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犬又になりたい!  作者: 石橋渡
めざせ犬又
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犬又になりたい!

めざせ犬又➀


 最近、敏太郎はリハビリにと朝からデイサービスに出かける。重子が買い物に行ってしまうと鶴丸家の人間はいなくなる。敏太郎と重子が出かけるといつもアイは日がよく差し込むリビングの一角でゴロリとする。今朝は重子を追いかけるように飛んできた虫をアイが一発で仕留めたので、ご褒美にちゅーるんをもらった。

「お母さん、お買い物に行ってくるからね。アイちゃん、また悪い虫やっつけてね。じゃあ、お留守番よろしくね。」

いつものニャ~ンと返事をすることもなくアイは必死にちゅーるんを舐めまくった。今、アイの頭はちゅーるんのみ。一種、無我の境地ともいえる。そんな時、後から声が聞こえてきた。

「アイよ、ちゅーるんはそんなに旨いか?」

「当たり前でしょ!」

アイは振り返りもせず、一心になめ続けた。

「ほお、チーの指導を忘れるほどか?」

ハッとしたアイは後ろを振り返った。そこには口が耳の下まで裂けたエリアリーダーの猫又のタマが立っていた。タマは地域の野良猫を叩こうとした男を引っ掻いて撃退した、その帰りだった。タマ達、エリアリーダーは巡回して地域の猫を守っているのだった。

「ワタシが一仕事してる間にお前は何をしている?お前の初段は、その犬の面倒を見ることも入ってるんだぞ。」

「ははあ〜。ごもっともでございます。」

アイはタマにひれ伏した。

「お前が怠けていることは報告しておくからな。」

「あ、いや、それは…」

アイが上目遣いでタマに哀願したが、タマは一瞥すると部屋の隅にできたぼんやり光る猫又道へとサッサと行ってしまった。


「これはまずいことになったわ。」

しばし右前足で顔を洗ったアイはケージの中でうたた寝しているチーの前に座った。

「アンタ、なんか人間をやっつけるいいネタ無いの?

「ネタですか?なんにも思いつかないです。」

アイはウンウン唸って頭をひねるがなかなかいいアイデアは出ない。その姿を見てチーはささやいた。

「アイさん、夕方の散歩の時に探してみます。」

「じゃあアタシも行くわ。」

「大丈夫ですか?家猫は家から出してもらえないんじゃなかったでしたっけ?」

「あ!そうだった!」

やる気満々のアイに恐る恐るチーは声をかけるとアイは悔しそうに突っ伏した。


しかし、家の中にずっといたなら、ますますネタを見つけられるチャンスが減る、なくなってしまう。


そこでアイはふと思いついた。

あれをやるしかない。

アイはブツブツとつぶやいた。



「はーい、チーちゃん、お待たせね。」

重子はチーの首輪にリードを付けるとアスファルトの上にチーを置いた。

「さあ、お散歩行こうか。」

重子はいつものお散歩コースを歩き始めた。散歩コースは家の前の道からくねくねと家が立ち並ぶ道を抜けて川沿いに歩くもの。家々が立ち並ぶところは電柱ごとにどこかの犬がオシッコをかけているのでチーも匂いを確認し、自分もオシッコをかけるのに忙しい。チーがオシッコをかけるたびに重子は水をかけていく。こんな調子なのでなかなか進まない。はじめの頃は戸惑っていた重子も今ではチーのペースに慣れ、できるだけ付き合ってくれる。

こんな調子で歩いていると重子は気がついた。

あら?猫がついてきてる?

後ろを振り返るとアイに似た柄の猫が近くの家の前を歩いていた。重子は屈んで、その猫に話しかけた。

「あなたはうちのアイちゃんとおんなじ首輪してるし、柄も似てるわね。」

「どこ見てんの?お腹の縞が違うよ。それにアイちゃんの首輪はこんな安物じゃないだろ。」

重子がびっくりして見上げると周太郎がニヤニヤと笑っていた。


電柱にかけられたおしっこの匂いを必死に嗅いでいたチーは周太郎の声に後ろを振り向いた。

あれ?アイさんの匂いがする。

もしかしてあの猫…

猫は周太郎の言う通りお腹までずっと同じ縞の猫でアイに似ているものの微妙な顔立ちだった。

「似てない、似てない。アイちゃんはこんな鼻ぺちゃのブス猫じゃないよ。」

「ブスですって!失礼な!」

シャッー!

その猫は目を三角にして牙をむいて怒った。猫が周太郎を引っ掻こうと構えた。

「なんだよ。言葉がわかるの?ごめんね。じゃあコレ、お詫びにあげるよ。」

周太郎はリュックから食べかけのおやつソーセージを出した。

ソーセージ!

ソーセージ!

猫がソーセージに飛びついた。と同時にチーも飛びつこうとした。猫は素早くチーに猫パンチを食らわし、チーがびっくりした隙にまんまとソーセージをくわえて塀の上に飛び上がった。

「やるな、猫ちゃん。その食い意地はうちのアイちゃんといい勝負!」

このやり取りを見ていた周太郎と重子に誰かが声をかけてきた。

「おばさん!ご無沙汰してます。」


重子と周太郎が声の方を振り返るとベビーカーを押した若い女が手を振っていた。



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