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犬又になりたい!  作者: 石橋渡
鶴丸家
23/53

犬又になりたい!

鶴丸家③

重子はトヨコの膝の上でツンとしているパピヨンを見た。

「ん?パピヨン?この子、チワワですか?」

「チワワにしては大きいでしょ。繁殖用には体が大きい女の子がブリーダーの手元に残されるんですよ。ね、チーちゃん。」

トヨコに撫でられて膝の上でじっとしている大きなチワワは膝から落とされたチワワの1.5倍ぐらいの大きさ。重子の予想以上の大きさだが見た目はネットで見たのと同じ。普通のチワワよりはマズルが長めでなんとも重子好みの美犬。


重子が昔、実家で飼っていたチワワのオス権太郎はチーと同じぐらいの、チワワにしては大きい子だった。重子は思った。

大きいけど権太郎ぐらいじゃない。いけるいける。


じっとチーを見ている重子の様子がトヨコには重子が悩んでいるように見えた。

「鶴丸さんとお見合いする前に別の方とお見合いしましてね、チーちゃんがほとんど鳴かないのを気に入ったんですよ。だけど会いに来た方が今後も絶対鳴かないならいいけど、少しでも鳴くならウチはだめだって言い出されましてね。犬だから絶対鳴かないとは言えないんで破談になったんですよ。」

「絶対鳴かないって、どんなにおとなしい子でもそんなのムリですよね。」


自分同様チーのカワイイ顔に惹かれて引き取ろうと思ったものの、実際に会ってみてチーの大きさに、こんなのチワワじゃない!って思ったんだろうな。

重子には破談相手の考えが手にとるようにわかる。この話を聞いて重子は決めた。



「昔、実家で飼ってたチワワもチーちゃんぐらいの大きい子でした。トライアル、お願いします。」

重子の申し入れにトヨコは笑顔になった。

「じゃあ、トライアルはいつからにしましょうか?」

重子とトヨコはいつ重子の家にチーを連れて行くのか相談し始めた。チーは丸顔ののっぺりした顔の重子をチラリと見ると、またツンと向こうを向いた。

重子はチーが鶴丸家で暮らすのに必要なものをトヨコに教えてもらい、用意する期間を考えてトライアルの日程を決めた。


話がついた重子はチーに語りかけるように姿勢を低くした。

「チーちゃん、ウチに来てね。待ってるよ。」

今回はトライアルに進めてチーが少しホッとしたように重子には見えた。


その日の夜、父の敏太郎、夫の大輔や高校生の周太郎、小学生のみゆきを前に重子は宣言した。

「2週間後にチワワのチーちゃんが来ます。準備があるのでバタバタするけどよろしく。」

「重子、またチワワ飼うのかい。権太郎を思い出すよ。懐かしいねえ。」

「お、ママの犬がとうとう来るのか。ま、パパは面倒みないからママ、好きにしていいよ。」

「お母さん、マジでチワワが来るんだ。どんな子?うちのペット達と仲良くできるかなあ?うーわ、楽しみ!」

「ママ、チーちゃんはザビエルみたいにアタシの宝物持っていかない?大丈夫かなあ?」

「犬はフェレットと違ってあんなに騒がしくないからね。大丈夫よ。」

権太郎の思い出に浸る父と夫の生暖かい応援。先住ペット達の飼い主でチーが来るのをワクワクしている周太郎、いつもピンク好きなフェレットのザビエルと可愛い小物を取り合いになる不安げなみゆき。みんなを横目に重子は小鼻を膨らませてやる気満々だった。


 重子はルンルン気分で床についた。布団を被っているうちにあの日のことを思い出した。


 二年前、重子は高校受験を終えた周太郎と言い合いになった。


 合格発表の日、無事、第一志望校に合格した周太郎のパーティーが家で行われた。重子は唐揚げやピザ、寿司、エビフライ、サラダにケーキ等、周太郎の好物ばかりをテーブルに並べた。大輔もこの日は定時で上がり、急いで帰ってきた。

「周太郎、よく頑張ったなあ。おめでとう!」

敏太郎と大輔、重子はワイン、周太郎とみゆきはオレンジジュースで乾杯した。


「ありがとう。ホント、頑張った。しんどかったわ。」

周太郎は如何に受験が大変なのか語り始めた。重子は相槌を打ちながら、受験生を支える日々を思い出していた。ストレスを抱える周太郎の八つ当たりはしょっちゅう。成績が良くなかった時のフォローは本当に気を遣った。自宅近くの塾だったので食事休みに帰宅する周太郎のために連日、栄養バランスのいい食事を用意したこと。

いや、結構大変だった。

そういえばと先輩ママ友の言葉を思い出した。


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