1-3
「占い師…?」
「そう、占い。君ぐらいの歳の子は結構興味あったりするんじゃない?恋愛のこととか、運勢とか、進路がうまくいくか、とか。美月ちゃんも興味あるかなと思って声かけてみたの」
どう?安くしとくよ。と人懐っこそうな笑顔。
なんだか急に気が抜けて感じがして、美月は正座していた足を少し崩した。
そういえば、座布団に足がくっつく感じがいつの間にかなくなっている。
「い、いえ、大丈夫です、ありがとうございます。わ、私、これでお暇させてもらい…」
「付きまとう視線」
「え…?」
立ち上がりかけた美月は思わず動きを止める。
「ちょっと興味出て来た?」
その言葉に答えるかわりに美月はおずおずと座布団に座り直す。
「君は最近、いつも何かの視線を感じてる。まるで監視するみたいにずっとつけて来てる。そうでしょ?」
「な、なんでそれを…」
「言ってるでしょ、占い師だって」
ちょっと自慢げに口角を上げると、手を出してみて、と促した。
「手相占い…ですか?」
「ううん、こうやって"気"を読むの」
恐る恐る手を差し出した美月に、晴香は自らの手を重ねる。
気のせいか、重ねられた手がじんわりと暖かい。
「林美月、16歳、A型、山羊座」
驚きに目を見開きながら、こくりと頷く。
「で、処女」
これにはノーコメント。
「月並みなこと言うと、美月ちゃんは"つかれてる"」
「え、えっと、最近寝不足気味ではありますけど…」
本当に心身ともに限界ではあった。目の下にはクマができているし、ストレスで食事が喉を通らず力も思うように出てこない。今の美月は、占い師でなくたって誰がどう見てもやつれていた。
それを察してか、晴香は、そうじゃない。と続ける。
「君には、"餓鬼"が憑きまとってる」
「餓鬼…?」
「そ、正体は、美月ちゃんのことが愛しくて愛しくて憎いほど愛しい誰かが、"あちら側"から呼び寄せた餓鬼。だからどこへ逃げても憑いてくるし、何をしていても憑いてくる。美月ちゃんへの想いが強くなれば強くなるほど、それは強くなる」
「ちょ、ちょっと待って。なんの話ですか…?」
さも当たり前に話されているが、全く話が見えてこない。
「餓鬼ってなんですか…?憑かれてるってどう言う…」
「こんちはーっす」
美月の問いを遮るように、社の戸が空き、誰かが中に入ってくる。
「あ、来客中でした?」
少し申し訳なさそうな声。美月が振り向いた先には、同じ制服を着た男子高校生がいた。
「源間…くん?」
そこには見知ったクラスメイト、源間博夢の姿が何故かあった。




