犬又になりたい!
新たな世界へ⑦
そして、保護施設の飼い犬ラブラドールの太郎が出ていくのと入れ替わりにリーダーの男と何人かの若い男女がやって来た。
「おお!みんなかわい子ちゃんになったなあ。さあ、名前つけようか。」
リーダーの男の発声で人間たちはどんどん保護されてきた犬達に名前をつけて行った。
リルおばさんの前に立ったリーダーはおばさんを見るなり顔を綻ばせた。
「こんなにカワイイ目をしてたんだね。じゃあこの子は目、め、うーん、メグちゃんはどう?」
「目がかわいいからメグちゃんね。」
プッと笑いながら若い女がリルおばさんのいるケージの上のプレートにメグと書き入れた。
次はミルクティー色のチワワの番。身を固くして上目遣いで人間を見ていたミルクティー色のチワワを見てリーダーはうーんと腕組みした。
「この子も茶色かあ。さっきからチャがつく名前いっぱいつけたからなあ。ゴメン、思いつかんわ。チワワだからチーちゃんでええかな。」
「うわー、安直ですね!」
人間たちから笑いが漏れた。ミルクティー色のチワワはこれからはチーちゃんと呼ばれることになった。
「なんか、みんないい加減に名前つけてるけど、アタシの名前は特にひどくない?」
チーはむくれた。
人間たちの後ろについてきていた太郎が笑いを噛み殺しながらそんなチーを横目に通り過ぎて行った。
「たくさんの犬猫が来るから名前のネタも尽きるって、なあチワワのチーちゃん。」
太郎の言葉にチーはムッとして、唸り声を上げた。そんなチーを見て、おお怖い!と言いながら太郎は人間たちに向かって小走りで行った。人間に追いついた太郎は一番後ろにいた若い男に甘え、頭を優しく撫でてもらった。
「うらやましいだろ?お前も撫でてもらえば?気持ちいいぞ。」
太郎はフフンと鼻先で笑った。チーは太郎も人間も嫌いになった。