本編:常魔法-微睡み-いぬ:その1:(1)干磯という浜辺1p~ (5)遭難、初めてでなく、その向こうが…40p
長い~私小説です。作者が重要と考えるテクストは何度もでてきます…ので、気楽に省エネでご閲覧ください。…因みに、何度も繰り返すのも常魔法(…贄の要らない魔法)の重要な要素です。
コンテンツ :
(1)干磯という浜辺:1p~ (2)和田神社という嶽のぼり:11p~ (3)そんな和田でも中1であった時があった:24p~ (4)徘徊・微睡み:26p~ (5)遭難、初めてではなく、その向こうが…:37p~
(本文には(1)(2)(3)…のナンバリングはありません)
・この物語は著者個人の空想上の作品であり登場する人物・
集団・組織・地名・作品も架空であり、万一類似・同一の名
称があっても意図や他意もなく一切の関係・関連はありませ
ん。…なお、読書中、個人差はあるものの無意識脳を覗かれ
ているばかりか、喰われているようにお感じになるかもしれ
ません。ですが著者自身も無意識の神経情報や夢の出し入れ
されている…時に盗み取られていると、思考の淀みの狭間に、
フト感じる事があります。…著者側の帳尻はマイナスのよう
な気もします、何故著作までに数十有余年も費やしたか?が
その根拠です…此所はお互い様ということで宜しくお願いし
ます。したがって引用・抜粋・剽窃等のは問題ありませんが、
如何なるデーターベースと言えども、(現存のデーターベー
ス…特に戦端の口実に乱用される「正義」の意味が希薄にで
もならない限り)データーベースとなりうる意味・意義・根
拠は空想故に全くありませんので悪しからず。
・
・
・
・
・いぬ=(戸波の無能あるいは嗅覚系常能魔法者たち微睡み
…それでも無能でも…無能だからこそワクワク出来る)~獒
・
・
・
・
・―干磯という浜辺
・
・
・
・
・
・何故だろう… -1p
・干磯の浜にふらりとやってきた男子学生みたいなベリーシ
ョーの旅人が。先輩・有妃史澪―ユウキ・フミオであるのに
和田能直―ヨシナオが気が付いた時… “@かなりの時間”
が経っていたのかもしれない。
・…そう思ったのはなぜだろう…濃密なプラズマ相や宇宙が
晴れないスープ状態は別にしてこの星には気相・液相・固相
の三相…特に“水三相”が混ざり合い共存・共鳴している所
為なのかも知れない、…きっと。…それは、きっと実時間が
作る因果を波音や磯の香りは跳び越えているのかも知れな
い。単調で悠久の実時間…が淀むとあらゆる相で…子供だけ
ではなくそして誰もが、摂理神でさえ、退屈凌ぎに“鬼ごっ
こ”や“勝負”を始める…これに呼応して“虚ろ”あるいは
虚時間は“かくれんぼ”を戯れ始める。…繰り返される波音
や磯の香りが飛ぶのはそれと似ている、…鬼ごっこで見落と
される警告~メッセージを香りが運ぶ。
・…たとえば、実数的シークェンスと密接する文字・文字列
…それがないとされる頃からの伝承で、誰が言うでなく、こ
の地域一帯が磯浜であったのだが氷河期になり磯浜が干上が
ったことに因んだ~繰り返してきた…らしい…そう浜が響
き、呟き薫っていたいていた。…波や満ち干以外でも海面は
…時代・クロニクル…実数シークェンスの彼方では大きく、
変わってきた。
…と。
・…空耳だろう。
・
・
・
・…
・…波音が響いた。波音だけ…妙だが、繰り返しのはざまに、
波音が香っていた、波飛沫が放つ香りと音に紛れて…。
・いいえ。香りが何らかのルート、あるいは何かのカラクリ
で雑音に紛れ曳きだされ嗅脳に直接語りかけられた。
・潮風に紛れて、声が響いた…“カゲよ、もののふ、見守れ、
イヌ、を護れ…”とでも、繰りかえされた。…浜の近所の飼
い犬たちが様々なキーで吠え韻でも踏むように~「キャェグ
ェ~」「~うぉののぅ~~」「まわぉ~ウゥォ」「ウォウォル
ゥ」と響く実音声、そして繰り返された。まるで大きな犬ま
でもまるで悲鳴の様だった、音圧は全て此所に集中した。…
その狭間~余韻に紛れて。ナニカが香り起った。 -2p
・?え、…香りが発った?浜の真砂、響き波打ち発つのは香
りだったのか?
・…浜にいる所為なのだろうか?海に揉まれ色々な音・香り
…。
・
・時をまたぎ―時をこえて
・…そして情念・メッセージが、”いま”干いた浜に打ち上
げられてくる。
・でも揺らぎながらも、押し並べて潮の香り。
・ …あのときから…。”
・
・思考が…乱れる~因果が微かに揺らぐ、一端…途切れる・
途切れてしまう―思考の停止
・…一呼吸分だけ…息が止まる…。何処か後ろめたく…少し
恐い…。溜息、風も香る。…“歩みを緩めしっかり息をして
ください”…とでも謂うメッセージだろうか?。
・
・時をまたいで…
・… “ … ” そんな溜息に不思議な間合いと、思考の
淀みに乗じて…。
・
・…エッ?なんだぃ?、勝手に感情が巡る…意味不明の思念
・閃き…感覚が冴え渡る。
・…え?誰の?誰の問いがだい?
・…誰かの、遠い未来の夢でも観ていたのだろうか?
・…それともあの時の昔に戻されたのだろうか?
・…それとも誰かの夢の中なのか?
・…それでも我は問う…そしてオレ自身も香っていた、
・…それは…自己臭?。
・…
・~とある香り、その一つに誘惑―俺のアノ刻ノ…俺もふら
りとその誘惑に呼び出された。…甘露…修行者~覚醒者の警
戒フェロモン…ドパミン・フェニルアラニン・代謝産物のホ
モバニリン酸(甘いバニラに似ている)これに附帯してくる
何かに呼び出された。 -3p
・~今も夢の中なのだろうか? それとも誰かの解離の中を
彷徨っているのだろうか?俺はまだ目覚めていなかったの
か?…閃いた、両価性が開いた…異質の二つの対象を同時に
識る。夢故に?時の淀み故にただ立つ。
・~誰かの?…何かが俺を覆い隠していたのだろうか?…誰
かを忘却に誘う香りの仕掛けに…、自分の記憶も居たことも
夢散させてしまう何か …既に消えてしまった欠片…意味を
生み出すための…自と他と対象表象の三つ巴…それと時の四
つ。…虚ろの戯れ…
・
・~我は問う、問う我自体含めて四つを巡るナゼ!
・…何故と。…
・
・…記憶から生まれる我執、我執から生まれる誘惑、誘惑か
ら生まれる時と超越を孕む糸達、時から生まれる記憶、…は
廻り巡る巨きな車…それは一つだろうか?。
・いったい、ナンダィ? なんだって云うんだ! 誰?オ
レ?何故?何処へ往こうと?
・
・
・
・…
・…潮風が騒いだ、微かな憂いがあった、風はヒンヤリ湿気
始めていた。だが何処か~何か爽やかだった。
・潮風とともに絶えず打ち寄せる浜で崩れる波は、果てから
でも来たかの様に…時でも超えてきたかの様に…香ってい
た。…そしてまたうねりとなって復っていった。
・まるで潮風は香りを包みとりまとめ…長径3メートルのス
ピンドル・紡錘形の塊となった…引力のように纏まる…そし
て香りは塊そのまま、場所と時を移動した…放課後中学の校
門を出ると、匂いの塊は和田の家の台所から校門まで瞬間移
動して…能直は夕飯のメニューがわかった…親子喧嘩さえし
ていなければ…そんな記憶がよぎった。
・まるで潮風が運ぶ香りの塊は触媒…自身はマテリアル・材
料・贄のようには振る舞わず~変わらず~自身のカタチ・性
質を一切変えずにいる化学触媒のようにモノやヒトに然るべ
き~真に望ましい変化を促した。 -4p
・まるで果てから流れ繰り返される潮風・触媒は数多の香り
の塊を幾種類も括り、その場から拡散してゆく~もしかして
“果て”から滲みだしているのかも知れない…そして時さえ
も超えてしまうことだってある。
・まるで忘我の悦…何処かの歌の世界みたいに。ただ、初夏
のこの浜辺は蒸し暑く陽射しもじりじりと強かった、行き交
う人・立ち止まり少し座り込む人は多かったが熱い浜辺にだ
れも長居出来なかった。元気で騒がしい奴らほどすぐ消えた、
だから潮風が運ぶ数多の触媒・贄のように消費されない~香
りを知るヒトは殆どいなかった…そういえば浜辺近隣のイヌ
は吠え続けていた様な微かな眩暈にもおもえた、潮風は歌に
乗って時を往き来してるようにも想えた。…何度もリバイバ
ルされる流行歌のように…
・幻影だろうか?…少し離れたところに和田能直と同じよう
に静かで動きの殆どない影があった、影は地元の見知った人
物から映されたものではなかった。影は時折ぼそぼそと呟い
た。…潮風か、何処かの歌を反芻していた…?その呟きはよ
く合う~ノイズに乗りメロディーもサビもあった、もしかし
て和田とは違う波音か潮風を聞いていたのかもしれない…学
生?、医療関係者?女?…和田の同期となったのは…そう、
大学院も含めると長期にも及んだから…それに和田の専門分
野にも詳しく少なくとも同じ薬剤師独特のタメ・語調・間合
いくらいで同業者・志を同じくするものである事は察しがつ
いた。同じ匂いかな?繰り返す波・辺りいっぱいの潮風の所
為?…。女が少しこっちにきた。…同業者はたくさんいて、
そのうちの一人だろう…と。違うかも知れない…が何処か和
田能直と似た匂い・雰囲気を持っていた。
・
・
・
・… -5p
・…幻が見えていたのだろう…微睡んでもいたから。陽射し
は強かったが、陰りの兆し、直、雨だろう。湿気たホットス
ポットが起ち上る、弱い陽炎…直、曇り、雨が、降る…。
・陽炎が揺らぐ…背も高く、胸も腹も吐く息も粗いが綺麗だ
った、少し疲れている様にも感じた、美しくよく整った顔立
ちは…何故か可愛くはなかった。色白というより、恐いもの
を見てしまった血の気のない暗く冷えた人の顔、安心と快楽
を見失った哺乳類…今、将に捕食される草食動物、あるいは、
興奮しなくなった低体温の爬虫類であるような、冷えて疲れ
てはいた…が腹黒い匂いも無かったきれいなお腹…そんな人
物の顔色から和田はそう連想した、居心地の定まらないフェ
ロモン…そして、肝臓か脾臓か…きも、体の深部の何処かが
…ヒューッ…と、冷えが忍び込んでいった。
・…昨日、楽しい夢を見ていた、ずっと見ていたく・醒めた
くもなかった夢…和田が小さい時、二秒?二分?二時間?二
週間?二年?…病室でずっと見ていた夢。…だが今、明るい
昼間に、思い返してみる。…と、夢は何か巨きな力で少しず
つ歪められている風に思えた…夢の中のその子は微笑んでい
た…、優しく微笑んでいる少年は人工呼吸器に繋がれていた。
…繰り返えされる同じ色調の風景・大仕掛けな設備設定と装
置・同じような会話のやり取り…思い出し~思い出し見てき
たその夢の流れを追ってみると…、それは、どんどん不気味
な影を曳いた…曳きこんできた、誰かもその少年を笑ってい
た、夢の温度も・外気も・追想の和田自身の体温も下がって
いった。何か巨きな力への抗い、それが悪寒だった。何もし
てこなかった…備えてこなかった恐怖…昨夜から、和田能直
はその得体の知れない巨きなものに“ヒトリボッチ”で抗っ
ていた。…だが、遠くで見守ってくれる人がいた、そこにた
たずんでいる香り~静かな影もあった。だから…、ヒトリボ
ッチの能直は孤独でも孤高でもなかった。孤高・孤独と“ヒ
トリボッチ”は似ていて本質的に違うもの。
・…見知らぬ影は、和田に近づいた、軽く吹く風も辺りの暑
気も、すっかり払われてしまったような。
・…
・冷んやりした女がそばにいた、
・
・
・「しばらくぶりね、ワダッ。…クン…」
・
・ -6p
・…夏休みが終わり、同級生どうしが新学期で再会したトー
ンであった。女の匂いは調剤と似てはいた、使い古されたパ
ソコンの匂いに微かに…何処か土や黴の匂いが混じってい
た。昔運んだ壊れた電子レンジの纏わり付いた古い鉱物油の
ような匂いの気もした。…古い匂いの記憶に想いを巡らす…
“誰だ、こいつ? ”和田はそう思った。…自分と似た匂い
に遠い微かな記憶があった。…だがそれだけだった、匂いの
記憶に伴っているはずのカケラは何処にも結びつかなかっ
た。
・女は、懐かしそうに微笑んだ。…和田は応対に困った、知
った人間ではなかったからである。
・…ソレガ…
・「責任とってよ、ワダ。」「…使命を全うしなさい。かな?」
・…この言い方…これに思い当たる人物~顔…誰だろう…
…、
・
・
・…ア、…あった。…だがその顔はふっくら愛くるしい、…
長い髪、長身であった上級生の顔であった、そこには似ても
似つかないヒンヤリした女、声・発声の文法も構音のメカニ
ズム・余韻の曳き方も違う異世界人がそこにいた。
・
・
・?ワダ。…?
・…「ワダ。って…そういう言い切りは、」
・ゆ…「…有妃先輩なのですか?エェッ中学の?。」
・「そうよ、二中の私の代で…自滅して、崩壊して死んでゆ
く、文芸部、半分哲学研究会を抹消しようと思っていたのに、
…マ、見事に邪魔してくれて!責任トレッテ!…まあ、 迷
ってもいたかな。…それはそれで良かったのかも。」
・…何かすこし思い出してきた。「…やはりそうだったんで
すね。」ハナシ会わせておこう…「文芸部の廃部撤回になっ
て、先輩笑顔は戻りましたがずっと子供心にも腑に落ちてい
なかった、…文化祭以来…卒業以来?、とても不思議な笑顔
でしたから、何時かお会いできたらお聞きしたかったんで
す。」
・この変なヤツ有妃先輩のことをナンカ知っている取り敢え
ずハナシを続けておこう、変なヤツだが先輩と似て悪人でな
い…と思う。
・…人を欺すとき・乗せるときに出る匂い・うわずったよう
な独特の音声…ほか諸々五感を刺激する―所謂“ウサンクサ
イ”とでもいうものが、無い…。…全く。…疲れてこそいる
が吐く息が澄んできれい。 -7p
・… 只ただ、乾いて聞こえる。
・…「あのときはありがとね、キミはその使命どおり鼻の利
くナイトだった…でもあいつが火元じゃなかったんだ。でも
きっと…やっと済んだと思う。あいつら殲滅して邪魔がいな
くなってとうとうボクを、ボクのところへ追い詰めて来たん
だ。…(…“何言っているだこの女”…)消滅してはいない
けど、ボクさえ動かなければ・ボクがきちんと隠れ切れれば、
あいつらは自滅する、ボクを追い詰めたつもりが、“あいつ
ら”…”『あいつら』…(この人?…また潮風でも騒いだの
か?…鬱陶しそうに海をみた。)…も追い詰められていたん
だ。向こうが…」
・「向こうも…」
・…
・「あいつらの放った仕掛けがあいつらを襲う。あいつらの
仕掛けをこの国のルールにすげ替えた…だからもう奴らはお
しまい。」
・“あいつらって…だれだ?”…。 “あいつ…かなあ? ”
・…
・…罪悪感であふれた、この不思議な先輩が“自滅させたが
っていて”…文芸部?も潰しにかっていた輩ばかりではない
…ような…そんな…まるで文芸部もこの不思議な人自身が潰
したような…まるで…、一つの世界を~イャ、いくつもの世
界~宇宙を滅したような…。…響きがこの人の『あいつら』
には有り~籠もっていた。
・
・…「でも、そんなに単純じゃなかったの。」…一体、なん
だい?ホント、だれだいこいつ… -8p
・「そしたらねぇ…またネ、こうして目途が立ったら…ふと、
キミのことを思い出したんだ…ナンカ消えたく…死にたくな
っちゃって、…サ~…。どうしてだろうね…」渇いた爬虫類
女に血の気が蘇った、またそれはそれで初々しいとしかいい
ようのない可愛い表情だった…「ちょっと恥ずかしくて…秘
密っ、…だ。」…突然唾液が溢れて酷く潤った声に変わった。
・そうだなそれは…繕っていた人の皮剥がれて、市民権霧散
して、人籍返上して、昔ワダ。をペットにしたようにボクが
ペットにされて、潰されて取り憑かれ凌辱されて堕ちるか・
魂失うか?殺したって良い…っでも…ワダ。がするなら…な
らいいんだ。キミなら。キミがいいんだ!キミが…此所なら
…わたしはここで獒になれる…イヌよ…イヌ。」
・「先輩?…」…なんだい…この灰色の汚濁・卑屈、…そう
自問を繰り返す。
・“…なんだっけ?この人…先輩?はナンカ、卑屈で凄く非
道な徒名がつけられていた?…っけ?…”
・…“魔法使い?…魔女?…風評みたいな…非道につけられ
たアダナを振り払いもしない卑屈”
・…不気味な影、巨きな力で何かが歪められて行くような…、
急な気持ちの冷え、形容のしがたい重たい空気は寒さに似た
ものを感じた。…そうして…和田能直の肝も冷えていった。
・
・
・
・
・―和田神社という嶽のぼり
・
・
・
・
・
・ …
・「…とも、かく。何か…とても…おり入った話のようです
ので、この先の駅の向こう…少し遠いのですが和田の実家…
知っての通り向こう小山にある神社がそうですが…」これほ
どまでゆとりを欠いた有妃を和田は知らなかった、だからこ
そ別人に感じた、同業者…あるいは同好者風の匂いだけが頼
りだった。「…今日は特に暑いので…」…言いかけて…明日
は崩れるのか…予報でもとても暑い日のはずだった。…変だ。
背筋が…
・…“今日は暑い日なのだ。きっと…、身体の何処かが冷や
されて暑いと感じないのだ ”
・ -9p
・戸惑いと、酷く怪訝な表情の有妃に自販機のお茶を手渡す
と和田は小山を登り始めた、捌けない自販機のお茶は酷く冷
たかった。…射るような強い陽射しはなく、薄雲は全天を覆
うようになっていた。
・突然、風は凪いだ。…小山を覆う森の木々は午後の蒸散を
重ねとんでもない湿度だったのだろう、普段、爽やかなはず
の森は薄くらく雑草も生い茂り道が定かではないように…そ
れだけで迷宮を思わせた。…酸素が足りない地下迷宮のよう
な…
・ゆっくりとうねる小径は数歩進めるだけで右も左も東西も
定かでなくなっていて、南西風が凪いだ所為だ。和田の記憶
を辿っても有妃は物怖じしない人だった。住み慣れた和田は
まだしも、ほとんど初めての有妃もそうおもっている様にみ
えた。和田神社につづく小径の熱気と湿気のはナニモノカ…
そう何かルツボのような何かの中でがすでに迷って出られな
いままになっている怪しさを持っていた。有妃は何処か怯え
ていた。乾燥の窮まった霊気がその爽やかな湿気に惹かれ…
寒冷に厭きた魂気がその暖かさの憧れ…封じ込められている
ようにも…有妃は感じた、和田の後を1cmの離れず・近づ
かず、まるで繋がれた様に、そして息は切れあぶら汗が噴き、
微かな耳鳴りと周りの音がうなり、匂いも感じなくなってい
た。怪気たちと同じように森に溜まった熱を有妃は半ば同化
していた。怪気が有妃にしがみついているようだった。嗅覚
が鈍化した和田には森の草いきれのような死臭のようなもの
をかんじた、何より和田の背中は重かった。
・何気なく渡したお茶を有妃に勧めた。有妃は酷く嫌がった
が、…もっと強く勧めた。お茶で口をすすぎ手が湿っていた、
渡された冷たいお茶が有妃と和田に感じた怪気を払ったよう
にさえ思えた―有妃はゴクゴクと湿気の所為で香り立つお茶
五〇〇ミリリットルを飲みほし大きく息を吐いた。…それで
も、登り慣れた和田でさえ不思議な恐さ・寒々しさを感じて
いた。食い合わせが悪く当てられてような居心地のわるさ…
とでも謂うのだろうか。
・
・熱死、煮沸の様な熱死…すさまじい湿度が酸素を薄めた、
凪いだ薄くらい小山を鬱熱が覆っていた。それは何か特別な
ものだったのだろか?ともかく、…お茶の所為で有妃の身体
の不調はすこしよくなった…。 -10p
・…和田神社に向かう坂は二人の息を切らした…吐く息は吸
う息より遙かに熱く湿気は水のように濃かった…ふたりは単
に軽重はあるものの…そう、熱中症になっていただけと思い
たかった。だが何かが付帯していた。…有妃は過換気の前駆
症状だろう…可憐にハア~ハア息をする。
・
・…「ど!」
・…「どうどう」
・…「どっこ。イッショ。…」能直は吐息に音声を与える、
・…
・…
・…どっこいしょぅ…
・二人して吐く息が鼻・口ズレながら…そして肺で共鳴する。
・…どっこいしょぅ…と、溜息!が漏れる…息も合い…祓う
ように…邪気を吐き出す様に…。
・…どっこいしょぅ…
・…どっこいしょぅ…
・…そう、この悪寒、昨夜の夢見とその反芻、有妃のゆとり
の無さ、二人とも何かに追われるような、
・…どっこいしょぅ…
・…ろっこいしょ~う…能直は、息を…吐き切る。
・この粗くしかも深い息は、そう…、呼吸法と溜息交じりの
言葉は…
・…どっこいしょ~ぅ…
・…ろっこんしょ~ぅ…
・魂の熱死から逃れるため太古から身につけていた…
・…どっこいしょ~ぅう…
・…ろっこんしょ?ぅう…
・昔有妃のじいさんたちが二人の教えてくれたちょっとした
呪詛返しだった。
・…?っこいしょ~ぅ…
・…どっこいし~じょ…
・…思い出していた。…二人して
・…
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」有妃も呼気を吐き切る…
・ -11p
・焦りさえしなければ誰にでも出来る自然にできる呼吸法…
清浄や酸素がふんだんの光…そんな何かに急き立てられなけ
れば…おのずと出来る呼吸法、パニックにもならないで済む、
息が粗くなると呼気が浅くなり呼吸数が早くなる、パニック
の呼吸運動は浅呼吸・多呼吸で呼かないから息が吸えない恐
怖の悪循環…。
・?、急き立てている何かって…ナニ?
・“息が切れる…息を吐ききれるということ?ワダ。?”
・「どっこいしょぅ…」有妃の息がまた浅くなる…
・…二人は吐く息の濃さと粗さの所為で、
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」また、呼気を吐き切る
・…
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」
・改めて怪気が複数でかつ丹念に仕込まれてきた呪詛であっ
たことをそれとなく悟った…
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」呼気を吐き切る
・…
・それも新手の…誰かに唆されたような邪気…!これに抗う
ように古びた白いローブ様の衣類がチラつく、純白は聖なる
色、纏えば聖なるものを装える…だがそのローブは古く反っ
て汚れが目立った。
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」
・戦神やその媒介者が得手とする邪気、
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」…吐き切る。
・心拍は粗く…、
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」吐き切る
・二人はゆっくり息を吐き切る呼吸法のみに集中した。
・…「ロッコンショウジ~ョ~」
・…得体の知れない恐怖は全てを占拠しようとしていた、
・「ドッコイッ~シ~ョ~」
・心拍が粗く、息が極限まで浅くそして速く、…にも拘わら
ず吐けないので吸気できない…精気を吸えない、虚弱ならそ
れで死に至らしめる恐怖だった。地方によってはオンディン
スカース…運が悪いと死ぬ…炭酸ガス…蓄積で麻酔作用のあ
るものが溜まってゆく…それで恐怖も呼吸もとまる。
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」吐き切る
・…だから恐いときこそ息を吸うのでなく虚数的に…
・…“吐き切る”…
・ -12p
・…吐息=オンディーヌの祝詞の乱用で気を吐けなくなる呪
い…所謂オンディースカース、息…吐く息の出来なくなる呪
い…
・…「ロッコンショウジ~ョ~。」二人して呼気を吐き切る
・…水の精霊オンディーヌの水は体内の老廃炭酸ガスを溶か
し込み触媒的に肺に運び…呼気となる。…老廃炭酸ガスも邪
気を肺にまで運ぶ…出るべくして出て行く…、
・
・…「六根清浄」
・
・…この…、気を吐けないのろい…だから、清浄な空気を希
求しても息が吸えなくなる呪い。“舶来もの”である。
・…
・「ロッコンショウ、ジョウ。」息を合わせて…
・…判るはず、同じ炭酸ガスでも…
・呼気の老廃炭酸ガスとコーラの炭酸水の違いは。
・…「ろっこんしょうじょう。」呼気を吐ききる。
・
・「ろっこん、…しょうじょう。」
・…ワダ。…“この人ひとこうして”…
・
・…「どっこいしょ~ぅ…」
・
・…“ずっと吐いて来たんだ…”
・
・
・
・
・…『チッ』…何かはじけた音、聞こえた気もした。
・…何か、失敗したようなラップ音。
・
・
・…通常、この種の恐怖は神社の境内に紛れ込むことはあり
得なかったのだが…、二人は歩みつ、息を整えつつ無事に境
内の小山を登っていった。
・… -13p
・…この小山の頂辺りは平坦になっていて、そこに和田神社
がある、ワダの当て字は渡舵、あるいは渡多・渡…。氷河期
が終わり時期的には因幡の素兎のころ、海面が上がり干磯が
がどんどん狭くなるばかりか大陸と地続きでも無くなるよう
になり渡航を生業とした氏族の末裔である…全国に散在する
渡辺・渡部も同様である…
・この和田神社、北西に大乃山、南には三笠湾、遙か正面に
大斗島が淡い噴煙を吐いていた、南西の彼方の海、湯ィ州半
島に沿って黒潮が流れ込み遠くでも水面の荒れが窺い知れ
た。古代、此所で慮れば~周到な航海術がなければ、この地
に立つことなど到底不可能は自明だった。大陸から見れば最
果ての地、外圧はないわけでは無いが、どんなに優れたもの
でも潮の流れによって油臭いのが異質なものに変異させられ
てしまう浄化かもしれない、…これもウブスナと言うやつだ
…こんな漢字が当てられる…産土。―豊富な資源ばかりか困
難・不遇が人を育む、環境と人の共同作業。三笠灘の海流で
海のものが打ち上げられ陽と砂利浜で干されることから干磯
というのも頷ける。
・…頂付近はすで爽やかな陸風が吹いていて、浜のジリつく
陽射し・迷路に誘い込む曇りと湿気…そうして、再び陸風で
爽やかに晴れた。山の小径を越えると、…時世界が変わって
いた。
・…有妃はまだ息が荒かったし顔色もよくなかった。
・…和田は山中の亡き父の実家を案内した、鳥居を過ぎ、ポ
ツンとある神門をくぐり…広い社務所に有妃をエスコートし
た。いつの間に…だろうか、有妃は言葉を出さなくなってい
た。有妃も夜の神社を知らない訳ではなかった、それでも。
門を閉める真際、御燈明もない神社は、昼下がりとは別世界、
…今は古く広大で、そして薄暗い小山の頂上の神社に和田が
一人棲んでいた。…神門はだだ広い高台にぽつりとあった、
…門の開閉で世界がガラリと変わるのである。山歩きに慣れ
ていない所為だろうかそんなに高地でもなかったが、有妃は
すでに息を切らし、いつまで経っても息は整わなかった。…
社務所の内には和田が集めた本・引き継いだ文献がいっぱい
ウヅ高く積み上げられガラス窓からの光りを遮って中は酷く
暗かった、有妃史澪の顔色は冴えず暗かった、…何処かヒト
らしいの蔭はすでに遠のいてしまっていたようにも見えた…
暗く蒼かった。 -14p
・
・
・…リックを置き、防水防寒フルシーズン長いコートを脱ぐ
と有妃は淡色のラフなTシャツ・ノーブラ?酷く薄い下着…
と淡いブルーでショットのデニムパンツ…きっと陽光ではそ
んな色なのだろうが…「フカイ、着けてるょ」…。浜と山が
干磯でせめぎ合っていた山の頂上に神社があった故、有妃は
しっかり汗をかいて張り付いていた。異様に薄くらい社務所
と着衣の色では有妃は全裸の様にも見えた。…酷く疲れては
てて、冷たい異様さ、全身から発する手負いの獣のようなオ
ーラ、病んだ獒・手負いの大狼、もし全裸であったとしても
和田は美しくとも、すでに属性のかき消えた物の怪をどう見
ようと、人…異性にはどう見ても見えなかった。…それに物
の怪は肉食の爬虫類…の匂いも無かった、…物の怪は匂いさ
えかき消えていた。…それは捕食される真際~手負い…ハァ
ハァと浅い息を繰り返すだけ、この大きな物の怪は一向に喋
る気配さえなかったし、その人離れした気配に和田は何故か、
何の驚きもしなかった。
・「さて…先輩?いいんですか?さっき浜辺でイヌとか・ペ
ットとか…と。中学のことを思い出して下さい。私がどれほ
ど粗暴で抑制も節度もない性格かはご存じですよね?、奴隷
か式神のでもして…笑いバカ・ナゼナゼ馬鹿とでも茶化さな
いと、どうしようもないないくらい…。本気で言ってるんで
すか? 酷いことを言います。私の目のまえに美しさだけ可
愛さの微塵もない人が、私のイヌになるんですよ…それから、
先輩を加害者にでっち上げたあいつを…あいつらは自滅でし
ょうが、私が衝動で追いやったようなものともいえますから
…、繰り返します、貴女の後輩の和田能直はこの点極めて粗
暴…残忍いいんですか?」
・
・…
・…「残忍…うん、そうだね。キミのナゼ?は獰猛。だね…」
…有妃は気のない返事をした。
・ -15p
・…有妃は喋り始めた、「それは、」…愛くるしい上級生の
声ではなかった、女の声ではあったが別世界の線の細い乾い
た声だった。「…それは別の偶然があったから…、…ワダ。
ボクも嗜虐者だから、キミが嗜虐者なのは分かるワ…判って
いたワ、あのときの、小・中の、あの乾いた空気、都心のウ
オータ・フロント中津区…水辺なのに…疲れたのわたし―ボ
クは…渇いた、ヤツラが組み上げた闘争の構図、キミの武器
の“ナゼ ”が使えない構造。」
・…“?、俺のナゼって武器だった…? ”…そうだっけ?
・「無理して背すじを伸ばして、二足歩行で起ち上がり続け
ているのにネ…精神なんてそんなものでしょ、業…寝転がっ
たり・這いつくばった醜く藻掻いたまま死んで、そのうめき
声を聞いてワダ。キミが…何か悟ればいいの…。自滅するは
ずだっだのはボクのほうだし、邪魔したのはキミだしその責
任でやってくれるかな?…私・獒は、今でも貶されるは全く
だめ、ソソノカシの乗ったことがない、されそうになる前に
逃げる・避ける・気配を消す・躱す、ボクについてまわる魔
物まがいの言葉は褒め言葉、唆しようのない駄目人間、それ
でも手を変え品を変え…でも、誰かがそれを阻止してくれる
…くれた。キミなら出来そう、幼いキミはそうしてきた。ワ
ダ。きみは、幼いキミ・幼若で残虐なキミ自身を殺傷してい
ないと信じている匂いから分かる…キミに貶められ奮い立つ
何ものもなく自堕落に四つ脚の如く横たえる。無理クリ立ち
上がり唆される脚など無い。無能でいい。キミの足下で…キ
ミのそばでなら殺められたって…なんだってあげる、それ自
体、ボクの鎮魂と帰心。キミが目覚めてくれぇれば…なん
だ。」…また唾液が増えている…。
・…言っていることは夢観のようなハチャメチャだ、追い詰
められ、体温を失い、死に場所を求めている手負いの獣のよ
うでもあった。それに、俺が目覚めていないって?…俺に食
いつかんばかりの迫力…で?…それに辺りは昏い…ゆめ?。
・… -16p
・「…私が部長の文化祭…初日だったカナ…わたしが意識失
って、ワダ。が保健室まで運んでくれたの憶えている?…ア
レでわたしの匂いやら気配が消えていたんだ。…それでワダ。
がやつを叩き潰して…というより、それでわたしを完全に見
失ったの、それで自滅したのキット…破壊対象を見失うと洋
モノは自滅するの。西洋・中華、いいえ…大国って父性原理、
その父性原理の所為だろうか…子は親を殺し続ける、…これ
が神話的設定で歴史を重ねてきた、父性の国で…さもなくば
先代を些少し抹殺し乗り越える…常に刷新、刷新。…遺産の
積み重ねができない~波属性のようにはいかない、その時間
線の延長に文明がある。破壊の坩堝。深淵。黙示録の静寂。
…なの。」「…だって…」
・
・
・…「だから、ワダ。キミはボクの飼い主になりなさい。」
・
・
・…?「…なって。」…「…先輩?」「なって!」「わたしが
どうして意識失ったか?キミは知りたくないの?」
・ …「…幾つかの疑問点で最大でしたね…」
・「ココょ…」冷汗のTシャツの左胸…赤暗いほくろのよう
なものが薄ら透けて見えた、心臓のほぼ真上、比較的大きな
赤黒い痣があった、血が十の字に滲んでいるようにも見えた。
・「あのときね、階段で逃げるの助けてくれてありがとうキ
ミもあの学年主任に殴られて大変だったのにね…。」有妃史
澪は当時のことを思い出している風であった。「…その時キ
ミの投げた鞄がここにあたってちょっと圧したの…あとで解
ったこと…迷入副腎というもの…ここを刺激すると血圧を上
げるホルモンと、女性ホルモンが…主に二つ、とんでもなく
出てきたの…血圧が上がりすぎて意識がなくなったの…女性
ホルモンはわたしに食欲と幻影を見させた…意識がない間キ
ミがそばにいたでしょ?優しく手を握ってくれたキミに犯さ
れ凌辱される幻をみていたのキミの腕の中で…抱き止められ
ているにも拘わらず…キミを食い尽くしたい、胃袋の中にマ
ルッと収めたい…中三の小娘が意識もなく激しい食欲~性
感?属性特化?独占~収納衝動で、…かな?…“贄”=被捕
食者から:捕食者に転換した…あの頃キミは「アール・グレ
イ」にご執心。キミの不思議な体臭とが混ざり合って…そん
な匂いに誘われた。一時であれこの世から完全に消えていて
洋モノ・中華は完全に見失い沢山の憑依も呪いも解消した…
あの匂いが違うモノ狩りがね…学校は“主任の生徒虐め”っ
ていうけど…極めて大陸的、アッチモノの狩よ…だれもその
舶来の核芯には踏み込めなかった。」
・…「みんなに忌み嫌わせて、迫害させる、自分の手は汚さ
ない、どこからか涌いてでる恐怖をもって成す。…洋モノ・
中華の専売よ憑依は」 -17p
・…
・「憑依と狩は対のペアーよ…」
・…「ヘンかな?」
・
・…ゥン「変じゃないよ」…「まだ目撃した人がいないだけ
かもライオンはシマウマの群れを襲うが群れから離れた交尾
のペーアを襲ったハナシなんて聞いたことが無い。…でし
ょ?」
・「ボクは女だから…まあ歳を重ねたから薄ボンヤリ…交尾
を邪魔されたら雌も雄も酷く獰猛になる~なれる。」
・「捕食するライオンは雌だけど逃げ去ろうとするシマウマ
の後ろ脚に魅了されているんじゃナイ?あるいは多産のシマ
ウマは、贄が一匹で済むことが織り込み済み…。…何処かの
番組でとち狂ったシマウマがガンつけながら頭突き・頭振り
・脚蹴りでライオン撃退したのをみたことがある…。相似と
は言わないが何処かが似ている。…ライオンだって怪我する
とオマンマの食い上げ…保存貯蔵の文化がライオンにはない
からすぐに飢え死に…ライオン個体が賢ければ“逃げるが勝
ち”。…」
・
・…「そんなワケでアノトキはライオン相当の難を躱せた…」
・…「そんなこんなで、カワセせた…」
・
・でも…「ナンカ様変わり。」
・「最近また的…獲物にされ始めたの…」…「…だから、ワ
ダ。責任とって…空気が重いの、硬くなってきた…様子が変
…。なんだけど…」
・
・
・
・…先輩の有妃は冷たい女に戻っていた。
・
・
・…微かに情が動いた、少しだけ人並みの体温にならない
か?…と。
・
・ -18p
・
・…風の流れ空気の位相が変わったような、湿気を含むよう
になった…
・…再び。反復するように
・
・…
・…時間は経っていたのかもしれない。…あのときから…
・
・…。
・「分かりました、先輩…いえ、有妃史澪。人を辞めてわた
しのイヌにおなりなさい。」
・「今すぐ!」
・「有妃史澪いえ、イヌサン。四つん這いにおなりください。
…そうして体だけでも横にして四つん這いでも何でも自身を
癒やしなさい。」…何か和田は思い出したかのように時計を
みて、手近にあった紅い組紐を…有無を言わさず、有妃の首
に数巻、巻いて結びもう一端を自分で持った。…黄昏は…誰
ぞ彼、人のありようも時の有り様も微睡む・昏くなる。一体
何をしているのだろう…和田は自笑していた。
・
・
・…昏い時、社務所には既に、身ぎれいな老人が一人、戸を
あけて二人を見ていた。…からでもあった
・
・…それは定刻通り…老人は昼でも夜でも無い、黄昏を呪う
かのように立っていた。
・
・…老人はしばらく黙って、
・…浅い息を保ち、二人を見ていた。
・
・…「若先生…」 -19p
・…「良い雌の大型犬を拾…手に入れられましたな…、綺麗
な水銀色の毛並み…この曇天の薄暗がりでも怪しく光る、そ
れを、室内にいれるとは何と、ハシタナイ…。ところで今日、
息子のぶどう園で珍しいものがとれましてね、これ差し上げ
ます、きっと美味しいと思います…」ではまた。…ゴトリ・
ガチャリと異音のする袋を置いて社務所を出た。決していい
響きの音では無かった。金属の筒先が見える機械~工具がみ
えた、かなり重そうであった。…玄関を出たところで、すぐ
に振り返り、ゆっくりした動作で「大型犬を欲求不満にさせ
ると大変ですぞ、さっきまで起ち上がっておりましたね、メ
スだったら恐いですな…今すぐ愛でてあげなされ…とても、
可愛い目をした良い子ですな…。」
・…などの他は意味が読み取れず…ブツブツいいながら鳥居
をくぐり、神社を去って行った。
・
・
・…「あのご老人は地元の名士です…日常会話はできますが
斑の酷い認知症で、今日の日常・現実と…まるで天孫降臨当
時の眷族と同居していた神道が混合して、まともな認識出来
ないのと~同時にまともな日常会話が難なく出来る…斑の状
態で混在しています。現実社会のことは全く…それに、」「…
知っての通り日中は社務所といえども施錠出来ません。」…
黄昏時、薄暗がりで裸にしか見えないイヌに、「有妃先輩…
あのじいさんが酷く気にしています…」 -20p
・…「きっと、何度もここに来るのです…恐らくすぐ、」
・…史澪は汗と黄昏時で自分が半裸にしか見えないこと…中
学時代一年に満たない間とは言え、部内公認、文芸部員らし
からぬ粗暴・雑駄の男子部員に、下僕の扱いをしっかり叩き
込んだ、以降も文芸部の後輩女子に首紐を握られていたこと
…、その後輩男子に敬語でふたたび話しかけられたこと…。
有妃の危機的な状況で事態を一瞬で飲み込めて…仔細知らせ
なくても呑み込んでくれる…阿吽。…影武者―と言うかナイ
ト…この世ならぬものにも造詣がそれなりにあるもの、中学
の後輩、和田能直しか思い当たらなかった。…そんなこんな。
・また史澪の身体は桜色になった、…花が、ぱっと咲いた。
少々不気味で爬虫類を思わす冷たい女でもなく、俄にふくら
んだ唇、愛くるしくも強かな文芸部闘志、兼部長でもなかっ
た。少し窶れてはいたが、自然の頬紅―ほんのり微かな紅潮
した頬、あのときの愛くるしい瞳、和田はこの世で一番美し
いものを見下ろしていた。「あの、ワダ。…くん、取り敢え
ず、御主人様。わたくしめに羽織るものかシャワーを貸して
いただければ…ここまでの“登山”とあのご老人…ソレニ私、
とても嫌な汗が出てきています。」「それにこの首の…」…
「申し訳ありません、先輩…」「いいえ、この真っ赤な組紐
をしばらく貸していただけます?」「せ、先輩、すぐお風呂
用意いたします。」「…ダメだよ、ワダ。…キミが主に成り
切れれば、ボクの残っているが人の気配を消し去れば…向こ
うの宗主霊や憑依先のこの徘徊老人を瞞し通せま、…ハイ…。
でもやっぱりダメ。」…。
・
・「それにあの老人…直観ですけど、何かとても怖いことを
…抱え込んでいます。」
・…有妃も判っていた直に回廊の様に舞い戻ること…を。
・史澪―イヌはそう言い切って跪いたまま、…古老をはぐら
かすため首に括られている真っ赤な組紐の端を両手で和田の
目の高さまで差し上げ、史澪は顔を軽く伏した、迷入副腎の
ホルモンバランスの所為であろう…有妃個人の所為では無い
綺麗な息をする有妃の胸が和田の視界を覆った、…有妃は和
田の喉笛をお預けを喰らいじっとみていた。左の乳首の内脇
には赤黒い十字の痣が汗で濡れたシャツ越しに見えた、和田
は眩暈が冷めふたたび史澪を見下ろした。…胸以外全身は痩
せいて体躯も華奢であった、跪いている脚は純血種ならでは
のたくましさと純血種とは思えないくらいの長美脚が共存し
ていた。…健やか。…太古この地は氷河の所為で地続き、雑
多な民族が共存していたからである、共存は、龍をはじめ大
方、干支と対応する。…先祖はヒト種でないと信じる集落も
あった、…一方。…、『情報精霊・霊種摂理神の我らが子な
ど作れるはずがないであろう!』…その感情的揺らぎを天使
につけ込まれ・唆されたのが神種ヒト族の悲劇の元と…謂わ
れる種族も混じっていた。…史澪のルートも顕かにイヌ科あ
るいはオオカミ目と察しがついた…。 -21p
・…史澪…いえ…そのイヌは四つん這いで主に組み従い風呂
に行こうとした、イヌというより毛流の流面が作るウネリは
ゲルマンの白狼、這うたびに動く淡い色ジーンズの皺…萌え
溢れ弾ける淡い水色を帯びた銀狼…手負いの白狼。同時に…
文芸部の天女、兼哲学研究会再興の騎手、筆先から放たれる
魅惑の言葉・爽やかな笑顔が、そして衝動とが複雑に交差す
る…二年先輩と後輩、天女と平民…“アチラ~あいつら”の
終末が見えてしまったとは言え、異国の宗主霊の的にされた
憧れの先輩の大事を見下ろしているこの切なさ―劣情…いや
逆転、…和田は思わず「先輩、有妃先輩。美しすぎます、」
史澪の這い四つ歩みが止まり、言の命…和田の喉笛を狙う眼
光が濁った。「先輩、史澪先輩、お立ちください。」
・
・…史澪はとても息が粗かった、そして息を吐いて「…そう、
…かもね…ちょっと恥ずかしい。」と起ち上がろうとした時
…
・
・
・
・…黄昏の玄関に、…気配があった。老人はまだいた。
・
・
・
・…舞い戻って…いや、気配を消していただけ…鼻で深い息
をし出しつつ戻り、顕れた…、のかも知れない。…じいさん
の思念と実体も…他の何モノかが…佇み残っていた。二人は
そう念った…“この老人、イヌ…有妃主従、いや和田主従の
何かを…匂い~隠れ包み込まれたいわば匂いの無いニオイを
嗅ぎ分けている…”
・
・
・…「若先生、そこの雌犬…仕草がまるで物の怪・女怪、に
ょしょうの魔物。」
・「御気を附けください。…オ・キ・ヲ・ツケ、ナサイ。」
・…斑の老人は玄関に居座っていた、あからさまな所有欲を
チラつかせ見守っていた…。
・
・
・時間は経っていたのかもしれない。…あのときから…
・
・…「御長老、私の犬がとても気になるのですね…」
・
・「若先生…如何にも。その通り。」 -22p
・…「なんの因果か…動物園からはたまに猛獣が逃げる、最
近は雌熊が逃げまだ見つかっておらん。(…それ大分マェだ
ろ?…)…その前は確か、禿鷹、屍肉を攫う…」「その雌熊
は、遠目、さもなくば薄暗がりでは背の高い御婦人に見える
と報道されて…」
・…「御長老…それ過ぎたマェ…」
・「そこで、若先生。先生がお連れしているその犬じゃが、
動物園が隠居の私を狙っ…イヤイヤ…」「先生も眷族の刺客
に狙われているかも…と思いましてな、既に取り憑かれてで
もおるのかと…不思議な因縁みたいな妖気がその拾われた雌
のワンちゃんからでている様な…」「あるいは若先生ゆかり
の誰ぞかになりすまして…」「そして、私も、隠居前から連
なるにある領域の隠密…因縁を感じておりましてな…悪いこ
とは申しませぬ。若先生の御身を案じて…そのワンちゃんを
この古老に譲っていただけないかと…」…(“モノノケ”…
確かに頷ける…と、和田が呟く)「途惚けた爺がチグハグな
訳を挙げ諂いお願いしておるのは重々承知のうえでの身勝手
なお願いじゃ…」「こんな変な時刻に度々の訪問、本当に申
し訳無いと思っている…あい済まない。」
・…「お若い方には全く頓着出来ぬかも知れないが…そのワ
ンちゃん体温がない・息をしていない…感じられぬ…」
・
・…「…私には薄らと分かる…若先生…。お若い…幼い時か
ら不幸に見舞われ続けて来たのではないかと…」
・
・「昼から近隣の犬が奇妙な吠え方を繰り返していた」「…
淡い陽光は既に幼なさを過ぎ、…昼下がり、若い人を憑きも
のが狙っている…昼下がりの犬どもはそう…幾度となく…」
・「そして」
・「…逢魔…この黄昏時…御身大切とお思いなら…」「その
禍々しい矛先をこの古老に預からしてはもらえぬだろうか?
…朽ち往く身、何も惜しいものなど有りません。」
・…「古老の戯言を信じてもらえないだろうか。」「この事
態は禍々しさが破格です…複雑巨大。…おお社の先生でも…
きっと祓い切れない。…」「亀の甲より年の功…この命にか
けて…」… -23p
・…斑で徘徊の古老は切々と訴え続けた。…嶽のぼりで祓わ
れるはずもないと、有妃史澪からはワダ。と呼ばれていた復
古の新宮司―和田能直は思い始めていた。…あたりの空気は
重く硬かった…その古老は話し続けた。…
・
・
・…@時間は経っていたのだった。…あのときから…
・…
・
・
・
・
・―そんな和田でも、中一であった時があった。
・
・
・
・
・
・…戸波二中 正式呼称―中津区立厨丹中学、二人が通って
いた中学である。
・有妃史澪は三年になっても部長を降りず文芸部に執着した
ことがあった。文化祭の出展テーマが煮詰まりつつあった頃
でもあった、何かが硬く重かった… 「共産主義なるものは
要るのか?」も併行されていた副題とも言える議論であった、
当文芸部は部長―有妃史澪の個人的力量で哲学研究会・現代
思想研究会にも拡張していた。日本の哲学、例えば西田幾多
郎は欧州では文学として扱われた、西田が二律背反を端っか
ら無視した所為もあった、それだけ西田が偉大だった所為な
のである。他にも、史澪の世界観の中では小林秀雄の著作は
文体は文学、内実は哲学であったが、世間のモノサシは美学
者であった。欧州のモノサシで哲学といえば、ギリシャ哲学
あるいは、キリスト教神学が組み込まれていないと「哲学で
はない」と、キッチリ排除されてた。このくには、大国や西
洋の様な破壊が全くないわけではないが、母系原理は積み重
なる伝統の国。…史澪は日本語の融通無碍、事物の有り様を
陰りなく・曇りなく、しかも言葉一つ一つに命がある形神名
―カタカムナ…史澪の思念そのものに誇りを持っていた。こ
れは史澪の祖父の誇りでもあった。 -24p
・…史澪はこの風土に根付かず赤潮の様に遠方から漂流して
くる中華文字も「進歩」と称し空爆されるアルファベットも
史澪の思念を紡ぐものではなかった。…にも拘わらず漂流言
語・空爆言語に絡め捕られて、日本の言葉としてドヤ顔でま
かり通っている現代思想・世界標準がこの上なく悍ましく醜
く見え、史澪は共存が出来なければ死んでしまいたくなるく
らい嫌だった。これも史澪はどうしても払拭することが出来
なかった。
・…それにもう一つ初等の算数は好きだった、算数の計算は
お筆先のようで不思議なくらい面白かった鉛筆がするすると
動くのである。半分、自動機械になるかのような快感が走っ
ていたのだった、これは算数を酷く嫌がる和田に指摘され気
が付いた…そうなのだが…、少しずつ算数から数学に進化し
てゆくにつれて、文学や文系教科が豊潤に抱えもつ“行間
”が削除されてゆくのを不快に思っていた…後に数学の主題
は『行間を排除すること』と知り史澪は得体の知れない罪悪
感から自由になるのであるが当時は不快にしか思わなかっ
た。…数字から行間を剥ぎ取る進化をしつつ『0と自然数1』
の存在証明を端折り「2から9まで」も削除してゆくあの特
殊な数学を知るや不快を通り越して憤慨を感じていた、同時
に二つの疑問も湧いてでていた、…一つ、行間を排除した科
学技術であるのにその主産物であるコンピュータに「コンピ
ュータ・ウイルス」のようのものが寄生してしまうこと。…
もう一つは、「0と1」で構成される科学なのに「主体的と
か主体性」が外在化してしまうこと、まるで摂理神に自我ヰ
明け渡してしまうような…別の言い方では「コンピュータ自
体にプログラムを立ち上げる因子・起動スイッチを“ON”
にする“意志”が消えてしまっている」…生命を抽象化して
ゆく過程で生命の中核とも言うべき主体性が消えてゆく不思
議…におぼろげながら気付いていた、また此所で考え続ける
ことも切りがないことも中三ながら知っていた。…行間を取
込んでゆく仮名の「あいうえお…」とは真逆なのを対比させ
ながら不思議に思っているである…。
・…史澪は言葉少なく爽やかな微笑みを絶やさない中三生で
あったが、書く内容は強くしなやかで…強かなばかりでなく
美しかった…史澪がかいた漢字を全てひら仮名に変えても言
いたいことはブレなかった。…話せば華麗で雄弁…それにど
れも土の匂いがした。 -25p
・幼い中一の和田は何故なのか分からないまま、ふっくら愛
くるしい有妃史澪の魅力に掬い取られていった。小学校の和
田は国語の論説や読解で特異な力があったが、担任に気に入
られるでもなく、また国語でもそれ以外の領域を含め、他の
教科も出来が芳しくもなかった所為で、さらに和田は憤慨す
ると手に負えなくなるのもあって教師からは敬遠されてい
た。楽そうに見えた文芸部は部員はいたが、史澪が抱えてい
る本音を見抜けたのは酷く限られていて、男は和田能直だけ
であった、中一のちび…入学当時の和田と背に高い大人びた
有妃とでは、まるで母と子のような対比であった。不出来で
小生意気で衝動的なクソガキを史澪は我が子の様に可愛が
り、時に半ば、異性として柔んわりとからかったりもし…愛
くるしい有妃が別の顔を見せたりもした。
・…ともかく、晩秋の文化祭の展示テーマの副題「共産主義
なるものは要るのか?」はその本義からやや外れたところで
多くの文芸部員が湧いた、中坊たちにとって騒ぐネタさえあ
ればそれはそれで良かったのである。
・
・
・
・
・―徘徊・微睡み
・
・
・
・
・ -26p
・…件の老人は自分の住所・電話番号・帰り道は答えられて
いたが…どれも実行したくなさそうで、電話を代行するとそ
の日は留守電に繋がった。老人は「帰りは大丈夫。」と言う。
どんな助言も指示も「大丈夫」…あるいは極めて現実表層的
回答が還ってきた、この古老の現役は競いの勝者そして孤高
の要人…それは認めているようだった、だが『孤独』である
ことは摂理神のように認識しているそぶりもなかった。…そ
の古老、十分もしないうちに社務所の広間に土足で座ってい
た。…とうとう本当の迷子になってしまった。…故、同居の
家族と連絡が付くまで、ゴトリガチャリする不審なものと一
緒に駐在所で預かってもらうことにした。
・
・
・…和田能直は鼻が利く方だった。…
・
・…以来…、老人の姿は和田神社近辺では見ることがなくな
った。…以降しばらく有妃は自分のにおい…史澪にしか分か
らない…体調の不良から来るかもしれないであろう―自己臭
みたいな?…あるいは警戒フェロモン…言葉だけが浮く警戒
の出所のない…あるいは無臭…を気にして、…と言っても平
常時…危機も迫ってこないときでも、…両価―実体のない自
己臭―実体のない警戒源が実体臭を帯びたりする―両価、あ
るいは両価性。ま、匂いというのそんなもの“でも”あって
…。…史澪には香水の香りもも汗腺も体臭らしいものも全く
なかった、…あれだけ冷や汗をかいても…、風のある日でも
山風も海風も和田神社に流れても社務所の二階には入ってこ
なかった、荒れた日でも社務所の二階はいたって穏やかだっ
た。
・そういえば、ワケもなく犬に吠えられていたのを思い出し
ていた。…そんな不可思議な事情とも相まって…彼女―有妃
史澪は二階の能直の隣室に寝泊まりする事になったのもかも
しれない。…それでも実体のない自己臭をしきりに気にして
いた。…その度に時刻が揺らいだような気がした…。
・
・ …マサカ!…あの時も…あの時から…
・
・…誰の言葉だろう…「代々一人っ子なの、兄弟がいると二
人共々で潰し合う軍旗が二つは変でしょ…内の家業が背負っ
ているものってとてつもなく重いの、だから」「先輩?お家
の血筋、途切れて良いのですか?」「一人だと途切れまいと
する勢力も一人に集中する。それに祟る家系だからいいんじ
ゃない…キミの家もそこに怯んだりしないでしょ?」「みん
なに忌み嫌わせて、迫害させる、自分の手は汚さない…洋モ
ノに専売よ憑依は」
・ -27p
・…干磯で有妃史澪いえ爬虫類にであう直前、和田はじりじ
り照りつける陽射しの下で幾つかの夢を反芻していた。…反
芻させられていたのかもしれない、その内の、とある夢は…
能直自身が麻酔下で頭部をバラバラにされる、開閉し呼気吐
くている声帯・ナマコのように蠢く咽頭・不安げにカブリを振
る舌…それを自分の目が見ている…ゾォ~ッ…とするゆめ、
ユメ、夢の反芻…
・
・
・@時間は経っていたのかもしれない。…あのときから…
・
・
・
・
・…校舎内を何かめまぐるしく動いていた、まるで徘徊の古
老と“かぶる”かの様に…
・
・
・…二中のなかで、音速で危機の匂いが広まった…偶々ある
いは既に、…次の瞬間、和田は匂いの発生源近くにいた、有
妃の息が凍りついていた腕を絞られ何処かにつれて行かれよ
うとしていた。
・
・
・「ナゼだ!」
・
・
・「…展示停止だと。正統な学校行事だぞ、…文芸部解散だ
とこの日に。」
・「バッ、バ、カヤロ~、み、ミオネエ~ちゃ…部長を殺す
気か、女子だぞ!」…普段の硬い体ではなかった、頭もココ
ロも体も軽く関節もしなやかだった。「B-h ァカ。」「はなれ
ろ!ァカ!」、階段の踊り場にいた三年の学年主任に和田は
飛びつき跳んだ。本気で摑みかかった。主任の衝動は和田に
向かい殴り合いとなった。運痴の和田は大きくなったとは言
え決着はすぐについた。…能直の吐いた言葉の何かで、三年
の学年主任呑門は一時我を忘れた。 -28p
・…隙、踊り場から離れ、階下に降りた有妃史澪を学年主任
は追った。…「離れろ!」顔は赤く腫れ上がり血塗れの鼻垂
れ~ナゼナゼ暴主は近くにあった鞄を投げた。…止まらない
鼻血坊主の大暴れで、階段は紅葉の谷…急峻な谷から崩れ落
ちるように鞄の中身は散乱しそれぞれの回転と加速度を持っ
た本幾冊も踊り場から階段下の沢に散った。散乱した本は階
段の天井、壁、ステップに弾かれ再び下手の沢に集まった、
それぞれの運動量・回転を持った本の角々が学年主任に当た
った。…本が飛び散った空でも重たい鞄は史澪の左胸に当た
っていた。…二人の動きは止まったが、史澪は意識を失って
その場で崩れた。
・
・“ヤッタぞ!”和田能直は心地よい疲労感で脱力・寝てし
まっていた。
・有妃史澪にとっては、部誌の発行に漕ぎ着けた安堵と疲労
…
・
・
・
・…
・…能直中一・有妃は中三の…文化祭でのことをオレタチは
夢で見返していた。
・
・
・
・
・…また微睡んだ…“さて、昨日の夢見で微睡んだのか?干
磯で今微睡んだのか?”…そのどちらでもなくまたそのどち
らでもある?…
・
・
・
・
・…
・…「外科のオジイチャン先生がネ、」 -29p
・『…この血圧の発作は何かから逃げる・隠れる…みたいな
…もちろん悪い意味などないですよ。そんなために起きてい
ることもある…とも思ったりします。意識もなくなってしま
うくらい脳血管には大きなダメージがあるし、繰り返される
たびに生命のリスク・脳のダメージは戻らなくなります…ナ
ニモノカからの回避のためだったら他の方法を懸命に探して
ください…その方法は医学に限定せず色んなとこと…取り敢
えずじいさんの医者のお仕事の境界領域辺りにあるかもしれ
ませんね…、ではお大事に。』
・「…てね。先生が」 「だからね、左胸の赤痣を強く刺激
して性ホルモンと血圧ホルモンでヤツラの追跡や行方・気配
を眩ます以外の方法がね…、どうしても必要になったの…」
…「策があるんだヨ…今は内緒。…」
・
・
・…
・@時間は経っていたのかもしれない。…あのときから…
・
・
・
・
・…「そうなんだよ、ワダ。」…中三の先輩が懐かしそうに
“オレタチ”に語っていた。
・…
・
・
・
・
・…「…で、“キミ”にはどんな策があるの?イヌごっこ。」
…この人、恐らく有妃史澪だろう…根拠…そんなのナイって。
・…「…“キミタチ?”…かな?」
・ -30p
・…オレタチは「きっと…莫迦かな…何故?繰り返すバカ」
…「莫迦だから鼻が利く・友が判る、莫迦だから鼻が利くか
ら守護者・庇護者が判る…莫迦だから翻ることは無い…根拠
…そんなのナイと思う。これは…当たり前か。」…「…『友
が裏切る?』…それはない=裏切ったように見えるだけ。…
友が仕組んだ罠に“嵌まってやろうじゃないか!”」「…他
人の…フェロモンが…特に警戒フェロモンで解る…うわずっ
た声高で胡散臭い腹から漏れ出るモノ匂い。=友とは無縁の
もの…友はローテンションで運鈍根、汗臭いかもしれないが
…胡散臭くない。」
・
・…「ところで“キミタチ”…何処にいて…」「そしてその
何処は何からの襲来に備えているの?」…懐かしく麗しい人
の記憶は“オレタチ”に語っていた…自問自答?対話型の言
語性幻覚?…恐らく、夢の範疇の中には違いないが…とある
コミニケーション。
・
・
・
・…夢?…の中で夢を見ていた…のだろう…か。
・…それとも死んで冥府の道すがら、…夢でも見て?
・…イヤ変だ。チベット仏教では必ずそれまでの業が問われ
る悪夢…よくはないが~悪くもない…
・
・
・
・
・…
・@時間は経っていたのかもしれない。…あのときから…
・
・
・
・
・…「そうだ!オレは…」
・…
・…オレは静かな病室のベッドに寝かされていた、そして沢
山の管に繋がれて人工呼吸器がシューゥ…。…シューゥ。…
と稼働していた、喉元から・治療室に響いた音から…。その
場には数名、護るべき庇護者がいた…あるいはもしかして…
人はいたが護ってくれる守護者はそこには居なかったのかも
しれない…まるで遭難の際、抱き止めてくれている人に言い
かけた言葉が反復する…もしかして裏返っての反復?…オレ
“?ここにいてもいいのか?”
・
・
・ -31p
・―両極を揺らいだ
・―きっと両価性と言うのかもしれない…
・―時間がバラバラにされ停止する底知れぬ嫌悪・不快。
・―その揺らぎは自身から発するのか…
・―外から被ったものなのかも分からなかった。
・
・
・
・…その揺らぎの所為で、時は少し経っていた。…治療チー
ムが面会者たちを退室させ、大がかりな処置・装置が病室に
持ち込まれた―当たり前の様に。…そのうえ、そのチームは
不自然に笑っていた。…奇妙に・とても不自然に…まるで断
片・パーツのみが有用かのよう…命の繋がりを断とうとして
いる。
・
・…きっと“オレタチ”は…『ふざけんな!』…と、ナゼカ
声が出なかった。…それで目が覚めた。
・
・そのはずだった
・…
・
・…そんな…夢を干磯の浜で反芻していた?。
・
・…“俺たち…オレタチ? ”「えぇっ」?“ナゼ?”…
・
・…
・@時間は経っていたのかもしれない。…あのときから…
・
・
・
・―そう、これは、きっと昨日の夢だが、前にもあったかも
しれない -32p
・―干磯には幾つもの古い石碑がある角が削げて丸みの、干
磯の石碑等は中津区のビルに何処か似ていた様だが…石碑と
ビル…
・―何処にも繋がりが見えない…何かを見失った精霊…まる
で幽霊たちが…
・―只ただ、見守るかのように…黙示しているかの様に…思
念しているかのように…黙して…
・
・…何なのだ!いつの事なのだ!時間も記憶も自我もバラバ
ラにされたような不快!
・
・
・…だが…ここで、誰かが優しく、口の周りに手を添えて「ヤ
ッホー」と叫んだ…あるいは能直がそうしたくなる衝動が内
在していた。
・
・
・…それでも石碑の思念たちはてんでに…、バラバラに伸び
る中津のビルのように、
・…若い二人を見守っている。
・…中津の稲荷橋から…見えている…袂の…
・…眺望出来る戸波のビル街…建物たちが、石碑の様…脈絡、
無く…呟く…。
・…何処で・どの順番で見たのかも判らない。
・…夢。…あるいはリアルな過去の幻影?記憶?…フラッシ
ュバック…?
・…守護者らしい物言い…生まれ育った戸波の建物に…憑依
した霊…歪んだ窓ガラスの反射?隣火?(もの静かな影?)
単純な共鳴?…そう、誰かが、呟く…。幸いなのだろうか?
分厚い日常~常魔法の連携とでも謂うべき強かな日常がやん
わり微かに“ココニイテモイイ!”と、ビルの窓-異界のた
わんだ窓辺には~病巣臭が漂っている…向こうは異世界戻れ
ない。…アッセ…“焦らなぃ…息を吐き切れ。”…呟きの中
に日常雑音が紛れ込む。
・…夢?…どこかの病室で微睡み…回廊でも巡っている?
・
・…また、
・…再び、誰かが優しく口の周りに手を添え「ヤッホー」と
叫んだ。…これが、反射共鳴すると…何処かがほっとする。
・
・
・…“イヌは虚仮、仮の姿…依り代ですよ。” -33p
・―色々・多種多様の声色がしだそう…と、するのがわかる
…匂いがざわつく…
・…“姫神が降りて妹背になるための虚の陰・陰の低調がよ
り安全なのです、”
・…“ツレナイ冷ややかな姫を、受け容れて。聞こえるでし
ょ谺の声…子猫の声…個展の会場から東に走る”
・
・
・…“東?”…“個展?”…“そう。友達がモデルになって
いるCGの個展…”…“その会場から東に向かって子猫が走
る…”
・
・
・「…貴方の愛と姫の愛の極まりが濃密に同期する場合は、
アチラの宗主の思い通り、」
・―硬く言い切る声だ…
・「…アチラ…摂理が内藏している破滅の論理に姫が取りこ
まれてしまい、…」
・…「…それだけで世界が終わってしまう。…孤高が破綻す
るのです。」
・
・
・―そうだ、摂理の命は孤高…
・
・
・…孤高…(反芻しつつ能直はフト想った…)
・…「摂理の命は孤高。」
・…“守って…あるいは見守って…でないと姫は…”
・
・…“あのう…私、脆弱ビルと揶揄されてきましたが…”
・…“過去の震災でも終ぞ倒壊しなかったのですぞ…”
・
・…「競う敵がいないと途端に脆く瓦解し出す…と言うこと
ですね?。」
・…“いいえちがいます、破滅の核…姫がいなかった…だか
ら倒壊しなかった。” -34p
・…「競う敵がいないと途端に脆く瓦解し出す…と言うこと
ですね?。」
・…“いいえちがいます、破滅の核…姫がいなかった…だか
ら倒壊しなかった。”
・…「競う敵がいないと途端に脆く瓦解し出す…と言うこと
ですね?。」
・…“いいえちがいます、破滅の核…姫がいなかった…だか
ら倒壊しなかった。”
・
・
・―何だ、両極を繰り返すのか…
・
・
・…“ところで、その姫…は誰ですか?”
・…“姫は宗主の敵…イヌは虚仮・依り代・ネコ、敵がいな
くたって…”
・…
・“結界が壊れなければ、摂理の宗主霊は穢土に咲く蓮華の
祝福を受け…”
・“解脱し悟れます。…敵や姫がいなくたって…本当はいな
い方が良いのです。”
・
・
・・―なんの結界なのだ?
・
・
・“…切羽詰まっているのは向こう、永年、社どうしの繋が
りが… ”
・“積み重ねてきたことではないですか …イヌを奪取して
結界で守らせるのです。”
・
・
・―なんだい?イヌって…
・
・
・「宗主―全知全能とはいえ、嫉妬し続ける特殊な死神が前
身…」 -35p
・「私たちのケモノ・モモノケ態は、見た目のいかがわしさ
に…」
・「摂理はきっと正確に目視出来ません、」
・「その察知も、そのココロも知り得ません。…孤高は贄で
仕上がり…」
・「そのいかがわしい贄で…崩壊を始めます。…独り立てる
ものに贄は要らない。」
・…“イヌとカイヌシがまさかの清浄精進~羞恥悦楽の両価
…”
・「その両価・両極は摂理にはわかり得ないず~っと果てな
く…」
・
・
・―何いってんだ?…。
・
・
・
・…皆…エコー…響き合い共鳴、「ヤッホー」は反復を繰り
返し~終いに「コ、コニ~イテ、モイイ~のぉ、だ~ぁ~ム
…」と聞こえる。果てからの声はもう片方の果てで翻って響
きの意味が付与される。~もしかして“ヤッホー”には”此
所に居ても善い!”が初めから含みおかれていた、嶽に…詣
でて…響かせるとは…そういうこと、町中の社の手拍も鈴鳴
も同じなのですょ。
・
・
・
・…“そろそろ結界が閉じます”…、
・@『…経ちました。時間です。』…誰かが言う…
・…“そろそろ夢が解けます。”
・…現に戻る…のです。現はきっと大変だと思いますが、道
には曇り一つありません。災難は只ただ祓えば良いのです。
・
・
・“冷ややかな愛を守り切ってきたからこそ…、”
・ -36p
・“誠の愛の糸口―イヌ、との関係を探しはじめても悪くな
いでしょ?”
・
・
・…戸波の建築中の施主社が倒産し、店子テナントの中の人
影やら…
・…古レンガの建物やら… …その中の隣火やら
・…黒く風化したコンクリ壁に憑いたものやら…
・…強化ガラスの微かな歪みで結んだ不思議な像やら…が。
・
・
・…川の水源と海の果てがであうところ…麓から~袂から聞
こえる…
・…遠き干磯…波音・潮風、そして淡い霞の向こうの幻…
・…両価…その極二つの果てを反復するもの…その周期が揺
らぐからこそカタチは現れる。
・
・…夢?夢様の体験は緩りとフェードアウトしていった。
・
・
・
・
・―遭難、初めてでなくその時も、その向こうが
・
・
・
・
・
・盛夏…、その児童公園は… -37p
・…戸波神社に隣接していた、当時の公園として異例の大き
さ・形の滑り台があった、大山滑りとか呼ばれていてスコリ
オ型の火山かセントラルピークがなく偏心した隕石孔のよう
な摺鉢の内面全体が滑り台となっていた。偏心した摺鉢山の
北西側は見ようによって陵のようにも見えた。密集した区の
中心部にある児童公園としては規模が大きく、その他の遊具
…時計回りに、砂場が二種類・不整形の広場・トイレと水飲
み場・ゴンドラ・ブランコ・ジャングルジム・象の鼻型の滑
り台二つ、周囲は幅広く植栽の帯が覆った。帯は細かったが
ちょっとしたジャングルであった。公開当時は区内・区外か
ら大勢の児童が集まって黒山と化していた…。史澪や能直が
遊んでいた頃は旧式の児童公園を改築する話があったようだ
が、それでも遊びに来る児童はかなり多かった。
・その年の盛夏は植栽の土のありの巣の活動が活発であっ
た。史澪と能直だけは土や巣の変化を誰に教えられるでもな
く知っていた―異変だ。巣の口の周囲が堤防のように厚く高
く盛り上がっていた―サインだ。蟻の中には能直に向かって
くるのもあった、史澪も感じていたが、虫好き属性のある能
直と虫との反応は異様であった。
・当時を振り返っても虫好き属性があったが多少の関心があ
った程度…マニアではない能直がその時だけ不思議に感じる
ものがあった。
・この時期…、川魚や野菜の土・泥の香りが起ち上がる、芳
しく味を添える。
・土や泥は能直が大好きであった…そればかりか…
・能直だけ蜂や虻にのその夏は何度となく刺された…こう言
うのを虫の知らせとは言わないが、…何か予兆であるのは分
かったが、さて…何の予兆かについてか?、史澪と能直は格
段の頓着はしなかった。
・…この国は古来より黒潮の影響で氷河期も比較的暖かく氷
河も育たなかったことが分厚い積層土壌やら湖沼の泥やらな
んやらの解析するまでもなく、多彩に変容する四季を持ち住
みよいところとされている国である。…それは理屈ではなく
直に肌で感じることであったが、…「住みよい国」・「すみ
のえ」と言い習わされてきたことと、皮膚で感じる実感とは
なんとも言えない隔たりがあった。この年の盛夏に感じた虫
の異常な行動と「住みよい国」との隔たりであった。
・…「スミヨシノクニ」には何かある。 -38p
・風呂上がり二人は…いつだったか、理科の図鑑を見て史澪
と能直は一緒のことを考えていた、若干の違いはあったが祖
父母たちから聞かされていた秘伝の神話、誰もいなくなった
この国に漂着した神が先住の翁と媼の神から譲って貰った土
地と「スミヨシノクニ」とか「スミノエ」の言の葉。…“い
つ ”・“誰が ”…は少しはっきりした、でも二人には譲っ
て貰った土地と言の葉との違いがあったが何処が・どう・ど
のように、そして何故…何に対しては靄がかかったままだっ
た。
・
・
・…虫たちが暗喩した盛夏が過ぎた。だが何度目かの波乱は
きっとくる…そう思い込むことも疑心に溢れることも許され
ていたようだった…恐らく来るだろうし疑うことも準備した
りあれこれ妄想とまでいかなくても身構えたり備えたり充分
できた。
・
・
・…啓示されてきた初めての波乱。…それは、疑うことも許
されない摂理の神託とは違っていた…一切ゆとりのない啓示
…。と、虫の知らせとは決定的に違っていた。能直にへばり
ついた汚れを落としていた残像が史澪の脳裏が過ぎった…フ
ッ…っとする息継ぎが長かった、釈然としない不思議な顔も
していた湯上がりの史澪を…能直はじっと見ていた。
・
・
・
・
・…
・進歩や競いの発生は、生物の本義=多様性が静かに退縮し
てゆき…その結果がめぐり巡る、多様でなくなった実数的“
数多”が殆ど一つの頂きに集中する、…競いのルートはキッ
トそんなもんだろう
・…晩秋の合同林間学校のハイキングで六年の史澪と五年の
和田はペアーとなった。…命が何かに備えての退縮…それも
めぐり合わせだったのかもしれない…。
・
・…区立小学校の進学校への改革を廻り地元が校内の論争に
巻き込まれたのであった、地元の代表格である有妃ノ社は微
妙な立場となり、子どもといえど地元古参臭・危険臭のする
有妃史澪も近寄りがたい存在となっていた。
・
・…だからハイキングのペアーになってしまった。
・ -39p
・…自然発生?…まさか!。摂理のテーゼ-(競え)産めよ
・増えよ・地に満てよ…実数的数多…満ちた後は…。そして
その直観的終末に誰も抗えない、『初等教育は寺子屋に非
ず。』…壊しつ・競いつ…その終末をイメージこそできるが
誰も抗えない。…抗えなかった。…だれが言い出したかハッ
キリしている…間違いなく学外。…ナゼなら…教育関係の人
間は…少なくとも二中の人間ではない…江戸時代の識字率が
明るみの成りつつあった、識字率を上げたのは、寺子屋…。
社会科主任の深谷先生が指導要領を無視して二中の文化に定
着させた…ダカラ学外。…気がつきにくく抗うことが難しい
…終末臭をプンプンさせた巨きな力があった。大した知識も
なく幼い能直と史澪の嗅覚は“終末臭を嗅ぎ分けた。”…自
身で過去=“寺子屋”を蔑ろにし自壊に向かっている…『世
も末…』それで市井はなびく、胡散臭い黒魔術。…反意は聖
敵…と。…“ナゼ?”を考えると実時間が滞る…勉強時間が
足りなくなる、“なれの果て=エリート”を含めた秀才たち
はこの自壊には触れない…ダカラ『…寺子屋に非ず』。…が
罷り通ってしまう。革新主義・社会主義・共産主義からも同
じ匂いが発つ、…自身以外古くなる~古くさせてしまう…頂
点を目指し競い・排除に奮い立つ-勝ちきったときは孤独…
ヒトリボッチさえ認識できない…きっと有妃ノ社もそう診立
てのことだろう…とも、『寺子屋に非ず』に漂う自壊臭も手
伝って…そう考え、…イイエ。幼い小さな嗅脳で能直は嗅い
だ。…嗅脳が知らせてくれていた。
・
・…だから静かに抗っていた有妃ノ社の娘、史澪は近寄りが
たかった。…異様なほど美形でもあったからどことなく疎ま
れた。…史澪が男児だったら…既に虐め殺されていたかもし
れない…能直は有妃の庇護下にあるようなもので虐められた
り、体の硬い運痴や理数の無能をからかわれていたが…“生
徒に”白けた傍観者はいなかった。
・…
・
・
:◎校長・古株教諭・地元小売商店・町工場…
=:Vs:= -40p
:◎全学年主任連合・新興マンション父兄・大型量販店・ビ
ルテナント会社…無勢だったが論調は変わりゆく時代の追い
風で、圧倒的財力差は無関係ではなかった。
・
・
…次巻…
⑤遭難、初めてではなく、その向こうが…40pからの続きです。




