09 初めてのテイム
「やっちまった…あぁ…」
この男、失念していたのだ。
鷹と蛇は命懸けのやりとりをしていたのだ。勿論、その攻撃は致命の一撃。
程よく弱らせて、手懐けようなんて甘い考えはない。
「どうすっかなぁ、これ」
蛇公はボロボロの身体を引きずりながら近づいてくる。
その眼はまるで俺たちの勝利だ、と喜んでいるようで。
そのまっすぐな視線にやられてしまう。
「もう、お前にするか。意外と相性良かったし。これ以上相棒探しはしたくねぇ」
明らかに後者の理由が大部分を占めているのだが、納得するために敢えて他の理由を口に出す。
『個体 ポイズンスネークをテイムしますか?』
『テイム権利は一度のみ有効です。使用すると消滅しますがよろしいですか?』
「あぁいいよ、こうなりゃこれもまた運命だ、共にいこう」
「シィィッ」
『個体 ポイズンスネークをテイムしました』
『個体 ポイズンスネークに名をつけてください』
『条件を満たしました。個体 ポイズンスネークとスキル【空に憧れるモノ】を接続します』
『この操作は取り消せません。実行中。完了しました』
『個体 ポイズンスネークに空への可能性が示唆されました』
『チュートリアルを完了しました。報酬 接続権を獲得しました』
「いや、情報量が多すぎる。しかもなんだ、取り消せない?空への可能性?ここであのフレーバースキルかよ」
とりあえず一つずつ片付けよう。まず名前。
ずっと蛇公って呼んでいたけど、流石にそれはまずいよなぁ。うーん。
「蛇公だからコウ、は安直すぎるし、ポイズンスネーク、からポイ、スネ、ネーク。どれもしっくり来ないな」
どうしたものか。名付けって難しすぎるだろ。あ、これはしっくりくるかも。
「蛇公、お前の名前はイネ、どうだ?」
「シッ」
うん。賛成してくれてそう。これで行こう。
『個体 ポイズンスネークにイネと名付けました』
『個体名 イネとの同調を開始。以後意志の疎通が可能です』
「ギャァァァァァ!」
え?
「ダサい!何してくれとんじゃワレ?戦闘以外のセンス全部捨てとんのか?」
「いや、オッケーみたいな眼してたじゃんか。あとうるせぇ」
「終わった。ワシ、おしまいやもしれぬ」
「聞けよ。おい」
「放っておいてくれ。わしは今悲しみに打ちひしがれているのじゃ」
あぁそうかい。思った以上に変な性格してるわこいつ。次に行こう。
次はワイルドホークのアイテム。羽と嘴はわかるが、魂ってなんぞ?
何?使用するとワイルドホークの魂を受け継ぎ能力を獲得する。ほうほう、つまりこれはスキル書的なやつだな。
これはまだケイナは知らないことだが、魂はレアモンスターのアイテムテーブルにのみ存在し、かなり低確率のレアドロップ枠である。これを求めて後にPvP勢が地獄のマラソンを決行するのだが、それは別のお話。
『アイテム ワイルドホークの魂を使用しますか?』
「あぁ」
『獲得する能力を選択してください』
選べるスキルは三つ。
・鷹の目
・ツイスタースラッシュ
・巨大化
鷹の目はパッシブスキル、直線において遠くまで見れるようになるらしい。遠距離メインではないので無し。
下二つはアクティブスキル。前者があの斬撃を発生させてエリア封鎖を行うヤツで、後者は行動変化した時のデカくなるやつか。
「大きくなるってメリットだけじゃないんだよなぁ。的もデカくなるし、多分武器も使い分けなきゃいけなくなる」
ってことは一択だよな。あのスキル滅茶苦茶厄介だったし、使えるようになるのはありがたい。
『スキル ツイスタースラッシュを獲得しました』
アイテムはこれで確認終了、次はステータスか。
『チュートリアル!』
・ギルドの登録をしよう! (達成)
・第一職業を登録しよう! (達成)
・戦闘を行おう! (達成)
・相棒を見つけよう! (達成)
・接続を行おう! (達成)