1-3 街中にて
1-3 街中にて
ミノの街は河を使った水運と、都市間道路の中でも北と南から等距離にある立地のためモノや人が集まる。
街の敷地規模の割に栄えているというのが訪れた人の印象だ。
広場で保存のきく食料や、細々したものを買い足して行く。術や現地調達も可能ではあるが準備は大事だ。
広場を散策しながら準備を進め、街の西側の運河沿いにある雑貨屋へと向かう。ここは師匠が街の中で唯一好んで話に来る場所だ。
なんでも店主のエリーさんは昔馴染みだそうで。
「失礼しまーす」
そう言いながらドアを開けると奥から人の気配が移動してくる。
「おーやっぱり来たか」
妙齢でスタイルの良い女性であるエリーさんが笑いながらカウンターへと出てくる。
「笑いすぎですよ」
「あいつの言う通りすぎてな。時間までぴったり」
師匠の勘の良さはさすがである。
「まぁまぁ怒るなよケート。んで、なんか伝言が無いか聞きに来たんでしょ?」
「行き先の手がかりなどあればと思ったんですが」
ダメ元で聞いてみる。言っていたとしても私に教える義理もないが何かしらのヒントでももらえれば御の字だ。
「一言伝えておいてくれってのを言付かってるよ。
私は世界の真理を探究しに行くとのことだ」
そう言うと椅子に座ってこちらをニヤニヤと見つめる。
「世界の真理ですか…」
ふむ、と考え込む。師匠のことだから本気で見つからないところへと行ったのであろうと思う。それに加えて世界の真理ときた。
「…とりあえずダンジョンをしらみ潰しに探すしかないか」
世界の真理とはと問われたら、間違いなくダンジョンの仕組みを解明することと師匠ならば答えるであろう。師匠は異常にダンジョンの仕組みに関して詳しかったし、ダンジョンの研究はライフワークと言っていた。
「あーあの子とダンジョンは曰くがあるからねぇ」
エリーさんが受付の下でゴソゴソやりながらそう言ってくる。
「何それ知らないんですけど」
ダンジョン好きなんだなぁ師匠くらいにしか思ってなかった弟子涙目。
「まー詳しくは本人に聞いてみな?ほれ、あとこれ私とエメラダからの卒業祝いだよ」
そう言うとエリーさんは重厚な装飾が施された箱を受付に置いた。
「卒業してないので受け取れませんよ?」
小首を傾げて言ってみる。
「あほ。いいから受け取れ。それを使えないならそもそもエメラダを追いかけられんよ」
そう言われては開けないわけにもいかず。分厚い箱を開くと、そこには真っ黒い宝石を抱き込んだ金色に輝く杖が納められていた。
「…やっばいもんですねこれ」
「わかるかい?作るのに苦労したよー2人でさー」
そう言うとエリーさんはゲラゲラ笑い出した。
「…持ちます」
「死ぬなよ」
いきなりの真顔はやめて欲しいと思いつつその杖を持ち上げた。
そして私は自分の手元も見えない闇の中に放り込まれた。




