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犬又になりたい!  作者: 石橋渡
めざせ犬又
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犬又になりたい!

めざせ犬又⑥

日もかなり傾いた。少し眠ってしまったようだ。薄く目を開けるとこの前やって来たキジ猫が目の前に座っていた。

「なんだ、お前か。」

また目を閉じようとするとキジ猫が話しかけてきた。

「見てたわよ。アンタ、あの小さな犬に言い負かされてたじゃない。どうしたのよ?」

バブは言いたくないと顔を背けたが、キジ猫はしつこく肩をツンツン。仕方なくバブは顔を上げ、おすわりをした。

「久しぶりにお母さんがいっぱい話しかけてくれて嬉しかったんだよ。だからアイツをからかってやろうと思ったんだけどさ、アイツの毛並みはツヤツヤになってた。それにブサイクだけど手作りの服を着せてもらってた。」

「アンタより可愛がられてたってことね。」

バブは黙って悲しそうな目をした。

「ウチはお父さんも遠いところで働いてて、めったに帰って来ないし、子供達は家から出ていってしまってさ、お母さんは淋しくなってオレを家族にしてくれたんだ。だからお母さん、バブ、バブっていつも呼んで、頭なでて、頬ずりして…」

バブが一生懸命キジ猫に話をしているところへベビーカーを押した咲子が帰ってきた。

「やだ、アンタったら野良猫なんかと仲良くして。ノミや病気もらってんじゃないの?汚いったらありゃしない!」

咲子は汚らしいものを見る目つきでバブとキジ猫を一瞥した。

「蒼汰、ババチイね。」

と蒼汰に声をかけ、咲子はピシャリと玄関を閉めた。



「なんなの、あの女!このアタシがノミや病気なんて持ってるわけないでしょ!アンタも言ってやって…」

キジ猫が目を三角にしてバブの方を振り向いた。バブは悔しげに玄関をにらんでいた。

「アンタ、もうやるしかないんじゃない?お母さんを取り戻したいんでしょ。」

キジ猫はささやくと塀に飛び乗り、どこかへ行ってしまった。

やるしかない。

やるしかない。

バブの頭にこの言葉がグルグルとまわった。


次の日は休日。実家に泊まった咲子は蒼汰を連れて買い物に出ようと、ベビーカーを押しながら歩き始めた。

「今日はいい天気だね。蒼汰、あっちにお花が咲いてるよ。」

咲子は道すがら近所の庭に咲く色とりどりの美しい花を蒼汰に見せてやっていた。蒼汰も鮮やかに咲く花に手を伸ばそうとしていた。


「あれ?咲子ちゃん?」

名前を呼ばれて咲子が頭を上げた。

「周太郎君!」

チーを散歩させている周太郎がひょっこり四つ角から顔を出した。周太郎は手を振りながら咲子の前にやって来た。

「咲子ちゃん元気?この子が蒼汰君?どう子育ては?」

「もう大変。だからこっちに越して来てからは、よく実家に帰ってんの。」

「おばさんと仲直りできて、よかったじゃん。」

「というか、一時休戦って感じかな。」

幼馴染の2人がおしゃべりに花を咲かせた。

「ママ、ワンワン。」

チーはベビーカーの蒼汰が気になるが蒼汰もチーが気になるようで蒼汰が手を伸ばしてきた。

「アンタ、ちょっと触らないでよ。」

怒りはしないもののチーはムッとして体をベビーカーから少し離した。

「あ、ワンワン!」

チーを触りたい蒼汰は咲子の方を見るが咲子はおしゃべりに夢中。蒼汰をチーに向き直るとまた手を伸ばしてきた。




チーの散歩にコッソリとついてきていたアイはそれを見ていた。

あらあら、いい感じじゃない。

アイはヒラリと身を翻すとバブのところへ駆け出した。


目の前にあのキジ猫が現れたのに気がついたバブはフンと鼻を鳴らすと一瞬もたげた頭を下げ、ゴロリと寝ようとした。

「アンタ、今がチャンスよ!」

「お前、何言ってんの?意味わかんね。」

「蒼汰と咲子があんたのお母さん無しで今、この先の道端でおしゃべりしてるの。おしゃべりに夢中で、蒼汰がベビーカーから身を乗り出しても気がついてないのよ。」

「?」

「バカね、今なら蒼汰にお灸をすえられるでしょ。一発かましてやんなさいよ!」

「!!」

バブは目を真ん丸にした。そしてアイは猫又の力でバブをつなぐ金具を外してやった。その途端、バブはアイに振り向くことなく、駆け出した。

「蒼汰め、どこへ行った?」

門を出て左右を見ると、すぐ咲子の姿を遠くに見つけた。バブは全力で駆け出した。

思い知らせてやる!!

駆け出すとどんどん怒りが満ちてくる。もう脅かしてやろうなんて生ぬるい考えはバブの頭から消し飛んだ。



おしゃべりに夢中になっていた周太郎はふと咲子の後ろに駆けて来る犬の姿を見た。大型犬が一心にこっちに駆けて来る。

「なんだ!?」

周太郎の叫び声に咲子も驚き、後ろを振り返った。

「バブ!」

口からよだれを垂らし、その目に野生をむき出しにしたバブの姿に咲子も周太郎も固まってしまった。

「あ〜、あ〜」

何も知らない蒼汰がチーを触ろうとベビーカーから乗り出していた。

「そ、蒼汰!」

我に返った咲子がベビーカーから蒼汰を抱きかかえようとするが震える手でなかなかストッパーが外せない。周太郎も手伝うが焦った上に慣れないせいか蒼汰の足が引っかかり、外せない。

間に合わない!

周太郎はバブに背を向け、咲子と蒼汰を抱えこんだ。

踏み込んだバブは大きく飛び上がり、蒼汰達に飛びかかろうとした。



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