07 出会い、戦い 2
意識外からの一撃に瞬間、争いは硬直する。
一方は己に害意を向けてきた敵に怒りを、他方は新たな脅威となりうる人間に警戒を、その結果。
「やっぱこうなるよなぁ」
完全な三つ巴である。
「すぐに敵の敵は味方理論は通用しないか。まぁでも、試す価値はあるよな」
意思疎通ができないのは端から承知の上。ただこのゲームのAIを舐めてはいけないのも事実。
攻撃にはある程度のパターンがあるとはいえ、全てが機械のようにワンパターンではない。
致命傷を与えそうな攻撃は警戒するし、傷を負った状態では逃走を選択することもある。
幸い、ヴェノムボールの毒によるDoTが微量だがHPを削り続けている。時間の利はこちらにある。
つまり今すべきは、四点。
蛇には一切の攻撃をせずに敵ではないと示すこと。
鷹をテイムするために戦況とHPを調整すること。
自分が倒されないように積極的な戦闘は行わないこと。
その上でなるべく戦いを長引かせること。
つまりあの蛇公のサポートをしろ、ということ。
初撃をいれた位置は丁度二体の中間あたり。すぐさま蛇と挟み撃ちできるよう鷹の後ろに回り込む。
ワイルドホークに飛び道具があるかは謎だが、空中線に持ち込まれると不利になるのは明らか。
「先に上のスペースを潰す!」
槍を上に構え空を警戒する形、高度を上げようものならすぐさま咎める。故に地に近づかなければならない。
しかしそこは蛇の間合い。様子を伺っていた蛇も飛びつきの構えをとる。捕まったら堕とされるされる以上注意を払わなければいけないのは蛇。もちろん鷹は意識をそちらに向ける。こちらとしては最適な形、隙があればそこを突く。
二度目の硬直。先に動き出したのは鷹、強者の特権。
「ビギャァ!」
猛々しく羽ばたき風を起こす、砂塵が巻き上がる。
「チッ、風魔法か」
無差別な空気の斬撃、全方位に向けられたそれは蛇を怯ませるには十分だった。
反転、鷹がこちらに襲いかかってくる。
「戦場を荒らして連携を破壊、各個撃破ってか。やってやろうじゃない」
槍を避けて高度と上げてのヒットアンドアウェイ、空を制す者の十八番。
「思った以上に、めんどくせぇ!」
槍を突いて爪撃を受け、体ごと回転して柄で殴打する。
槍術で新しく会得した横薙ぎ、綺麗に決まれば脳が揺れ、確率でスタンがつく。
「飛び続けるには羽ばたき続けなきゃいけない、痺れは天敵だよなぁ」
一点突きで追撃する。しかし流石はレア枠というべきか、レベル差もあってダメージはなかなか通らない。
残りHPは7割程度、蛇も削っていたようだがそれでもこの数字である。継続ダメージに頼るにも心もとなさすぎる。
「決め手に欠けるなぁ、蛇公はまだ日和ってんのか?」
横目で蛇の様子を確認する。うわ、思った以上に削れてない? あいつ。
しかしまだ目は死んでいない。攻撃できそうなタイミングを狙っているって感じ。
「ならその機会を作ってやらないとなぁ!」
二度目の横薙ぎ、継続してスタンするが様子見の一手。何か手があるならここで仕掛けてくるはず。
「シィィィッ」
飛びつき、巻き付き、噛み付く。全身で締め上げ牙を首元に突き立てる。
「うわぁ、すごいダメージだな」
全身に巻き付いているせいで、ちょっかいを出そうとすると蛇公にもダメージを与えてしまいそうだが、槍であれば隙間を縫って攻撃出来そうである。ここは畳み掛けるべきであろう。
「よく狙って、ここ!」
一点突きを繰り出す。深追いはせず、あくまでサポートに徹する。
塵も積もればなんとやら。何度か攻撃を合わせてやれば、目に見えて削れてくる。
蛇公の献身もあって、残りHPは30%。
「ギャギャァァ!」
しかしただでは終わらないのがレアモンスター。
鷹の反撃が、来る。