの間に深い溝を作ってしまった。このまま、二人の関係は終わってしまうのか。静寂だけが支配するチャットルームのように、二人の時間も止まってしまったかのようだった。この苦しい沈黙は、クライマックスに向けた最後の「溜め」。お互いの大切さを、骨身に染みて再認識するための、静かで残酷な時間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ