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犬又になりたい!
新たな世界へ⑳
チーの様子にシロガネはチーから目線を外し、悲しげに遠くを見た。
「リルは診療所のベッドで今度こそ人間との穏やかな暮らしを夢見ていたよ。チーの次は本当は自分が行くつもりだったのに、残念だって。アタシにも人間と穏やかに暮らせたらいいんだけどと微笑んでた。リルを幸せにしてくれるんならアタシは人間を許すつもりだったよ。」
シロガネは静かに振り返った。
「アンタ、本気で犬又になる気まだある?」
「に、人間のせいでおばさんは幸せになれなかった。あのブリーダーのジジイのせいだ。せっかくこの施設で信用できる人間もいるんだって知ったけど、お家トレーニングでアタシ、寂しかった。人間なんて自分のことばっかり。ひどいよ!」
チーは決意を込めてシロガネの目をじっと見つめた。
「アタシ、犬又になりたいです。シロガネさん、よろしくお願いします。」
シロガネは深くうなずいてチーの気持ちを受けとめた。薄く笑ったシロガネは細い月を背にニヤリと笑った。
「フフ、いい返事だ。チー、待ってなよ。」
そう言うとフッと姿を消した。




