今日は3人亡くなってくれました
これは私がまだ実家にいた頃のお話です。
その祠は駅と職場の中間にひっそりと佇んでおり、手を合わせることはしなかったものの、毎日その存在を目にしていました。
祠の中には、1歳児ほどの大きさのお地蔵様が祀られており、赤い前掛けがその小さな身体を覆っていました。
ある日、お地蔵様の前に一人の若い男性が立っていました。このお地蔵様に参る人を見たのは初めてだったので、私は好奇心をそそられ、ゆっくりと足を進めながら横目でその様子を窺いました。
男性は、お地蔵様の頭を優しく撫でていました。上部を撫でるのではなく、まるで大切なものを抱きしめるように、後頭部まで手を回して撫でていました。その後、両手を合わせて何か小さな言葉を呟くと、お地蔵様に一礼して立ち去りました。
せっかくの機会なので、私もお地蔵様の前に進みました。すると、線香のような香りが漂ってきます。しかし、何かが違う気がしました。
「もしかしたら、ご利益があるかもしれない。さっきの男性のようにお地蔵様の頭を撫でてみよう」
そう思い、私はお地蔵様の後頭部に手を伸ばしました。その瞬間、ぬるりとした何かが指に触れました。驚いて手を引くと、右手の中指と薬指に透明で粘着質な液体が付着していました。
その匂いを嗅いでみると、どこか懐かしさを帯びた香りが鼻をつきます。考えを巡らせていると、指の表面が徐々に固まっていく感覚があり、これが何なのかを思い出しました。
アラビックヤマトだ。
思い出せてスッキリしましたが、なぜお地蔵様の後頭部に液体のりが⋯⋯? 後頭部にいったい何を貼っていたのでしょうか。
気になったので横から覗き込んで裏側を見てみると、新聞のお悔やみ欄の切り抜きが、後頭部にも背中にも満遍なくビッシリと貼り付けられていました。
思わず腰を抜かした私は、その衝撃で尾てい骨を骨折してしまいました。
それから毎日復讐のためにそこで待ち伏せしたのですが、男性が現れることはありませんでした。ふざけんな。




